第2-82話 ルグアの行動力
◇◇◇明理目線◇◇◇
「よし、みんな寝付いたみたいだな」
「ううん……。ル……グア?」
「はぁ。ほんとお前寝付き悪いよな。アレン」
「そういうルグアも寝ないっすよね」
「だな。もし眠れないなら私とクエ行くか?」
「え? いいんすか?」
私はリフェリアの村長と面会後、疲労困憊となった仲間を寝かしつけていた。とにかくめんどくさいのはアレンだが……。
リアゼノン第四層の時もそうだったが、彼は寝付きが悪い。本人は疲れたと言っているが、話が違いすぎるのだ。
私は彼にも休んでもらいたい。できるだけ今はソとして活動したい。しかし、アレンもアレンだ。何か眠れない理由があるのだろう。
「団長と二人でってことっすか?」
「ああ。ま、眠りたきゃ寝りゃあいい。その時はおぶってやるからさ」
「毎度すんません……」
「さ、んーとどのクエから行くか……」
私は、水の都で受注したクエストの控えを取り出す。寝かしつけの合間に秒速で受注追加したので、枚数は40枚に達していた。
これをエルフィレンナでの滞在期間、15日の間に終わらせる。私一人では少ない量だが、ロムやメルフィナにはキツいくらいだ。アレンは破格だが……。バレンほどではない。
「じゃあ、俺も行こっかな。ルグアがいれば安全っすから‼」
「なら、ルナ同様実践編に移行するか?」
「実践編?」
「そうだ。もう手は貸さない。モーションは伝えるけどよ」
ルナはアメリカ人プレイヤー。〈世界魔法大戦〉という、オープンワールド型フルダイブMMORPGで知り合った人だ。
元々は敵対同士。それが私の指導に興味を持ったようで、今ではメインメンバーになっている。
ルナはフォルテと同じ拳闘士。至近戦だと危険だと判断した私は、弓術戦闘を教えこんだ。で、第四層での実践編。
「あいつも頑張ってたからな。アレン期待してるぞ‼」
「実践編っすね……。俺もとうとう……」
「加減はしとくさ。順を追って距離を置いてやる。勘違いするなよ?」
「わかってるっすよ‼ 行きましょう‼」
「んじゃ、まずはこのクエにするか……」
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【ジャイアントゴーレム討伐】
クエストクラス:L
クエスト形式:魔物討伐
クエスト場所:アグマ活火山
クリア報酬:9,000,000ウェレス
サブクエスト:無し
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「レジェンドって……」
「最高クラスの二つ下のやつだな。どうやら活火山採掘に行ったドワーフが、被害に遭ってるそうだ。死亡者も多発してるらしい」
「し、死亡者⁉」
「アレンならワンパンかもな‼」
「ちょっと怖いこと言わないで欲しいっすよ‼」
「あはは、今のお前なら問題ねぇよ。保証はしてやる」
「ならいいんすけど……」
ふざけるのはここまでにしよう。私とて暇じゃない。今晩中に5つクリアしたいのだから。現在時刻は21時。リアルと同じ時の流れ。
そのおかげか時差も少ない。はじめて訪れた人でも生活には慣れるだろう。食文化の違いはあるが……。
「んじゃ、アレンは私に掴まってくれ。秒速で現場に向かう。暑さ対策だけはしとけよ?」
「もちろん。ルグアは耐火装備無しっすよね?」
「そうだな。今回は耐火魔法も無しにしとくか……」
「了解しやした‼」
私はギルド支給の耐火防具をアレンに渡す。別に全裸でマグマダイブも大歓迎だが、さすがに男の前ではできない。
アレンが耐火装備を身につけたのを確認し、彼は私に抱きつく。掴まるというよりは子供がくっついているようだ。
今日の夜は体内時計よりも長い。少しでも時間を確保するため、家から飛び出すと同時に助走抜きで50キロ台まで加速する。
異世界での特殊能力と言っていいのだろう。風の刃は皮膚を切り裂き続ける。途中降り出した雹も牙を剥く。
「ルグア‼ あとどれくらいっすか?」
「ん? そろそろ熱気が強くなる頃だが……」
「今進んでる方角は?」
「多分北」
「多分って」
「この前『方向音痴』だって言っただろ?」
「そうっしたね……」
景色はどんどん移り変わる。私がアレンに伝えた通り、万度レベルの熱気。高温慣れした私でも、無防備で耐えるのがキツい。
というのも、すでに私の足裏は焦げ出しているのだから。リアルでは感じられない感覚。ジンジンヒリヒリと痒みが増す。
そんなものはどうでもいい。今は無性にマグマへ飛び込みたい。全身で味わいたいくらいだ。
「なら飛び込んでもいいっすよ?」
「本当か? けど、お前一人ってなると……」
「俺も飛び込むんで‼」
「おま、正気か⁉」
「ダメなんすか?」
「お前なぁ……。現実見ろよ。ほら私の足」
「燃えてるっすね……」
「だろ? だから今回はだんね……」
「でもやっぱ俺も飛び込んでいいっすか?」
(どうしたものか……)
私は再び悩む。彼は何を思って言ってるのやら。その言葉に責任感を感じられない。しかし、これが彼の希望のようだ。
「後の祭りになっても知らねぇぞ‼」
「了解しやした‼」
「ジャイアントゴーレムまでショートカットだ‼」




