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死がふたりを分かつとも!  作者: 狗巻犬
Burn Baby Born
16/20

016 ひとのつくりしもの

「この子をあなたに預けます。きっと力になってくれるでしょう」


 残念ながらカラミティと話せる時間はそう長くなかった。その代わりに託された一体の人形。


「人間を模して作られた魔導人機(オートメイド)。この子の名はアルニカです」


 ルーシィの魔力が抑制されている現状ではその造形まではわからなかった。けれど内側では僅かに魔力が循環しているのがわかる。これはたぶん、カラミティの魔力だ。


「気付いたようですね」


 彼女がそう呟いたのと同時に、魔導人機から魔力の気配が失われていく。そうすると自立して動くことが出来なくなったのだろう。ガクンと頭を垂れるその姿を見るに、魔力を失えばただの人形と化してしまうらしい。


「この子に込めることの出来る魔力は一種のみ。その魔力の持ち主を主人と認識して従います。込められた魔力はその本人が解除するまで上書きも打ち消すことも出来ません」


 カラミティはわたしをそっと抱き上げて、アルニカの胸部に手を添えさせる。そこで感じたのは小さな脈動。魔力を失ってもなお、この子は生きているんだ。


「左側胸部に核が収納されています。今は動力源となる魔力を失い休眠していますが、此処にあなたの魔力を注ぎ込めばその主の命に従う忠実な魔導人機として目覚める筈です」


 さあ、と急かされてわたしは小さな手のひらに魔力を込め少しずつ放出していく。自分自身の魔力と神龍の魔力、そのふたつを無意識の内に。


「む」


 異変を感じ取ったカラミティとわたしの目の前で、小さな爆発が起きた。咄嗟に魔力障壁を展開して身を守ったカラミティの反応の良さはまさに見事のひとことでした。


『壊れてしまったでしょうか』


 爆発の衝撃で倒れた魔導人機を遠目に問えば、カラミティは小さく唸る。わたしの込めた二種類の魔力が原因のようだけれど、彼女にははっきりとそれが分かっていないらしい。


「・・・どうやら核に負荷がかかり過ぎたようですね」


 再びアルニカの胸部にわたしの手を添えさせる。なるほど、先ほど触れた時に感じた脈動がかなり弱まっている。小さな瓶のような容器に収められていた魔導人機の核が砕けて砂のように細かな粒子と化している。このままでは彼女は、アルニカは数刻もしない内に生に終わりを告げるだろう。


『どうにか替わりになる核を用意することは出来ませんか?』


「残念ですが、それは無理です。彼女を始めとする魔導人機の核として使用されている部品は旧時代の遺跡から発掘された古代文明の遺物。どんな仕組みで動いているのか、解明も進んでいない上に希少で、簡単には手に入りません」


 直接言葉にまではしないものの、諦める他ないとカラミティは告げていた。どうすることも出来ない。わたしもそう諦めかけた。けれど不意に視界が広がる。何か危機が迫っているわけでもない。それなのにルーシィの魔力が周囲に満たされていく。わたしとアルニカの姿だけが明瞭になって、それ以外は真っ暗なまま。


 アルニカは美しい魔導人機だった。金色の髪は肩に触れる程度に短く切り揃えられ、表情は眠るように静かで。このまま核を失ったまま時間が過ぎてしまえば、二度と醒めない眠りに就くだろう。なぜルーシィはわたしにこんな光景を見せたのだろう。生命の巫女の魔力といえど有限で、無意識だろうとわたしが埋め込んだ“種子(シード)”の吸収速度を上回って魔力を放出することだって簡単ではない筈なのに。


 そうだ。まだルーシィは赤子で、自分の意志を自分では表現できない。だからどうしても伝えたいことがある時は魔力を用いてわたしに気づかせようとする。これまでもそうだった。そしてたぶん、いまこの瞬間も。ルーシィはわたしに、アルニカを救ってと、そう願っているのかもしれない。


『ならばその()()()を創り出しましょう』


 大容量の魔力を収めて循環させる為の核。その役割を担うことの出来る物質を創り出す力が、そういえばわたしには在るのだ。


『種子』


 アルニカの胸に触れた手のひらが、まばゆい光を発する。もしもあなたが目覚めたなら、その時は友達になれるだろうか。

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