第1章 異世界入り
美術大学に通う青年・淡口珊瑚は、「芸術に意味なんてあるのか」と悩んでいた。
そんなある日、彼は“自由な絵”が禁じられた異世界へ転移する。
そこでは絵画は王家の壁画のみ。庶民が絵を描くことは忌避され、キャンバスも絵の具も存在しない。
そんな世界で珊瑚は、塗装屋の娘・シェルと出会う。
彼女は父の仕事用の染料を使い、“壁画の練習”と称して密かに家の壁へ絵を描いていた。
鉱石から絵具を作り、動物の皮から油を作り、絵の枝から紙を作る――。
異世界の風土に苦戦しながらも、二人は少しずつ"芸術"を広め、興していく。
「はあ……何がダメなんだろ」
講評棚に並べられた自分の絵を眺めて溜息をつく。
「君、ここで何を描きたかったの?」
昼間、講評の時に教授に言われた言葉が頭から離れない。
俺は作家になりたかった。
昔から絵を描くのが大好きで、もっと技術や技法を磨いて絵で食べていけるようになるために美大に入った…けど
公募展は落選続き、SNSに作品を載せても全く伸びない、両親からは卒業したら地元に帰ってきて就職しろと言われる始末だ。
「もう潮時かなぁ…」
何のために地元出て、苦学生してまでお絵描きなんかしてるんだろ…人より上手い訳でもセンスがある訳でもないのに。
両親の言う通り、大人しく地元に帰って普通に働くべきなのかもしれない。知り合いのツテがあるって言ってたしな。
もう___諦めるしかないのかな。
「っと、そうだ。画材を買い足さなきゃいけないんだった…異世界堂まだやってるかな」
大学を出て急いで駅へ向かう。
改札を通って階段を上ると、丁度ホームに来ていた電車に飛び乗った。
「…あれ?」
この時間…いつも退勤ラッシュで混んでるのに車内がガラガラだ。もしかして、、、
「反対方向だ、、、、、間違えた、、」
画材屋にはもう間に合わないだろう。
しょうがない、次で降りて引き返そう。
そう思い直してスマホで見始めると、最近のニュースに"AIイラスト"が取り上げられていた。
そうだ。AIに仕事を奪われつつあるこの世の中で、俺なんかが絵を描き続ける意味があるんだろうか?
電車を降りると辺りはすっかり暗くなっていた。
「電車代もったいないし、さっきの駅まで歩くか。それにしてもこの辺初めて来たな。」
自販機でソルティライチを買って線路沿いを歩く。
「………えっ、あれ?」
線路沿いを真っ直ぐ歩いていたはずなのに、いつの間にか草木生い茂る森の中にいた。
「ぼーっとしながら歩いてて道ズレたのか…?てか今どこだよ」
スマホを取りだして現在地を確認しようとすると…
「………ない。」
それ以前に
「リュックも…ソルティライチも…どこにも無い!!!!は!?え!?」
「俺酔って…もないし、と、とにかくここから出よう!私有地とかだったらまずいし!なんか怖いし!」
風の流れを頼りに必死に走る。
すると目の前が拓けてきた。
「はあっ…はぁ、出られる、、、、」
森を抜けるとそこには
「………………え?」
舗装もされていない小道に無数の木造の納屋が並んでいた。
家も、ビルも、何一つ見当たらない。とんでもない田舎だ。
「ちょっと待て……マジでここどこ…?地元…じゃないし」
上を見上げると澄んだ空に星が光り輝いている。妙に明るい気がした。
「……とりあえず人を探そう」
いくら田舎でも歩いてれば家の1軒や2軒あるだろう。
そう言い聞かせて小道を進み始めた。




