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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第302話 準決勝・中堅戦4

 私の強さに、観客が熱狂する。

 目の前には、今にも崩れ落ちそうな因縁の相手。


 最高の気分に浸りながら、私はゆっくりと声をかける。


「どう? そろそろ身の程が分かったんじゃない?」


 サヨは何も答えない。

 ただ、黙って私を見つめ返すだけだ。


 こんなに痛めつけても、瞳の奥の芯がまるで揺らがない。

 あきれた。何がこいつの自我を支えているのだろう。


「まぁ、当然の結果ね。あんな出来損ないの両親から生まれたんだもの。子も出来損ないに決まってるわ」


 私の挑発にも、サヨの表情は変わらない。

 聞こえているのか? この鉄面皮め。


 あきれ果て、ため息を一つ吐く。


「もういいわ。終わりにしましょう。あなたも、母親の元へ送ってあげるわ」


 私は杖を構えた。


 ——瞬間、世界が止まる。

 私以外の全てが、写真や絵のように静止する。


「ふふ。停止完了」


 私のスキル——"時間停止"の効果だった。

 生まれたその日から、私に備わっていた絶対無敵の能力。


 幼い頃から神童と呼ばれたのも当然だ。

 書物は停止中に読み、稽古は停止中に練習した。

 周囲には一瞬で覚えたように見えただろう。


 MPを消費することもなく、発動には何の制約もない。

 停止時間の制限もない。

 まさに、神から与えられた最強の力。


 そしてこの戦闘中も、私のスキルは猛威を振るっていた。


 時間を停止しての魔法詠唱。

 周囲には詠唱破棄のように見えただろう。

 本格的に戦闘訓練を始めて数ヶ月の私には、詠唱破棄などできるはずもない。

 だがこのスキルを使えば、エルフが数千年修行しても辿り着けない境地に立てる。


 移動も同じ。

 停止中にのんびり歩いたが、他の人間には瞬間移動に見えただろう。


 まぁ、正確には完全には停止していないのだが。

 完全停止をすると、私以外の物がテコでも動かなくなる。

 本も捲れないし、殴ってもダメージを与えられなくなる。


 だから私は、極限まで時間を遅らせている。

 それが一番実戦的。

 緩やかに時間が流れていれば、物理的に影響が及ぶ。


 とはいっても、1/1000000000000000000程度の、それこそ刹那の一瞬。

 実質的には時間停止と変わらない。


 私はゆっくりとサヨへ歩み寄る。


 相変わらず、憎たらしいほど整った顔。

 最後は、この顔を私の手でボコボコにしてやる。


 そう思った瞬間——右手が、空気中の“何か”に触れた。


「あっつ!?」


 焼けるような激痛。

 異質な魔力が私の魔力回路に流れ込み、暴走する。


 サヨのトラップ魔法!?

 痛みで集中が削がれる。


 ——まずい、スキルが……!


 耳に大歓声が飛び込んできた。

 時間が動き始めた。


 2メートル先で、サヨが笑っていた。


「ようやく引っかかりましたか」


 言うが早いか、サヨは一瞬で間合いを詰める。

 速すぎて対応できない。


 直後、腹部に激痛。


「ぐはっ!」


 背中まで突き抜ける衝撃。

 サヨの拳が深くめり込んでいた。


 よろめきながら後退する。


 吐き気がする。目眩も……。

 恐らく、闘気が浸透している。


 2回戦のルリと同じく、サヨも接近戦の訓練を積んでいるのだろう。


「肉弾戦はてんでダメのようですわね。それに、今の感触……やはり、ステータス自体は私の方が上。ならば、このまま殴り勝たせていただきます」


 サヨが再び迫る。

 特殊な歩法だろう。速すぎる。


 私は飛行魔法の詠唱をしながら無我夢中で後方に逃げる。

 こんなに慌てて詠唱するのは初めてで、何度も噛んで失敗する。


 サヨに追いつかれ、蹴られる。

 なんとか腕でガードしたが、壁まで吹き飛ばされた。


 信じられないほど重い一撃。

 腕が折れたかと思った。

 恐らくまともに貰えば試合が終わる。


 ——カエデの二の舞なんて冗談じゃない……!

 なんとしてもダメージを回復させて、スキルを……!


 腹を押さえながらフィールド端まで逃げる。

 背後から追ってくるサヨ。


 服を掴まれ、引きずり倒された。

 踏みつけられそうになったが、転がり回りながら逃げる。


 全身汗と泥にまみれて、必死でフィールドを駆け回った。


 くそっ! 何で私がこんな目に——!


 怒りで血が沸騰しそうだ。

 観客の悲鳴と笑い声が羞恥心を煽る。


 そして何より……背後のサヨが怖い。


 嫌だ……! 絶対に負けたくない!

 ここで負けたら、エヴァンジェリンの敗退が決定する!


 私が戦犯?

 ——冗談じゃない!

 完璧な支配者たる私が、そんな無様な——!


 ガッ!


 サヨの足払いで、バランスを失う。

 私は顔面から地面に転げ落ちた。


「あらあら、エヴァンジェリンのNo.2ともあろうお方が情けない。芋虫の真似ですか?」


 鼻血を出してもがく私を、サヨが冷たく見下ろす。


「あ……あんた! 私にこんなことして許されるとでも——」

「試合中ですよ。何をおっしゃっているんですか?」


 ……まだだ。回復まで、あと10秒。


「私はエヴァンジェリンのNo.2なのよ!? 私が負けるなんて、あってはならない! 負けるべきなのは、底辺アイドルのお前よ!」

「えぇ、きっとそうですわね。続きは、新聞記事のコメント欄で伺いますわ」


 ……あと5秒。


「ははっ! この程度で私に勝ったつもり!? 残念ね、あなたはもうすぐ母親の元へ行くのよ!」

「そうですか。母との再会が待ち遠しいですわ」


 サヨが拳を振り上げる。

 私はニヤリと笑った。


 ——パキィンッ。


 サヨの動きが止まった。

 世界に静寂が訪れる。


「スキル、発動完了」

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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