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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第312話 準決勝・副将戦5

 カウントナインでギリギリ立ち上がったユリ。

 しかし、状況は最悪だった。


 シェリーが困惑の表情を浮かべる。


「立ったのは素直にすごいけど……。どうするの? ここから打つ手があるとは思えないけど……」


 ナズナも唇を噛む。


「剣も魔法も徒手格闘も、全て最高レベル。近距離、中距離、遠距離……どこにも隙がない。総合力で圧倒されてる……」


 悲観的な空気を、シンラが怒鳴り声で吹き飛ばした。


「大丈夫だ! 立ちさえすれば、まだ勝機はある!」

「勝機って、どんな……?」

「知るかよ! 根性だよ根性!」


 ユリは剣を支えに息を荒げる。


「立ってるだけで精一杯って感じだね。悪いけど、勝機はもうないよ」


 イヅナはそう言うと、自身に回復魔法をかけた。

 ユリが与えたダメージが、みるみるうちに消えていく。


(……くそっ! やっぱり、回復魔法も使えるか……!)


 回復を妨害したいが、体が言うことを聞かない。

 ユリはただ、絶望的な光景を見つめるしかなかった。


「はい、HP全快。どうする? まだ続ける?」


 絶望的状況。

 今にも倒れそうなユリの脳内には、試合前の出来事が蘇っていた。




 ◆ ◆ ◆




 サヨの試合の直前。

 控室のドアがノックされた。


「よう。無事、勝ち残っておるの」


 現れたのは、ガークエイクだった。

 シノとルリが駆け寄る。


「ガークエイクさん! ありがとうございます! ガークエイクさんの魔装のおかげで勝てました!」

「ほんとすごすぎるよこの魔装! さっすがじいさん、天才だね♪」


 ガークエイクは上機嫌に笑った。


「そうじゃろう? ワシが造った魔装じゃ! そこらの魔装に負けてたまるかってんだ! わーはっはっは!」


 サヨがベンチから声をかける。


「ところでガークエイクさん。応援しに来てくださったのですか?」


 ガークエイクは手を振る。


「あぁ、いやいや。試合ならもう、観客席で見たわい。ワシの装備品の活躍も見れたし、何より腰が痛くての。今から帰るところじゃ」

「そんな~、私たちが勝つところを見て欲しいのに」


 最大の興味は『四星の絆』の勝利より、魔装の出来栄えといった様子だった。

 さすがは頑固職人である。


「帰る前に、これを渡そうと思っての」


 ガークエイクは保存袋を差し出した。


「これは……?」

「魔装じゃよ。盾のときの材料が余ってな」


 全員が驚愕した。


「ま、魔装……!?」

「す、すごい! これがあればサヨは……!」


 袋の中身を見て、ユリは固まった。


「こ、これは……」

「どうやら私が身につけるべき装備ではないようですね」


 サヨが呟くと、ガークエイクが続けた。


「ムビに渡そうと思って持って来たんじゃが、あいつはおらんようじゃな。まぁ、装備者は誰でも構わん。あと1勝が必要なら、お主が装備しても良いぞ?」


 ガークエイクの視線がユリに向けられる。


「ま、使い方はお主たちに任せるわい。で、じゃ。この魔装なんじゃが……」


 一通り、ガークエイクは魔装の説明を行う。


「じゃ、ワシは帰るからの。あいてて、腰が……」


 ガークエイクは腰を叩きながら去っていった。


「もしかしてガークエイクさん、すごく無茶したんじゃ……」


 シノが呟き、ルリが反応する。


「どういうこと?」

「私の魔装を造ってから、まだ数日しか経ってないし。目の下にもクマが……」


 言われて、ユリははっとした。

 恐らくは準決勝に間に合わせるため、不眠不休で製造したのだろう。

 あれだけの高齢……少し観戦するだけでも、体力の限界だったに違いない。


「大事な魔装だね……」


 保存袋が、ずしりと重く感じられた。


「さて、この魔装……どうします?」


 サヨの問いが、静かに響いた。




 ◆ ◆ ◆




 ———そして今。

 保存袋はユリがそのまま持っていた。


 ユリは既に聖装"破邪の剣"の装備者。

 この保存袋の中身は、できれば非装備者のムビに渡したかった。

 しかし———。


(……ごめん、ムビくん! やっぱり、勝ちたいっ———!)


 ユリは保存袋を取り出した。

 解説がギョッとする。


「あぁーっと!? この大会、アイテムの使用は禁止されているぞーー!? 血迷ったか、ユリ!?」


 ユリが袋の中に手を突っ込み、引き抜く。

 袋の中から現れたのは———黒い剣だった。


「あ、あれは……剣、でしょうか!?」

「恐らく……。装備品なら、ルールに抵触しませんが……」


 ユリは剣が体に馴染む感覚を覚えた。

 魔装が装備者としてユリを認めたのだ。


(ガークエイクさん……力をお借ります!)


 ユリは2本の剣を振り回し、構える。


「に……、二刀流だとぉーーー!?」


 会場の熱気が爆発した。

 イヅナは一瞬驚いていたが、すぐに余裕の笑みを浮かべる。


「剣を2本持ったからって、どうなるの? 生半可な剣を装備したって、私には通じないよ? それに、もう動く力も残ってないじゃん」


 ユリは肩で息をしながらイヅナを睨み続ける。


(そんなことは分かってる! でもこの剣は、生半可な剣じゃない。逆転するには、この剣の能力に賭けるしかない……!)


 ユリの握る黒剣が、低く唸るように震えた。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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