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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

旅する狼よ、大志を抱け

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大志の灯火を抱いて 其の十

具体的に言うと十二月上旬から毎日投稿難しくなりますねこれ(ゼノブレイド2発売)
コレクターズエディションの付属眺めてるだけで一日潰せそうなんですけど……
ニコニコと喜色を滲ませながら、要約すると「三エリア踏破してここまで走ってきました」とのたまった秋津茜。
なるほど確かにユニークシナリオ「兎の国からの招待」を自発した程の技量があればそう難しいことではないだろう、恐らくどんな説得をしたのかは不明だがエムルとパーティを組んでいることからボス自体はソロ討伐ではない。だがそれにしたって早すぎるだろう。

「…………言いたいことはいろいろあるけど、今はそれどころじゃないんでな」

「はいっ! あれが噂に聞く「夜襲のリュカオーン」ですねっ! 未だレベル43の未熟者ですがお力添えさせていただきます!」

「あぁ………あぁ!?」

今何か壮絶に頭のおかしいセリフが聞こえたきがするんだが、聞き間違いか?

「レベル43!?」

「はい! エムルちゃんとシークルゥさんのお力添えでここまで来ました!」

シークルゥ……聞き覚えがあるぞ、たしかエムルの兄の一人で、名前的にビィラックの一つ下なのだろう。つまりヴァッシュの子供の中でも次男ってことか、であれば恐らくそのレベルは90代。エムルのレベルが現在90間近であることを考えれば過剰とも言える介護要員を抱えていることになる。成る程、道化の蜘蛛(クラウン・スパイダー)歌う瘴骨魔(ハミング・リッチ)程度ならヌルゲー突破が可能になる。

「それは……その、リュカオーン相手にはほぼ役に立たないのでは」

「そうですね! 火力支援ではお役に立てないですが……緊急のエスケープでしたら先ほどのように!」

なんというか、俺の近辺ではあまり見かけないタイプのゲーマーだ、なんというか……その、「初々しさ」にガソリンをぶっかけて火をつけたような……「脳筋」とはまた違うんだけど微妙に似通っているような……そう、「体育会系」だ。「頑張ればなんとかなる」と信じて、実際に頑張ってなんとかしてしまうタイプのゲーマーだ。
この手のゲーマーは俺と同じでモチベーションがプレイヤースキルに直結するが……さらにそれに加えて、明確な目標を作ることで更にパフォーマンスが上がる、タイムアタッカーによく見かけられるタイプだ。
とはいえ、この秋津茜というプレイヤーはメリットとデメリットの双方を持ち込んでくれやがった。メリットは単純にパーティのメンバーが増えたことだ。レベル43という、正直言ってリュカオーン戦ではほぼ役に立たない秋津茜ではあるが、先ほどのよく分からない変わり身魔法などは俺とレイ氏の二人ではどうしても生まれる綻びを補完することができる。そしてなにより、高レベルのヴォーパルバニー達を連れてきたことでこちらの戦術幅が劇的に変わる。
だがデメリットも当然ある。正直言って、俺とレイ氏はリュカオーンに勝つ気はそこまでなかったりする。いや、負けを前提に戦っているわけではないが「互いが持つ切り札をぶつけてなお倒せないならスパッと諦めよう」という暗黙の目標が設定されていた。だが秋津茜がエムル達を……リスポーンが利かないNPCを連れてきたことで「負けられない理由」が出来てしまった。
リュカオーンに勝つための(・・・・・)戦いではない、リュカオーンに負けられない(・・・・・・)戦い。あの狐っ子は増援と一緒に退路を崩壊させてここに来たのだ、ここからの予定と一緒に俺の心構えも切り替わる。

「っふぅー…………」

ウツロウミカガミの虚像を追っていたリュカオーンがこちらに再び注意を向けるあとわずかの一瞬、吐き出す吐息に弱音を載せて排出し、覚悟を決める。増えた手札は三枚、その内の一枚はよく知るものではあるが残り二つは未だブラックボックスが多い、だが断片から理解できる情報から作戦を組み立てることはできる。鉄骨むき出しの突貫工事、一夜城以下の張りぼてではあるが、フルスイングで叩きつければ立派な質量兵器だ。

「秋津茜、君はとりあえずあそこにいるレイ氏の護衛についてくれ、今レイ氏は切り札のための前準備をしていて、そのためにはあと何回かリュカオーンを殴りつけなくちゃならない。だからこそレイ氏が体勢を整えるまでエスケープでアシストを頼む」

「はいっ! お任せください!」

「あとすまん、その首でぐったりしてるウサギ……シークルゥだっけか、そいつの大まかな情報を教えてくれ」

「お侍さんです! 兎の!」

うーん、料理の原材料は何かと聞いてるのに「魚と! 野菜!」って答えられた気分です。だが「侍」ならばやはり近距離職だろう。実質前衛3、後衛1、遊撃1……だとすれば最適解は2:3で護衛か。

「よし、エムルはこっちで預かる、君はシークルゥと一緒にレイ氏の護衛……そしてアシストだ。極論リュカオーンに攻撃を当てる必要はない、レイ氏が確実に攻撃を当てるためにあの人を助けてやってくれ」

「は、はいっ! 粉骨砕身で頑張りますっ!!」

俺が飛ばしたパーティ申請に目を輝かせた秋津茜はノータイムでそれを受け入れる。グロッキーだった兎達もそれを承認し、ここにプレイヤー三人NPC二羽の五人パーティが結成される。すなわち秋津茜や、エムル達もリュカオーンに勝つかリュカオーンに負けるまでここからお家へは帰れないということだ。
リュカオーンがこちらを見据える、その視線は果たして誰に向けられたものか。鬱陶しい俺か、喰いちぎれなかったレイ氏か、獲物を横からかっさらった秋津茜か。分かるのはここからが最終ラウンドだということ、そして俺達は……いや、俺はパーティメンバーノーデスクリアをユニークモンスター「夜襲のリュカオーン」相手に通さないといけないということだ。
艱難辛苦、さながら英雄に課せられる試練のようではないか。生憎そのポジションにいるのが半裸の変態であることに申し訳なさでいっぱいに……いや待て、古代ギリシャとかそこらへんまで遡れば半裸でマッスルしてヒロイックにバイオレンスする感じの英雄とか結構いるのでは? つまり半裸でも大丈夫! ありがとう紀元前!!

「よっしゃ行こうか! 起きろエムル、大仕事だぞ! それとも兎の手より猫の手の方が有能だったか?」

「兎の手の方がふわふわしてて可愛いですわっ! って、っびゃあああああああ!!? リュカオーンですわぁぁぁぁぁぁ!!」

「ははは、しっかり頭に捕まっとけ!」

「乗り心地が硬いですわぁぁぁぁぁあクッションが欲しいですわぁぁぁあぁぁぁぁあ!!」

「残念、却下です」

これからもこの金属製の(座席)に座ることは多くなるだろうからな、気合と根性で慣れてくれ。
……………おっと、そうだったな悪い悪い。このパーティは三人と二羽じゃない、三人と三羽だったな。









退けない理由も、負けられない理由も、覚悟を決めてしまえば縛りプレイのモチベーションとなる。皮肉なことに、エムルというお荷物を抱えたことで俺のパフォーマンスはこの戦闘中においても最高値を叩き出していた。
それに荷物は荷物でも追加武装(オプションパーツ)であるエムルという魔法砲台が頭に張り付いていることで、俺はこの両腕で振るう攻撃以上のアクションを可能としていた。
リュカオーンのヘイトを集めるために割かねばならなかった火力(スキル)をエムルという火力(魔法)に任せることで、突発的なリュカオーンのヘイト変更に対してこっちを見ろと頬を引っ叩くことができる。時折分身がレイ氏の方へと向かうのを許してしまうこともあったが、秋津茜やもう一羽のヴォーパルバニー、シークルゥによって戦線の崩壊を避けられているようだ。

「本体右前脚! 跳ぶぞ!」

「ひぃぃぃ【マジックチェーン】!」

それが有効かどうかは別問題として、リュカオーンにも拘束自体は通じる事をSF-Zooが証明してくれた。エムルが放った魔力の鎖がリュカオーンの前脚へと絡みつく。
無論完全に拘束するほどの力はなく、一瞬そのの動きが止まる程度の効果しかない。だが一秒あれば気づける、動ける、対応できる。遮那王憑きの効果によりまさしく天狗の如き動きを可能とする俺の身体が跳躍によってふわりとリュカオーンの前脚に着地、リュカオーン自ら用意してくれた足場から跳び上がり両手で握る双弦月の刃がもう一つの月を漆黒の毛皮(キャンバス)に刻む。
弱者が強者へと挑むための一閃を以ってしても、血の一滴すら出やしない……流石にここまで無血であれば流石に別の可能性が見えてくる。

「……やっぱり妙だな」

年齢制限の壁があるとは言え、シャンフロでは流血表現をポリゴンで代用している。つまり血の通ったMobなりプレイヤーなりを切りつければ、傷口からは赤いポリゴン、場合により青や緑のポリゴンが飛び散るわけだ。だがリュカオーンからはそれがない、どれだけ深く斬りつけても(ポリゴン)の一欠片すら出てこない。
だから発想の切り口を変える、度重なる攻撃を受けてもノーダメージなのではなく、設定として「血が出ない」状態にあると考えるべきだ。そしてリュカオーンの特性を考えれば、自ずと答えは見えてくる。

「あれは本体じゃない、あれも分身なんだ」

リュカオーンは可視不可視はともかくとして分身を生み出すことができる、あの実体はあくまでも分身を作ることができる一種の統括機のようなもので、結論から言えばリュカオーンの本体はここにはいないと考えるべきだ。
であれば、こちらも使える手札の使い方(・・・)が変わるというもの。

「エムルっ! 撹拌してやれ!!」

「はいなっ! むむむ……【マナ・シェイカー】!!」

その魔法は、物理的破壊力という点においては絶無と断言できる。レベル90の領域に手をかけたエムルが放ったものですら、レベル1の初心者プレイヤーのHPをたったの1ドット減らすこともできないだろう。であればこの魔法の存在意義とは何か、その真価を今リュカオーンが実証してくれている。
エムルが放った円形波状のエフェクトがリュカオーンの肩に命中した瞬間、着弾部位が明らかに生物の肉で発生するとは思えない「揺らぎ」と共に一瞬ではあったが崩壊したのだ。「マナ・シェイカー」は魔力で肉体を構成するモンスターや、魔力によって肉体を「作る」モンスターに対して高い効果を発揮する。つまり……

「ガルァ!?」

「ビンゴ! 触り触られこそできるが、やっぱり分類上は「ゴースト」と同じ非物質モンスターか!!」

巨躯を誇り、プレイヤーを小虫が如く踏み潰すからこそ見えなくなっていたこの(・・)リュカオーンの正体。要するにこいつは「ポルターガイスト」なのだ。物理的影響を与えることができる、非物質的存在……分身を作り出す原理からして、信じがたいがこいつは影、もしくは闇を「物質化」することができる。言うなれば眼前のリュカオーンとは、粘土で作った狼を遠隔操作で動かしているようなものなのだ。どれだけ物理的に殴ったところでそれを操っている糸……この場合は魔力的な「力」をどうにかしなければこの(・・)リュカオーンを倒すことはできない。

(だがそれならそれで腑に落ちない……魔法職依存ならまだ分かるが、これじゃ物理職が肉壁以上の価値を持てなくなる。となると、クリア条件は魔法ルートと物理ルートで二つ存在する?)

バカ体力を削る手間があるものの、装備である程度固くできる上にスキル系統で立ち回りで有利を取れる物理職。対して体力を効率的に削ることができるが、装備の硬さと、立ち回りの不便さから一度守勢に回ったらそのまま削られかねない魔法職。
だとすればまだ望みの目はある、なにせ今の攻撃はよっぽどリュカオーンの腹に据えかねたらしい。

「ぴぃぃぃぃぃぃぃいいいいい! めっちゃこっち見てるですわあああああああああ!!」

「凄いな、俺へのヘイトを全部持ってったぞ」

「おうち帰りたいですわああああああああああ!!」
結局あのリュカオーンってなんなの
ある法則によってリュカオーンは影、闇という概念から自身の分身を生み出すことができます。生み出された分身は飛び石のように影を「渡る」ことで好きな場所に移動することができます。そのためありとあらゆるエリアに出現するわけです。多分本気を出せば海底とかの影を使って大陸越えも出来ます。
言うなれば自作のドローンです、分身に意識を載せることで本体から遠く離れた場所を知覚、干渉することができます。というかそもそも意識だけ飛ばすことも可能です、アニマリアが見た「夜そのものの視線」は分身が身動き封じられて鬱陶しいので一旦意識だけ抜け出したリュカオーン本体の視線です。

ちなみに何故リュカオーンの発生座標をSF-Zooが特定したかというと、狼の特性に詳しい兄貴プレイヤー(多分サブリーダー)の調査の結果、エリアにはそれぞれマーキングポイントが存在していることが判明し、それの状態から出現位置を割り出すことができたのです。尤も、「日が沈むまでに」「全エリアのマーキングポイントを特定&調査」「場所を特定次第全員集合」という中々に手間のかかる特定方法ですが、多分クラン黒狼辺りなら嬉々としてその情報を買い取るんじゃないですかね?
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