第318話 『白銀の獅子』VS『ドラゴンテール』
第6王女リリスの専属冒険者を決める、S級冒険者選抜大会。
準決勝第2試合———『白銀の獅子』VS『ドラゴンテール』の戦いの火蓋が切って落とされた。
先制したのは『ドラゴンテール』。
「フェニックスアロー!」
ジュリが放った4本の炎の矢が、尾を引きながら一直線に『白銀の獅子』へ迫る。
———ヒュンッ。
矢が命中する直前、4本すべてがふっと消えた。
次の瞬間、ゼルの手には4本の矢が握られていた。
「何かしたか?」
バラバラと矢が地面に落ち、ユーゼンとロイターは呆然とした。
「おいおい……城壁を貫通する矢だぞ……」
「だいぶ、レベル差があるみたいですね」
ゼルが肩を回しながら前に出る。
「さぁて、次はこっちからだな」
ゼルとゴリが同時に踏み込む。
「くるぞっ!」
マルスとユーゼンが迎え撃つが———。
———ギィンッ!
一合いで、二人はフィールドの彼方まで弾き飛ばされた。
「マルス!? ユーゼン!!」
国内最強Aランクパーティ『ドラゴンテール』。
どれほどの強敵を相手にしても、前衛が崩れたことは一度もない。
その常識が、たった一撃で覆された。
「まずは後衛からご退場願おうか」
ゼルがゆっくりとジュリとロイターへ歩み寄る。
「くそっ!」
ジュリは矢を連射するが、ゼルはすべてを軽く弾き落とす。
「“フレア・ディスラプト”!」
ロイターの呪文が炸裂する。
だが、ゼルの前に飛び出したゴリがそのまま受け止めた。
———バチィッ!
サヨやセツナにも匹敵する強大な魔法。
しかし、ゴリは胸を張って笑うだけだった。
「はっはっは! なんだそのショボイ魔法は!? 全然効かねぇぜ!」
ロイターは引き攣った笑みを浮かべる。
「これは……困りましたね……」
そのとき、詠唱を終えた『白銀の獅子』の後衛———リゼとマリーが呪文を放つ。
「くっ……"避雷針の矢"!」
ジュリが空中に向けて矢を放つ。
身代わりの矢———敵の遠距離攻撃を吸い寄せる効果がある。
リゼの炎魔法は矢に向かって飛んでいき、矢を炭屑にした。
しかし、直後放たれたマリーの光魔法はジュリに降り注いだ。
「うわあぁぁぁっ!!」
雷撃がジュリを襲い、そのままジュリはダウンした。
「はっはっは!まずは一匹!」
ゴリの高笑いが響く。
弾き飛ばされたユーゼンがロイターに駆け寄り、低く囁く。
「おい……奴らの強さ、どうなっている?俺たちだって、この試合に向けてレベル300以上まで上げたんだぞ」
「準々決勝よりも、さらにデタラメに強くなっているようですね。後衛2人の魔力も、私の倍はありそうです。ジュリの身代わりの矢が無ければ、今の呪文で私もやられていたでしょうね」
フィールドの反対側ではマルスがゼルとリゼを相手に対峙している。
こちらにはゴリとマリーが迫ってきていた。
「こりゃ、大ピンチだな」
「ええ。できうる限りの仕事をしましょうか」
ロイターが詠唱を始める。
「ははっ、無駄なあがきを!」
ゴリが突進し、ユーゼンが前に立ち塞がる。
「ばーか、死ねっ!」
ドゴォッ!
ゴリの拳を、ユーゼンは斧で受け止めた。
数メートル吹き飛ばされるが、倒れることなく踏ん張る。
「へぇ?頑張るじゃねぇか。じゃあ、もう少し強くいくぞ♪」
ゴリの巨体がユリに匹敵する速度で動き、ユーゼンに連打を浴びせる。
しかし、ユーゼンは倒れない。
(なんだこいつ……なんでこんなにしぶとい?)
ゴリが眉をひそめたとき、ロイターの詠唱が終わる。
「“サンクティア・オラ・ブレス”!」
眩い光がユーゼンを包み込む。
「よくやった、ロイター」
———バキンッ!
ユーゼンがゴリを弾き返す。
(なんだこの力!?とんでもねぇバフがかかってやがる……!)
ゴリはロイターを睨む。
(あの神父の力か!面倒だな……なら、先に倒すべきはあの神父!)
ゴリはユーゼンを弾き飛ばし、ロイターに突進する。
「はっはぁー!くたばれ!」
ゴリの拳がロイターの腹部に突き刺さる。
「ぐはぁっ!」
肋骨どころか背骨まで砕ける一撃に、ロイターはその場で膝をついた。
「はっは!これで回復役は潰したぜ♪」
「えぇ……こちらも……」
ロイターは笑みを浮かべ、そのまま力なく倒れた。
「あ……?」
振り向くと、ユーゼンがマリーに突進していた。
斧を振り上げ、渾身の一撃を見舞う。
「ファイナルストライク!」
———ドゴオォォォオオオォォォンッ!!
フィールドが真っ二つに割れた。
衝撃の余波で、バリアが乱れる。
「うわあああああっ!?」
会場が地響きで揺れる。
その中心地点で、マリーがダウンしていた。
「なんだと……!?」
ゼルは思わず振り返った。
(マリーのレベルは600以上だぞ!?しかも、魔装でステータスが底上げされている……!いくら耐久力が低いとはいえ、まさかやられるとは……!)
ユーゼンの手から斧が落ちた。
「すまん、1人持っていくのが精一杯だった。あとは頼むぞ、マルス」
そう言い残し、ユーゼンはドサリと倒れた。
「ありがとう、ユーゼン」
仲間が全滅したマルスは静かに呟き、怪物3人に向けて剣を構えた。




