挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

此岸より愛を込めて花束を

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

48/235

直線通路に迷宮を定義する、人それを思考と呼ぶ

 この感情、どこかで同じような……あぁそうだ。
 「大宇宙で宇宙人と生存競争」というキャッチコピーの割に蓋を開けたら味方陣営でのNPC達による突然の内ゲバ、というか敵エイリアンも内ゲバ、見るだけで正気度が削られそうな宇宙怪獣が乱入し、地球の意思によって生み出された謎種族が人類に対して攻撃……と信じられるのは自分と武器だけ、とハードボイルドじみたプレイを強制させられる超乱戦MMO「ユニバース・ストーム」で見た目が顔から大量の触手が生えた人型スライムとしか形容できない宇宙怪獣がクッソ可愛らしいロリボイスで協力要請して来た時の感覚に似てる……

 最終的にプレイヤーによる核爆弾特攻祭りでそして誰もいなくなった状態になったのは実にアポカリプスしてたなぁあのゲーム。その時俺は核を抱えたプレイヤーを敵陣まで輸送(アテンションプリーズ)する宇宙船の操縦士をロリボイス人外と一緒にやっていた。

「………っは!?」

 いけない、精神が顔面触手ロリボイスに連れて行かれるところだった。今やってるのはユナイト・ラウンズとは別方向で自分以外全部敵のゲームではなくシャングリラ・フロンティアだ。
 何か宇宙的な神秘を受信しかけた精神を神ゲーに戻し、改めて鎧騎士……サイガ-0が差した一手を考察する。

 フレンドシステム、殆どのゲームがこの要素を持っていると言っていいだろう。それは時にゲーム内で仲の良くなった証であり、時にステータス増強のための一要素である。そしてこのゲームにおけるフレンド申請は可視化された友好関係だ。
 フレンド関係になったプレイヤー同士であればパーティを組む際に優先される、やたら手間のかかるメール機能が多少楽になるなど必須ではないが便利な機能が増えるらしいが……この状況でフレンド申請という選択をする意図は何だ?
 対人における隙作りのテクニックか? いや、そうであるなら今頃は真っ二つにされている。
 ならば友好的関係を築いて俺が自主的にユニークを開示するのを促す平和的一手? となればフレンド申請は武器を出さない以上の対話の意思表示?

「……分からん」

 この俺をここまで悩ませるとは、恐るべしサイガ-0。たったの一手で俺を完全封殺してみせるとはな……だが、俺とて数々の対人を経験したゲーマーとして参りましたユニークを教えます、とはいかない。受けて立つ!
 俺はフレンド申請を認証、だがそれは仲良くしましょうサイガ-0さん! という降参ではない、お前の一手に乗った上でそれを超えるという対抗の意思表示だ。

「…………」

「…………」

 互いに無言。この静寂は西部劇のガンマン同士の決闘にも似た緊迫を孕んでいる。ただ違いがあるとすれば、この相対に3カウントはない。先手が必ずしも勝利とは限らない。レベルと経験、ゲーマーとしての力量全てにおいてディスアドバンテージを負う俺はサイガ-0のアクションにどう対処する?
 畜生、この手の駆け引きは苦手なんだ。俺が一体何度ペンシルゴンにカモられたと思ってるんだ、最終的に実力解決に持ち込まないとどうしようもないってのに、それを選んだら俺は速攻八つ裂きだ。いやむしろ三枚おろし?

「……あの」

「っ!!」

 く、先手を取られた! いや、後手は悪手ではない。向こうからのアクションを見切れ、対処しろ。さぁどう来るサイガ-0……!

「もしよければ、その……攻略をお手伝い……します、ぞ?」

 数瞬の思考停止。いや、停止というよりもナウローディング、意図を読み込もうとしてると言うべきか。
 もしかして俺が複雑に考えすぎているだけで第三者が見れば現状は極めてシンプルなのでは? と一瞬そんな考えが頭をよぎるが、そう断ずるのは早計だと己を戒める。

「あー、そのレベルパワーで簡単攻略はあまり好きではないので……有難い話ですがお断りを……」

「そ、そうですか……その、差し出がましい真似を……」

「あぁ、いえ……」

 沈黙。だが先ほどまでのそれ……もしかして俺が一方的に警戒しすぎていたかもしれない緊迫とは違う。何だろう、この……好感度が低くてフラグが立たなかったギャルゲー初見攻略みたいな気まずさ。

「あ、その、攻略の邪魔をして、その……」

「あぁ、いや……この前は踏み台にしたりしてこちらこそ申し訳なく……」

「いえいえそんな……」

 と、後ろの方で喧騒の気配がする。白頭巾()を探すプレイヤー達がこっちにも来たのか。不味いな……

「……あ、その、攻略、頑張って……下さい。その、またの機会があれば」

「え?あー……それじゃ」

 驚く程あっさりとサイガ-0は門から退いた。実は罠なのではと疑う自分もいるが善意を全て疑うのがデフォなのは世紀末円卓だけだ。
 ともかく、向こうは俺を足止めするような意図はないらしい。未だその真意を読み切ることはできないが、今はいち早くサードレマから離脱することが先決だ。
俺は軽く会釈すると、門からサードレマの外へと飛び出したのだった。

 ……そういえば、いろいろ考えすぎてて今思い出したが、サイガ-0氏は声的に女性だったのか。ネカマは多いがネナベは珍しいな……いや、今のご時世ネカマなんて絶滅危惧種ではあるんだが。なにせ声でばれるからな、逆に開き直ってバリトンボイスの幼女とか普通にいるが、男性の……それも細身の八、九頭身じゃないゴツい男性アバターとは、相当のゲーマーと見た。












 人が分裂したり爆散したりする格闘ゲーム、ログインするだけでリスキルされる協力型MMO、懸命に育てた植物や家畜を為す術なく更地にしていく巨大生物の脅威に怯える農業酪農シミュレーションゲーム……彼が嬉々として購入していったゲームを自分もプレイすることで交流の足がけにしようとしてて……その悉くに失敗。
 ゲームショップの女主人より「とりあえず劇毒に挑む前に基本的なスキルを身につけるべき」という言葉を受けて始めたシャングリラ・フロンティア。真面目だが少々堅物の嫌いがあると思っていた姉が実はシャングリラ・フロンティアのヘビーユーザーだと判明したと同時に、身内特権で黒狼に所属して目的のために邁進していった結果として今のサイガ-0が出来上がったわけだが、最初の目的からはどんどん遠ざかっていく現状に歯噛みしていた。
そんなある日、彼が極めて珍しいことに(女主人談)メジャーな大作ゲーム、それもシャングリラ・フロンティアを始めると知った時の喜び。
 会えず、すれ違い続けた数日間がついに結実したという事実、フレンド欄の最新に表示された「サンラク」の四文字。

「んんんんん……やったぁぁぁぁっ!!」

 しばらくした後、サードレマのプレイヤー達は非常に……そう、非常に上機嫌な鎧騎士の姿を見たという。
【朗報】ヒロインちゃん、女性として認識される
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ