挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

此岸より愛を込めて花束を

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

49/235

華やかなる樹の海

1話ごとの文字数増やそう計画、始動。
 なんやかんやてんやわんやあったとはいえ、とりあえず最優先目標(マストオーダー)は達成した。
 俺の動きを完璧に読み切ってみせたサイガ-0というプレイヤーとの遭遇というアクシデントもあったが、結果だけ見ればまぁ平和的解決と言える。

「ふみゃあ、めっちゃ強そうな開拓者サンでしたわぁ」

「だろうな……多分俺の四、五倍強いだろうし」

「サンラクサンもヴォーパル魂でなら負けてないですわ!」

「そりゃどうも」

 別に人と話すのが苦手というわけではないが、ハクスラやってる最中にいきなりシュミレーションゲー展開に切り替わったようなもんで、妙に疲れた。

「まぁなんだ、比較的話のわかるリュカオーンと会ったと割り切って切り替えていこう」

 プレイヤーとの駆け引きも面白いが今はファンタジーにハクスラしたい気分だ、これから挑むエリアを全力で楽しんで、根っこの先端まで攻略し尽くしてやろう。
 そんなこんなでサードレマでの緊張はどこへやら、俺とエムルは驚く程平和に千紫万紅の樹海窟に到着する。

「サードレマ離脱と諸々の補填のために所持金を使い切ったからなぁ、探索と稼ぎを両立しねーと」

 所持金驚異の100マーニ、薬草をかろうじて買えるかどうかの素寒貧なので金策は急務だ。採取系はそれを作業とする場合は一気に面倒になるが、探索の一環としてなら楽しい冒険に早変わりするし、ぼちぼちやっていくか。
 インベントリが嵩みすぎるとAGIに影響出るからそこらへんの兼ね合いも考えないとなぁ。









 トンネルを抜けると、そこはファンタジーであった。そんな経験は幾度となくしている、トンネルを抜けたら鼻先をライフル弾が突っ切ったこともある。
 ああ、一番酷かったのはトンネルを抜けたら目の前を隕石が突っ切った時だったな。黄色い線の外側で電車の通過を見るかのごとく目の前を隕石が横切ったというのに、当たり判定の関係で無傷だった時は流石に苦笑いして……隕石の後ろから飛んで来たプレイヤーの飛び膝蹴りが頭に命中してリスポーン、いい思い出だ。

「わぁ、洞窟の中なのに明るいですわ!」

「光る苔……そっち系か」

 まさに名前の通り千紫万紅、様々な周囲の花が鮮やかな花弁と蜜の香りを撒き散らす花の絨毯。そして洞窟内だというのに森というには深すぎる木と植物が織りなす樹の海……樹海。現実ではありえない幻想の光景を照らすは壁や天井にびっしりと生えた光る苔。現実のヒカリゴケは太陽の光を反射する、とか聞いたことはあるがこれは完全に自ら光を生み出しているな……世界観次第では擬似太陽が浮かぶゲームもあったし、それを活用(・・)する可能性も考えると、こう言った確認は重要だ。

「さて、まず何からしたものか……お」

 目を凝らした先、早速モンスターを発見する。
 それは巨大な蝶の翅を持つ……球? いや違うな、よく見ると中を黄金色の液体で満たしたバスケットボール大の胴体(それ)と比べるとあまりにも小さいピンポン球程の頭がくっついている。

「成る程……そんな思わせぶりに腹を揺らしちゃってまぁ……」

 ムラっと(ドロップアイテム狙い的な意味で)くるよね、うん。俺は湖沼の短剣を取り出し、一気に駆け出す。
 こちらに気づいたらしい蝶……便宜上風船蝶と呼ぶが風船蝶は腹に大量の、恐らくは花蜜を蓄えているにも関わらず軽快な動きで飛び去ろうとするが……遅い。
 追い越しざまに翅へ一閃、風船蝶がバランスを崩して空中で不自然な隙を作った瞬間に頭へ一突き。腹に一切のダメージを与えることなく翅と頭へクリティカルを叩き込めば風船蝶はポリゴンと共に爆散、そして予想通りポリゴンの中から地面に落ちんとする蜜風船をキャッチ。

「まぁ絶対これはレアドロップとしてあると思ったわ」

「わぁ、アタシも触ってみたいですわー!」

 水風船をもう少し分厚くした感じ、だろうか? 取り扱いを間違えればすぐにでも割れてしまいそうなそれをブニブニと押すエムルを制しつつ、インベントリに入れてアイテム説明を見る。




・ストレージパピヨンの蜜袋
ストレージパピヨンが集めた蜜を貯蔵する腹袋。衝撃に弱く、蜜が溜め込まれた状態のものを手に入れるのは非常に困難。
食べて楽しむも、投げて楽しむも正解。


「投げる……?」

 いや確かに思い切り蹴り飛ばしたい感触はしていたが。
 まぁいい、どうせこのアイテムだけでも三、四個は集めるだろうしそしたら一つくらいぶん投げてみるか。

「さぁ、次行ってみようか」

 花の蜜を集めるのは蝶だけではない。そして、実在の生物をモチーフにモンスターをデザインする場合、蝶よりもメジャーなやつがいる。

「やっぱりいたか、蜂型モンスター」

「あわわ、エンパイアビーのワーカービーですわ……!」

 ふむ、エンパイアビー・ワーカーと言ったところか? 虫特有のあのなんとも言えない質感の体躯が先程のストレージパピヨン同様バスケットボール大の虫型モンスターというのは人によっては非常に地獄めいたエリアではないだろうかここ。
 蜜蜂をそのまま巨大化させたようなそれは先程のストレージパピヨンと同じく、その大きな身体でせっせと花から蜜を採取している。いや、蜜だけじゃなくて花粉もか?

「そうだな……俺の見立てでは針がレアドロップと見た」

 とはいえとりあえずは狩って何が泥するか見るか。俺は先程と同じように駆け出し、切り裂き、突いて……と、その瞬間だった。

 バシュッ、とエンパイアビー・ワーカーの身体から何かが空へと射出される。それは花火のように空中で破裂すると、黄金色の粉末となって周囲に散る。恐らくあれの正体は花粉だろう……いや、そこは重要ではない。
 こんな感じの絵面、どこかで見たことがありますねぇ……具体的に言うと、ミリタリーな感じのゲームにおける救難信号(・・・・)の照明弾的な……

「きゃああ! ハンタービーの群れがぁぁぁぁぁ! ですわぁぁぁぁ!! 」

 その語尾のつけ方はちょっと無理ない?

「ワーカーと比べると攻撃的というか、ぶっちゃけスズメバチだな」

 成る程、役職によって現実における別種の蜂がモチーフなのね。
 羽音がリフレインする中、俺とエムルに強い敵意を向ける複数匹のエンパイアビー……恐らくハンターは、スズメバチに似た極悪な面構えで顎をカチカチと鳴らす。

「数は五体……いや、奴らもワーカーと同じように増援を呼ぶとしたら最悪鼠算的に増える可能性も……」

「サンラクサン!? 私も加勢しますわ!? というかむしろ自衛しますわ!」

「そうだな、エムルは自分の方に来たやつだけ相手してくれ。それともう一つ指示を出す」

「は、はいなっ!」

「適当に採取してて」

 ずこーっ! とコケかけたエムルだが、少なくとも雑魚戦でまでエムルに頼っているようじゃな……多数上等、こちとらマジョリティハウンドで慣らしてるんだよ。
 マジョリティハウンド程上等ではない、と言っても司令塔(コマンダー)を失ったワンコ共よりは上等な動きで俺へと殺到する……こっちには六体、二体はエムルの方に。

「っしゃ!」

 シンプルに正面からケツの針で刺しに来たビー・ハンター1をスキルではない、自前のテクニックによるパリィで弾き、低軌道から噛みつかんとするビー・ハンター2を足で頭を踏みつける。
 ビー・ハンター3と4は距離が遠いので放置、ビー・ハンター1の後ろに追随するように攻撃を仕掛けていたビー・ハンター5の噛みつき攻撃に対して、動きを加速させるアクセルを起動しつつこちらから短剣を突き出して迎撃。
 始動は後手でも先に当たれば則ち後の先(・・・)である。ビー・ハンター5の顎の先、口腔へとスキルの補正を受けた短剣が捻じ込まれ、さらにスパラルエッジを起動しビー・ハンター5の口腔をズタズタに蹂躙した短剣を引っこ抜く。

「奇襲仕掛けるならその翅音(バイブレーション)も消すべきだったな、うるさすぎ」

 反響定位(ソナー)とまで言うつもりはないが、ビー・ハンター6が上に飛んで行ったのを見ていれば事前に備えることもできるし、音で大体の位置は把握できる。
 ループスラッシュ起動、スタミナが続く限り全身を回転させながら斬撃を放ち続けるスキルで腰に捻りを入れ、本来は横回転の連撃を縦に捻じ曲げる。一撃目がビー・ハンター6の右翅を打ち据え、二撃目でひしゃげた右翅を断つ。手首で刃の向きを調整しつつ三、四、五撃でビー・ハンター6の腹にクリティカルを三連。

「ふっ!」

 任意でスキルを中断できる、という点でこのスキルは非常に優秀だ。爆散したビー・ハンター6のポリゴンを浴びながら、スタミナを回復。数秒の間に残った奴らの位置を確認する。
 1は背後、2は怯み終了で目の前、3と4はエムルに注意が向いてるな、レベルと火力で俺に勝るエムルはヘイトを集めやすい。だが態々「仲間を呼ぶ」コマンド持ちのモンスターだ、総合的なヘイト判断は質ではなく量だろう。さてそろそろ5は……

「よいしょっと」

 四、五度突いてビー・ハンター5はポリゴン爆散、と。軽く歩く、ステップする程度ならスタミナは消費しない。
 攻撃時の動きは割と素直なビー・ハンター1、2の攻撃を軽くいなしてスタミナ回復……うん、まだアクセルの効果は持続してるな。

「オッケ、方針決定!」

 まず狙うのはビー・ハンター2。振り向きモーションを向こうがしている隙に肉薄し、アクセルで上昇したSTRとAGIにモノを言わせた連撃を叩き込む。このエリア攻略の適正レベルがいくつかは知らないが、レベル30ならまぁそこそこ戦えるようだ。
 飛び散るポリゴンの中を駆けてビー・ハンター1にラッシュスラッシュ起動。回転連撃なループスラッシュとはまた別の、オーソドックスな連続斬撃を浴びせ、フィニッシュに一発蹴り込んでやればビー・ハンター1もポリゴンへと変ずる。

「お待たせ」

 アクセルの効果時間が切れる、だが残ったわずかな時間は距離を詰めるには十分。ビー・ハンター3、4のヘイトは最終的に四体のビー・ハンターを倒した俺へと向いたらしい。
 二体同時の攻撃が俺を狙うが、少なくとも俺に本気で一撃入れるつもりならフェイントとディレイは必須だぞ? 直線の攻撃を食らうとしたら、まぁ流石に銃撃は食らう。ただ、条件が揃っていればピストルくらいなら回避できるかな……?
 スライドムーブ、瞬間的に滑るような回避を可能とするこのスキルを、自前のステップで回避した二体のビー・ハンターへ追随(・・)する為に使用する。スライドムーブで稼いだ距離に、二歩のバックステップ、腰を捻って下から上へ斬り上げれば……!

「はっはぁー! ビンゴ!!」

 冴えてる、冴えてるぜ俺! 完全に見切ったビー・ハンターの動きからだいたいこの辺りだろうとアタリをつけて放った双剣二本の斬り上げは見事ビー・ハンター……どっちだこれ、多分4かな? ともかく、ビー・ハンターの腹に命中する。む、この感触はクリティカルは出せなかったか、流石に勘で振った攻撃をクリティカル命中させるのは難しいな。

「リキャスト終了!」

 三度の攻撃でビー・ハンター4はポリゴンと散り、その一瞬を狙ったビー・ハンター3が俺へと最後となる攻撃、顎をガチガチと音立てながら噛みつきを敢行する。

「これ当たり判定は何処なの……っと」

 疑問は口に、実証は剣に。レペルカウンターによって最後の攻撃ですら俺に傷一つつけられなかったビー・ハンター3に少しだけ哀れみを感じつつも、当たったらこちらが死にかねないのでプレイヤーはプレイヤーらしくMob狩りをさせてもらうとしよう。
 螺旋のエフェクトを帯びる湖沼の短剣、突き刺さり捻れる蜂、そしてビー・ハンター3はポリゴンとなって砕け散る。

「ふぃー、疲れましたわ」

「また真似っこですわー!」

 今のはわざとではなく……いや、無意識のうちにエムル語尾に感染している……!?
 そんなくだらないことを考えながらも、俺とエムルはせっせと地面に落ちたドロップアイテムを拾うのだった。

とりあえず5000字をノルマにしています。1万時はちょっと毎日更新が隔日になりそうなので断念しました。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ