第2-80話 ルグアの謎はさらなる謎を呼ぶ
「アレン大丈夫か?」
「こっちは無傷っすよ団長‼」
「そうか。私は現在進行形で……」
「超絶猛毒状態っすよね‼」
「大正解だ」
ルグアはものすごく楽しそう。ものすごい絶好調だ。というのも、目にも留まらぬスピードで、キラービーを倒している。
俺も足でまといにならないように、斬撃を加えていく。ビュンビュンと風を切る羽音がうるさいけど、気にしてはいけない。
メルフィナやロムは、仲良く薬草を採取中だった。
『アレンさん戦ってますね……。彼、〝F〟ランクでしたっけ?』
『そうね……。まだ〝A〟クラスは早いはずなのに……。『無傷』はありえないわ』
『同感です……』
そんな……俺ダークホース扱い? 別にいいけど。俺は俺の限界を超えたいだけだし。今はバトルに専念する。
キラービーの鋭い針。ルグアは自身の身体に突き刺さったのを主に、殺している。
毎回刺されているので、毒状態も上書きの連続だろう。もうこんなんで驚いたりしない。それがルグアだから。
「おーい、よそ見すんな‼」
「あ、はいっ‼」
「そっちに5匹行った。頼めるか?」
「ドンと来いっすよ‼」
「頼もしくなったな」
「セィあァァァ‼」
「んなら私も」
――ザシュッ‼ グギャァァァ……。
「3匹同時っすか⁉ 俺も負けてたまるか‼」
「んじゃ。討伐数でバトルか?」
「いいっすね‼」
「即スタート。もう始まってるぞ‼」
も、もう? 俺は急いですぐ近くのキラービーに接近する。ルグアは一撃だけど、俺は確実に倒せるわけじゃない。
ある程度肉薄しないと、絶命させるのは不可能だった。だから、ルグアの急所斬撃の成功確率は100パーセントに近い。
俺にも急所判別能力があればなぁ。半分夢物語な理想案。彼女独自の視覚情報はなんなのだろうか?
片隅の疑問。考えながら戦うのはこれまでもあった。だけど、ルグアの謎だけは解いたことがない。彼女はミステリーガールなのだ。
「よし‼ これで300匹だな。アレンそっちはどうだ?」
「……⁉ マ?」
「マジだ」
「俺まだ数匹しか倒してないっすね……」
「はぁ……。何かあったのか?」
戦闘を中断して俺に話しかけてきたルグア。敵の攻撃は完全無視で突っ立っている。
「い、いや……。どうしても団長の謎が解けなくて……。団長がルグアで巣籠明理。それに、すでにリアルで会っていたのはわかったんすけど……」
「リアルで会っていた……。もしやお前。私に樋上中央病院を教えてくれた⁉」
「ルグアさん。ヒント言ってたって……。あとその反応わざとですよね?」
「バレたか……。これでも元演劇部なんだけどなぁ……」
「あ、やっぱり。実は気づいてた」
「それ早く言えよ‼」
「団長嘘がめっちゃ下手っすからね……」
この発言に、ルグアは顔を赤らめる。痛いところを突いてしまったかもしれない。自覚はしているのだろう。
これが嘘をつけない理由だとしたら、馬鹿な俺でも納得できる。俺だって嘘が下手。だけど大嘘つきだ。
「そうだったんすね……」
「ちょッ‼ お前後ろ見ろ‼」
「ふぇ?」
「後ろだ後ろ‼」
「だからなんなんすか?」
「んあ何やってんだよ‼ ……ッ‼」
――ヴァァァァァァ……。グギュン……。
瞬速の一閃。目を開けても見えないくらいで、ルグアは一回り大きいキラービーを捉えて倒した。俺が知ったのは倒した後。
『な、何が起こったのよ‼』
『明理さんが瞬間移動した?』
絶賛薬草狩り中のロムとメルフィナは、目をまん丸くして凝視している。俺でも反応できなかったのに。
「下手変なこと考えると、こいつの毒は即死だぞ‼ 私には無害だが……」
いや、無害ってとこからヤバいんすけど‼ ほんとに即死なの? どーして無害なのに即死ってわかったの‼
謎謎謎‼ この謎、俺マジでわからないんすけど‼ 団長はやはり神なのか? 全世界共通の神なのか?
名前に〈巣籠明〝理〟〉って入ってるし‼ 絶対神‼ 神‼ ピーマンは嫌いだけど。あれ少し苦いんだよね。
「炒めれば少し甘くなるけどな」
「なるほど」
「っと、最近調理師免許取得した私の兄が言っていた」
「ルグアは料理しないんすか? 女なのに?」
「実は……」
あ、聞かない方が良かった? すんません。
「最中絶食してる」
「ぜ、絶食ぅぅぅぅ⁉」
「今何日目だったっけなぁ。期間はリアル換算だから、もうひと月以上口にしてない」
「だ、大丈夫なんすか?」
「今回は薬物の研究もあるからさ……。約1年から2年は抜きかもな。ここまで長期間なのはこれが初めてだし……」
「いや、絶対食べた方がいいっすよ‼」
「そんなに空腹は気にしてないけどな。慣れっこだしさ」
いやいや、そういう問題じゃないでしょ‼ 普通だったら餓死するって‼ やっぱりルグアは死ぬのか?
ナイナイナイ。団長は不死身だし。それはないと思うけど、それでも怖いよ……。ほんとこの人何者なの?
「もう少しで、60日過ぎるかな? ま、これくらいは楽なレベルだが……。これが90、120と続けば生存難易度もハードコアだ……。
私にとっては未知の領域だな。こっからどこまで身体が耐えられるか……」
「ルグアって餓死とかするんすか?」
おいおい、生きてる人に餓死するのか聞いても意味無いだろ馬鹿‼ 俺の馬鹿‼
「私にもわからん」
「ですよね……」
「けど、体質の関係で死ぬことはできないが、何度か死にかけたことがある」
「死にかけた?」
「ああ、過去にオンラインゲームで勝利を重ねてたら身バレしてさ。数回に渡って私と対峙した挑戦者が、ナイフでぶっ刺してきたんだよ」
「それって」
「胸の急所にさ。んで、そいつは殺人容疑で捕まったが、私が罰金を支払った。
なんかわかんねぇけど、多額の借金を抱えたギャンブラーで、返済できない状況だったらしい。その借金も私が金貸して全額返済な」
「太っ腹過ぎる……」
どっからそんな金出て来るんだよ‼
「明理さん。クエスト依頼の指定数採取できました」
「お疲れロム。メルフィナも少しは休めたか?」
「ええ、おかげさまで」
「次はガーゴイルッすね‼」
「そしたら、エルフィレンナでお泊まりな‼」
「『はいっ‼』」




