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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第309話 準決勝・副将戦2

「うわぁっ!」


 イヅナの剣がユリの腕をかすめ、鮮血が散った。

 ユリは完全に押されていた。


「もう降参した方がいいんじゃない? どんどん怪我が増えちゃうよ?」


 イヅナは眠たそうな目のまま。

 やる気がないのかと思いきや、突然凄まじい斬撃が飛んでくる。


 気配の起こりがなく、動きが読みづらい。

 まるでイヅナの意思とは無関係に体が動いているかのよう。


「はぁっ!」


 ユリの闘気を込めた魔法剣。

 だがイヅナは、まったく同じ剣撃を完璧に再現し、相殺してみせた。


「これすごいね。闘気ってやつ? 私初めてだから勉強になるなぁ。他に技はないの?」


 軽く弾き飛ばされ、ユリは地面を転がりながら体勢を立て直す。


(くそっ……技が通じない! それどころか、全部真似されて返ってくる……!)


 対『エヴァンジェリン』戦に向けて積み重ねてきた修行。

 最良の師匠たちに教わった数々の技。

 それらが一切通じないどころか、むしろイヅナをどんどん強くしている。


(一体、これまで何のために頑張って……!)


 八方塞がりのユリに、イヅナは困ったように肩をすくめる。


「ね? だから言ったじゃん無駄だって……ふわぁ~」


 大きな欠伸をしながら、イヅナは剣をくるくると回す。


「ユリ。きっとこの技を覚えるために、いっぱい『努力』ってやつをしてきたんでしょ?『努力』ってやっぱり楽しいのかな?」


 その声色には悪意がない。

 ただ純粋に、心の底から疑問に思っているだけだった。


「全然結果が出ないのに、皆『努力』ってやつしたがるじゃん。きっとよっぽど楽しいんだろうね。私はそういうこと考える前にもうできちゃうから、よく分からないんだよなぁ~」


 ごく自然と紡ぎ出されるイヅナの言葉が、ユリの胸を刺す。


「まぁ、人の楽しみをとやかく言うつもりはないけどさ。私に勝とうとするのは『努力』ではないと思うよ? こんな簡単なことをさぁ、どうして頑張らないとできないの? 必死な顔しないとできないの? その時点で、私に勝てるわけなくない?」

「そんなの……やってみなきゃ、分かんないじゃん!」


 ユリは叫び、突進した。


「"七星剣(シエテ・エスパーダ)"!」

「またその技かぁ。さっきも見たよ、それ」


 イヅナも同じ構えを取る。

 互いの7つの斬撃が火花を散らし———イヅナの8つ目の斬撃が、ユリの肩を切り裂いた。


(嘘っ……!? 私の技を……上回った……!?)


 ユリの手から剣が落ちる。


 イヅナは眠気に襲われ、再度欠伸をした。


「面白い技だけど……どうして7回目でやめちゃうの? 8回、9回って斬った方が強いのに」


 ミラは感嘆の声を漏らした。


「天才じゃのう……。コピーするどころか、オリジナルを上回りよったぞ」


 シェリーが分析する。


「恐らく、コピー系のスキル。しかも、コピーした技をほとんど無意識で発動できるんだろうね」


 ナズナも息を呑む。


「技ってのは普通、意識を100%割いてようやく発動できる。それが0%でできるってことは、余った意識を技の改善に使える。こんなの戦闘中にやられたら、心折れちゃうね……」


 シンラは静かにフィールドを見つめていた。


「なるほどな。これがユリのライバルかよ。いいじゃねぇか……。こりゃ、いい修行になるぜ」


 3人が呆れる。


「修行って……そんなこと言ってる場合じゃ……」

「まぁ、黙って見てろ。あいつはこれくらいで折れるタマじゃねぇよ」




 ◆ ◆ ◆




 数日前。


「うぎゃっ!」

「どうしたよ、もう終わりか?」


 ユリは地面に倒れ伏していた。

 シンラとの全力の戦闘の後である。


「うぅ……やっぱり師匠に勝てない……」

「情けねぇこと言ってんじゃねぇぞ? レベルはもう、お前の方が上だろうが?」

「こっちが聞きたいですよ! レベルは私の方が上なのに、なんで師匠はそんなに強いんですか!?」


 手足をバタつかせ、憤慨するユリ。

 シンラはため息をついた。


「あのな? 確かにレベルが高い方が戦闘じゃ有利だ。だが、強さってのはそれだけじゃねぇ」


 シンラが倒木にドカリと座る。


「冷静に分析してみろ。お前が私より上回ってる要素は何だ?」


 ユリはしばらく考える。


「えっと……。レベルは私の方が高い。聖装のバフもある。スキル"剣神"の恩恵……」

「その通り。ざっとそんなもんだ。レベル230がお前のベース。聖装のバフでパラメータが3割上昇、スキルの恩恵で更に3割上昇。実際の戦闘力はレベル370前後ってところだな。一方私は、レベル200。そこに、スキル"怪力乱心"が加わり、力と耐久力は数倍に膨れ上がる。結果、レベルに換算すると400は超えてくるってわけだ」


 シンラのドヤ顔に、ユリは抗議する。


「ずるいですよ師匠ー! チートスキルの恩恵じゃないですか!」

「馬鹿野郎! スキルってのはなぁ、自分次第でいくらでも強化できるんだ! いいか? 私のスキルだってな、元は5割程度の強化能力だったんだぞ?」


 ユリが驚いて目を見開く。


「えっ!? そうだったんですか!?」

「そうだ。私はな、殴り合いじゃこの世で最強だと思ってる。ミラが相手だとしても、殴り合いとなりゃ私が上だと本気で思ってるんだ」


 シンラの目には、自身への絶対の自信が感じられた。


「スキルはてめぇ自身との向き合い方で、発揮する力が大きく変わってくるのさ。もっと剣に没入しろ。そうすりゃ、いつしかチートスキルの域に達する。ムビを見てみな」


 ムビの名前が出た途端、ユリはさらに傾聴した。


「あいつはずっと不遇な扱いを受けていたが、スキルはチート級だった。恐らく、どれだけ冷遇されても自分のスキルに没頭したんだろうさ。お前に必要なのは、そういう絶対に曲がらねぇ、信仰めいた信念だ。本気じゃ足りねぇ、その向こうの狂気にまで行きつけ。そうすりゃ、お前はもっと強くなれるさ」


 ユリの瞳が輝いた。


「なるほど! 要は、ムビくんみたいになればいいんですね! 分かりました!」

「……ほんとに分かってるのかお前?」

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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