第2-83話 ドワーフの年収は?
「アレン大丈夫か?」
「はい、なんとか……」
「燃えちまわないようにな。いつでも回復してやる」
「ほんとあざっす‼」
「にしても、ここまでキツいとはな……。アレンよりも先に、私が消し炭と化してしまいそうだ」
火の手は私の身体の内側をも焦がす。口から火が出るくらい熱い。そして暑い。精神までも消していく。全身が痛い。
それが何故か気持ちよく感じる。この痛みをさらに求めているように……。好きでやってるわけではない。ただそう感じるだけ。
私とアレンは、アグマ活火山のマグマを泳いでいた。ジャイアントゴーレムの住処へ向かう、いわばショートカットルートだ。
「本当に大丈夫なのか?」
「だんちょー。気にしすぎっすよ‼」
「いやさ……。お前カナヅチだろ? なんに私のペースで移動してるから」
「水中呼吸スキルっすかね……。ほら以前『体力じゃなくて思考力』って言ってたじゃないっすか。水に潜る感覚を覚えてからかな? そこから一気に上達しやした」
「なるほどな。吸収法としては正しい。スピード上げられるか?」
「行けるっすよ‼」
「んじゃ、迅速に案件済ませるぞ‼」
「了解っす‼」
私は移動速度を倍にする。ついでにエルフィレンナへ向けての負荷倍数上昇。高温ダメージを阻害するように脳を痛めつけ、処理スピードも落ち始めた。
処理スピードが落ちれば、自己回復性能もガタ落ち。脳が負荷に慣れるまで数十分から数時間必要。これは耐えのバトルだ。
皮膚が焼け焦げる臭い。アレンは心配なさそう――私が応急処置で燃焼防止バフの上位互換を使用中――だが、私は危険と隣り合わせ。それくらいがちょうどいい。
「もうすぐそこだな。戦闘準備をしてくれ‼」
「終わっているっすよ‼ 団長‼」
「先越されたな」
マグマが肌の表面を覆う中、私達は浮上する。帰り道は空の旅。安全考慮の判断だ。しかし温度変化は激しいだろう。私には関係ないが……。
ひょっこりと顔をマグマの海から出す。そこには、小型ゴーレム含め、様々な大きさのゴーレムが通路を塞いでいた。
しかも、現地のドワーフが応戦中。私の視覚情報から見るからに、激しく負傷しているようだ。このままでは命が危ない。
「アレン。ちょっと待っていてくれ‼」
「わかりやした。出番来たら教えてくれるんすよね?」
「そうに決まってるだろ。お前の出番もしっかり用意してやる」
「あざっす‼ 俺も支援だけでもしときます」
「ありがとな」
――Z+魔法 エレメンタル・フィールド‼ (アレン)
――Z+魔法 ジャッジメント・オーシャン・ラビリンス‼ フロル・ラビリンス‼ (ルグア)
フロル・ラビリンスは台風。敵との距離を離し、アレンの特異点魔法が負傷したドワーフを回復させる。
コンビネーションもバッチリだ。私の手伝いは不要と考えてもいい。とまあ、師から離れるのが、最終目標なのだが……。
「少し落ち着いたみたいっすね……」
「んじゃ行ってくるか……」
「いてらっす‼」
一旦アレンを残し、状況を把握しきれていないドワーフのもとへ。
足をつけた陸は、マグマ内と比べると少し寒い。それだけマグマが高温なのだろう。これもこれで面白い。
「んーと。ギルドから連絡来てるかわからねぇが、例のクエストを受注したルグアだ。と言っても唐突すぎるか……」
「わざわざすみません……。道中大丈夫でしたか?」
「ここに着いたのは約5分前だからなぁ……」
「5分前⁉ 一体どこから?」
「ん? リフェリア」
「なんと‼」
驚くのは当然のことだろう。リフェリアからアグマ活火山までの距離は、単純計算で約80キロメートル。徒歩では2日以上要する。
それをマグマ遊泳も入れて、5分で到着した。普通では再現不可能な荒業と言っていい。
「それはさておき……。ルグア様。こちらでご用意させて頂いた耐火武具は? 身につけなくても良いのですか?」
「あ、ああ。それなら私の連れが使用している。アレン‼ こっちに来ていいぞ‼」
『わかりやした‼』
私の声に行動を開始するアレン。普通に歩けばいいのに、駆け足でやってきた。熱さ慣れしたのか足取りも軽い。
「ドワーフの皆さんはじめまして。ルグアの弟子で、〝F〟ランク冒険者のアレンです。よろしくお願いしやす‼」
「エ、〝F〟ランク冒険者ですとぉ⁉ ルグア様。件のクエストは〝L〟クラス。そのような者をお連れになられては……」
「大丈夫だって。実力は保証してやる。こう見えて思考馬鹿だが、戦闘能力は私の実力に一番近い」
「ルグア⁉ それマジ?」
「そんだけ、お前に希望があるってことさ」
「マジあざっすぅ‼」
(これで、調子に乗ってミスらなければいいが……)
彼は褒められるとすぐに調子に乗る。それだから、第七層の水中でHP全損していた。蘇生する側はありがた迷惑だ。
私はドワーフを安全な場所に避難。アグマ活火山では、黒曜石などを採掘可能。ドワーフ達は掘った鉱石で生計を立てている。
「んで、増えすぎたゴーレムを退治してもらうため、依頼提供に至ったってわけか」
「おっしゃる通りです。ルグア様」
「鉱石採掘っすか……。年間おいくらしゅうにゅ……」
――ボゴンッ‼
「いたたたた。痛いっすよ‼」
「ほんと余計なことしか言わねぇよな」
「しゃーせん……」
「ふむ年収ですか……。ここんとこ十分に採掘できておりませんから、月6,000ウェレスになるかと……」
(このドワーフ優しすぎだろ? けど、月6,000ウェレスか……。んー)
暗算ができない。昔から数字が苦手で、小学3年レベルがギリ。むしろ数字は見たくないくらい嫌いだった。
「ってことは、年間72,000ウェレスっすね」
「アレン。ありがとう」
「俺ならこれくらいよゆーっすよ団長」
「じゃ、もう少しで火の砦に着くから、そこまで案内したら現場に戻るぞ‼」
「はい‼」




