第2-3話 宿屋の雑巾がけ
◇◇◇宿屋 外廊下◇◇◇
「なんで、客の俺達が掃除しないといけないんすか⁉」
「仕方ないじゃない、ここの従業員は宿主と看板娘の二人だけなんだから」
「それ、ほんとっすか?」
「気づかなかったの? アタシが見た限りでは、あの二人以外いなかったわよ?」
この時、俺とチェリスは薄汚い廊下で立ち話をしていた。手には雑巾と水の入ったバケツ。まるで雑用係だ。後日ここの宿主に確認したところ、従業員は減る一方。理由は教えてくれなかった。
雑巾がけをゲームですることになるほどとは、思ってもみなかったが、中学生以来かもしれない。冷たい水で雑巾をゆすいで固く絞り。二人並んで四つん這いに。
どうしてこんな状況になったのかというと……。
◇◇◇数時間前◇◇◇
『今日からここにいるやつ全員で清掃しろ‼』
「かか、管理人さんマジっすか⁉」
『つべこべ言わずにやりやがれ‼ メシ抜きにするぞ‼』
「アレンしゃん‼ アイライはお手伝いも団長の役目だと思うりょん‼ 協力してみるといいりょん‼」
「は、はぁ……」
「ほんとあんたってつれないわね……」
そんなこんなで現在に至る。
◇◇◇◇◇◇
「よーいドンでスタートするわよ」
「しょ、勝負するんすか?」
「当たり前じゃない。雑巾がけは競うものよ?」
「た、たしかにそうだと思うけど……」
「始めるから前を向きなさい」
「えっ、ちょっ⁉」
「位置について、よーい、……ドン‼」
――ダダダダダダダダダダダダダ……‼
チェリスの発声で始まった雑巾がけ。タイミングに間に合わなかった俺は、出遅れてしまった。それものはず、発声した本人が一番タイミングを知っているからだ。
合わせられなかった俺も悪いけど、チェリスが身勝手すぎるようにも見えてしまう。急いで追いかける亀と兎。
どう見ても追いつけない。加えて、舞い散るホコリで咳き込みそうになる。ゲームなのにリアル過ぎて困ったものだ。
急いで廊下を走るが、濡れた床はよく滑る。
「遅いわよ。もっと勢いつけて動きなさい‼」
「わ、わかったって。それより雑巾黒くなるの早くないっすか?」
「たしかにそうね。一度ゆすぎましょ」
「了解しやした」
◇◇◇数十分後◇◇◇
――ダダダダダ……。
「もうなんでまた黒くなんのよ‼」
「た、たしかこれで二十回目っすよね?」
あれから、何度も何度も廊下を行ったり来たり。一周するごとに雑巾が真っ黒に染まってしまう。一向にホコリが減らない。
どれだけ放置すれば、ここまで酷く汚れるんだよ‼ 俺より酷いんだけど‼ 疲労しかないじゃん‼
「ほんと、いつになればキレイになるのかしら……。アタシはもうクタクタよ……」
「チェリスさん……。あとは休んでください‼ 残りは全部俺がやります‼」
「急にかっこつけちゃって。わかったわ。ただ無理はしないでよね」
その後、何往復したのだろうか? 気がつけば、外は暗くなり、俺は丸々一日廊下を駆け回っていた。
【定期】
ここまで
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