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死がふたりを分かつとも!  作者: 狗巻犬
Burn Baby Born
15/20

015 わたしの世界

『先ほども申したように、わたしにはこの村を――妹の元を離れるつもりはありません』


 魔力を伝った交信。わたしの言葉に足を止め此方を振り返った紅蓮の聖女は、きっと怪訝な表情を浮かべている筈です。


『それでもあなた方に・・・聖教に力を貸すことは出来るでしょう』


 わたしが提案するのは従属ではなく協力関係。聖教の後ろ盾も聖女の称号も審神者としての地位も必要ない。けれどルーシィが生きていくこの世界が少しでも良いものになるのであれば、力を貸すこともやぶさかでない。この地で争いごとが起こるよりずっと良い。


「・・・聖教に協力する代わり、これまで通りに村で暮らすことを許容せよ。交換条件というわけですね」


 紅蓮の聖女は一拍空けてから冷静に言葉を紡いだ。どうやらこちらが言わんとすることを即座に理解してくれたらしい。先ほどの戦闘と併せて、感触としては悪くないと思う。


 彼女は暫し考え込むような素振りを見せる。それはつまり彼女にそれを決定するだけの権限が与えられていることを証明していた。先の戦いでは上手く丸め込むことが出来たものの、改めて恐ろしい相手であることを実感させられる。勝利というアドバンテージがなければ駆け引きにすらならない提案。


「わかりました」


 凛と響く声。迷いなく振り下ろされた結論が徐々に周囲に浸透していく。人々のざわめく声。カラミティに付き従う騎士たちも驚きを隠せずにいるようだった。


 お父様とお母様はしばらく呆然と立ち尽くしていて、けれど村の人々の喜ぶ声で我に返る。ふたりは溢れる涙を拭おうとすらせずにわたしを抱き、頬に優しくキスを落とした。両親を悲しませるような結果にならずに済んで本当に良かった。


「紅蓮の聖女の名に於いて、イヴ・グレイス・キャンベルを新たなる審神者の候補者“承子(つぐこ)”と認定しましょう」


 審神者ではなく、あくまで候補者という肩書で。ある程度自由に動けるように、わたしにはその方が都合がいい。彼女もそれを分かっていて、敢えて承子としての立場に留めてくれたのでしょう。


「その代わりに聞かせてもらえますか。審神者を超える力を持ったあなたが、妹さんやこの村に固執する理由を」


 初めの頃のような威圧的な言葉ではない。強制ではなくて、あくまでも彼女本人がそれを知りたがっているようでした。


 勿論、すべてを話すことはできない。けれど一度戦ったからこそわかる。紅蓮の聖女カラミティ・フレイムは信念を抱くひとりの人間でこそあれど、わたしやルーシィ、村の人々に敵意があったわけではない。大義のもとに生きる故の強かさ。それは尊敬と、そして信用に値する。


『・・・すべてを伝えることは出来ません。けれど嘘はつかないと、そうお約束します』


 もしも彼女を、カラミティを味方につけることが出来れば。そうすれば聖教の眼を欺きルーシィの力を秘匿することが容易になるかもしれない。


 この国の、この世界の内情を詳しく知ることが出来れば、あらゆる危険や可能性に対処できる。その為に備えることが出来るようになる。


『ですがその前に審神者や聖教について、詳しく教えていただけますか』


 わたしは自分の世界を守る。そのために戦う。ルーシィがひとりの女の子として幸せに生きていけるように。普通の人生を歩んで行けるように。


 わたしの世界にはルーシィの笑顔だけあれば良い。

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