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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第311話 準決勝・副将戦4

「セブン……エイト……ナイン……」


 ———ガララッ。


 瓦礫を押しのけ、イヅナが立ち上がった。

 その瞬間、『エヴァンジェリン』ファンの歓声が爆発する。


「イヅナ、立ち上がりました! 勝負はまだ分かりません!」


 イヅナは肩で息をしながら、血を拭った。


「すごいね……。こんなにダメージを受けたの、初めてだよ。ユリ、こんなに強かったんだね」


 ユリは自然体のまま、静かに歩み寄る。

 その足取りには、もはや迷いも焦りもない。


「悪いけど、このまま決めさせてもらうよ。次は——20連撃いくからね」


 イヅナの顔が青ざめた。


「認めるよ……。剣ではユリに敵わない。剣だけでは……ね」


 そう言って、イヅナは手を掲げた。


「”灼熱の嵐(フレアストーム)”」


 ———!?


 突如、炎の嵐がユリを襲う。

 ユリは跳躍し、炎の縁をかすめながら回避した。


「あぁーっと! イヅナ、なんと魔法を使用しているぅーーー!!」

「これだけの剣技がありながら、上級魔法まで使えるとは……!」


 イヅナは次々と魔法を連発し、ユリを追い回す。

 その詠唱速度は、もはや常識の範疇ではなかった。


 シンラたちは驚愕に目を見開く。


「おい……あいつ、魔法まで使えるのかよ!?」

「やばいね、あれ……高速詠唱だよ」

「はぁ!? 高速詠唱だと!?」


 シェリーの言葉にシンラが絶句する。


「ルリの試合を見て、コピーしたんだろうね……。こんな天才がこの世にいるなんて……」


 ジニーは大笑いした。


「はははっ! イヅナはこの大会で使われた全ての技と呪文を完璧にコピーしておる! やれっ、イヅナ!」


 先の試合のセツナ並の高火力。

 ユリは歯噛みした。


(なんとかして、近付かないと……! 近接戦闘なら、私の方が上なんだ!)


 ユリは稲妻のように地を蹴り、イヅナへと迫る。


「”灼熱の嵐(フレアストーム)”」


 広範囲の炎魔法が放たれる。

 だがユリは炎の中へ突っ込んだ。


「"闘気剣"!」


 ユリの一閃が炎を切り裂き、爆風を押しのけて間合いを詰める。


(よし、イケる……!)


 ———ズバッ!


 両腕に激痛が走った。


「いたっ……!?」


 見ると、影がユリの腕を切り裂いていた。


(これは……ヒエンの影魔法!?)


 握力が弱まったユリは、剣を握りきれないままイヅナに突っ込む。

 そこに、イヅナが剣を構える。


「———"十六星剣(アリエス・エスパーダ)"」


 さきほどユリが放った、必殺の16連撃。

 試合が終わる———敗北が頭をよぎった瞬間、ユリの髪が逆立った。


「う……ああああああああっ!!」


 ———キキキキキキキィンッ!!


 ユリは態勢を崩しながら、16連撃を全て捌き切る。

 あまりの神業に、イヅナが目を見開いた。


「……ほんと、寒気がするね。でも……」


 イヅナは剣を手放し、態勢の崩れたユリの懐に飛び込んだ。


「し、しまっ———」

「"螺旋龍煌砲"!」


 ———ドゴオォォォオオオォォォンッ!!


 シンラの必殺技が、ユリの腹部に直撃した。


「ぐはああぁぁぁっ!!」


 骨が砕け、衝撃が内臓を突き抜ける。

 ユリはそのまま吹き飛ばされ、壁に激突した。


「強烈な一撃ィィーーー!! これは決まったかぁーーー!?」


 ユリは壁にもたれながら、よろよろと立ち上がる。


「がはっ……!」


 吐血し、膝が崩れかける。


「ダメージは甚大だね。これで、終わり———」


 イヅナから強大な魔力が湧き上がる。

 ユリの全身の産毛が逆立った。


(まずい……! これは避けないと……!)


 跳躍しようとして———意思に反し、膝の力が抜けた。


(そ、そんな……!?)


 イヅナの呪文が炸裂する。


「"滅闇(アビス)"」


 ———オン。


 暗闇がフィールド全体を包み込み———。


 ———バチバチバチィィィッ!!


 バリアが乱れ、フィールド全体が激しく揺れた。


「うわああああああっ!?」


 観客から悲鳴が上がる。

 地響きの中、シンラとナズナが叫ぶ。


「お、おい……これってサヨの……!?」

「嘘でしょ……起源魔法……!?」


 シェリーの声は震えていた。


「起源はサヨだけのものだから、正確には起源魔法ではないけど……。レベルが高いせいで、オリジナルに近い威力が出てる……」


 地響きが静まり、闇が晴れた。

 イヅナは深く息を吐く。


「ひどいなこの魔法……バカみたいにMP持ってくじゃん……。まぁ、終わったからいっか」


 ズタズタのフィールドの中に、ボロ切れのようなユリが転がっていた。


「ダウン! ワン……ツー……」

「いや、これ終わっただろ……」


 誰もが決着を悟った。

 ジニーが大笑いする。


「だーっはっはっは! 見たか! この圧倒的な力こそが、『エヴァンジェリン』の真骨頂じゃ!」


 ミラたちは静まり返っていた。


「これはもう、決まったか……」

「……くそっ。仕方ねぇか……」


『エヴァンジェリン』ファンが歓声を上げ、『四星の絆』ファンが静まり返ったそのとき———。


 ユリが、ピクリと動いた。


「う……」


 腕を立て、上体を起こそうとする。


「驚いた……まだ意識があるんだ」


 イヅナは感嘆の声を漏らすが、既に勝利を確信していた。


「立てっ! 立つんだユリーーー!」


 会場から大歓声が巻き起こる。

 イヅナは呆れたように周囲を見渡した。


「無駄だって。意識があるだけでも奇跡なんだから」

「セブン……エイト……ナイン……!」


 ———ガラガラッ。


 瓦礫の中から、ユリがゆっくりと体を起こす。

 その瞬間、ファンたちの歓声が爆発した。


「なんで立てるの……?」


 イヅナは信じられないという顔をしていた。

 ユリがよろめきながら笑みを浮かべる。


「へへ……これくらいなら立てるって、うちのプロデューサーに教えてもらったからね……」

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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