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第1章 2話 色のない国

「はあ…はあ……」


森を抜け、小道を歩き続けて…1時間は経ったか?

そう思ってポケットをまさぐったが、スマホが無いことを思い出して溜息をつく。


一向に人里に辿り着ける気がしないぞ…


そう思った時、空が白み始めてることに気付いた。


「夜明けだ……」


薄いセルリアンブルーの上空から、山に向かってオレンジ色のグラデーションがかかっている。


正直、知らない場所で街灯もない田舎道を歩き続けてだいぶ精神的に参っていたが、少し元気が出た。


この夜明けの空が、いつになく美しく見えたから。



「……なんだ?向こうに何か…」


目を凝らすと、遠くに家のような建物群が見える。住宅地だろうか?


「家…だよな!?ていうことは、人がいる!」



俺は足の疲れも忘れ、一目散にそこへ駆け出した。








「……えーーっと……………」


どう見ても日本では見たことの無い建造物群が、そこにはあった。


「ヨーロッパっぽい…?なんて言うんだっけこれ、石造り?レンガ?いやレンガは日本にもあるか……」


というか、よく見たら道路も舗装されてない。人々が行き交うことで均されたであろう地面だ。

電柱も、電線もない。ということは……


「ヨーロッパの田舎町にワープした…!?」


どう考えてもおかしいがそれしか有り得ない。俺は確かに昨日まで日本にいたはずだ。

それか俺の記憶がないだけで、自分で飛行機取ってここまで来たのか?一晩で?

一瞬で色々な可能性が思考を巡る。


「訳分からん……」


とりあえず考えるのをやめた。


まず現在地はどこなんだ。

とにかく何かヒントがないかと辺りを見回す。すると店らしき建物を見つけた。


そうだ、店の名前や看板を見ればどこの国か分かるかも…!



「いや、何語だこれ…全く読めない……」


英語ではない、少なくともラテン系原語ではないと思う。こう、強いて言うなら古代のキリル文字に近い気がする…


どちらにせよ1文字も読めない。


「誰かに聞くしかないか……でも英語じゃないとなると出川イングリッシュも通じないし、俺帰れるのかな…」





「ねえ君、大丈夫?」




「え……」




突然声をかけられ、思わず振り向くと



「えーと、何か困ってそうだったから」



金髪の人の良さそうな顔をした青年がいた。

深いターコイズブルーの瞳に目を奪われる。


その上まさか日本語で話しかけられるとは思わず、俺は数秒言葉を発せずにいた。



「あ…えっと、こ、ここはどこでしょうか?」



青年は目をぱちくりさせて不思議そうに答えた。



「ここはヴェスカニア王国だよ。」



ヴェスカニア…?聞いた事ない国だ。


「あの、俺アジアの日本っていう国からきたんですけど、その、信じられないかもしれないんですけど気が付いたらこの国にいて、なんとか日本に帰りたいんです!日本大使館はどこでしょうか!?」


青年は眉をひそめて、怪しいものを見るような目で俺を見た。

うっ…さすがに言動が不審者すぎるだろうが、事実なのだから仕方ない。この青年に一抹の望みを託して思いっきり頭を下げた。


「…えっと、海の向こうの外国から来たってこと?それで母国に帰りたいの?」


「そう!そうです!」


そう答えた瞬間、彼の顔が強張った。


「あ、あの…?」


「……ごめん」


そう言い残して青年は街中に消えてしまった。

俺は突然の行動にポカンと口を開けたままその場から動けずにいた。


「なんなんだよ一体……」







青年が去ってしばらくした後、俺は相変わらず町中を歩き回っていた。


しかし先程の青年の不可解な反応によって、誰かに話しかけることが出来ずにいた。

何より、知らない国のはずなのに聞こえてくる言葉が全て日本語なのが不気味だった。



日の出から数時間は経っただろうか。辺りはすっかり人通りが多くなり市場が賑わっていた。


そしてしばらく歩いていていくつか気付いたことがある。

まず、さっき太陽が東側から昇って今南側の空を通ってる…って言うことはここは北半球だ。気候はなんとなくイタリアとかフランスとかに近い…気がする。


町の人々も軽装だし、今は春か夏?

四季があるとするれば中緯度のどこかだ。

そう考えるとここはやっぱりヨーロッパ付近な気がするけど…


「ヴェスカニア王国なんて聞いたことないぞ…」


とにかく何か情報が欲しい。

誰か話を聞いてくれそうな人はいないだろうか。

でもまたさっきみたいに拒絶されるかも…いやいや、そんなこと言ってちゃ一生帰れない。頑張れ俺!


そう考えながら歩いていると市場を抜けたらしい。人通りもまばらになり、路地では子供たちが楽しそうに走り回っている。

その中で1人、輪の中に入らず黙々と地面に何かを描いている男の子が目に入った。


俺は一瞬躊躇ったが、意を決してその子に話しかけてみることにした。



「こんにちは。何を描いてるんだい?」


「……こんにちは」


男の子はこちらを一瞥しただけで、また黙々と作業に戻ってしまった。


よく見ると、男の子は白いチョークのようなもので髪の長い女性の絵を描いていた。

ヴェールのような布を被り、物憂げな表情をしている。


「これは…君のお母さん?」


「ううん、違う。」


「じゃあ誰なんだい?」


「誰でもないよ。今日僕の夢の中に出てきた人。」


「…そうなんだ。すごく上手だね。」


「本当は髪が青くて、金色の眼をしてたんだ。でも、これでしか描けないから。」


男の子は手を止め、こちらを見た。

その時



「ミレ!何やってるの!!」




大きな怒声と共に女性が近付いてきた。



「お母さん」


「あなたまた…!やめなさいと言ったでしょう!?」


俺が状況が分からずしどろもどろしていると、母親が俺の存在に気付いたようで顔を真っ青にしている。

どうする、このままだと不審者だ。なんとか弁明をしようと口を開いた瞬間

母親が俺に頭を下げた。


「お願いします!この子悪気はないんです!どうか見なかったことにして頂けませんか?私からよく言って聞かせますので…!」


「えっ…はい?」


「ミレ!早くそれを消しなさい!」


「…うん」


男の子…ミレが地面の絵を布で消し始めた。


「えっえっと…とりあえず頭を上げてください。俺は何もしませんから…」



そう答えると母親は安堵したようで、ありがとうございますと再び頭を下げて、ミレを連れて家へ戻っていった。




どう考えても異様な光景だった。


そして俺はようやく、この町に来てから感じていたある違和感に気付いた。




────無いんだ、色が。



家も、店も、服も、全て白や灰色に近い色ばかりだ。


「どういう事だよ…なんだよこの町……」





その時




1人の少女が俺の横を通り過ぎた。




俺は彼女から目が離せなかった。




なぜなら色のないこの場所で、唯一、彼女は色を纏っていたから。





「あのっ…!」



俺は彼女の肩に手をかけて呼び止めた。

彼女がゆっくりと振り返る。





彼女の着ているツナギには、色とりどりの絵の具の汚れがびっしりとこびり付いていた。



漫画ってネーム描いてセリフ入れてペン入れしてベタトーンってしないといけないけど小説って文字打てば完成するの楽すぎワロタ。


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