25~赤い眼差し~
『本気だからね。本気で誰にも渡したくない。』
強い眼差しが、私を射抜く。
『振り向かせるから。僕の事も見てよ。ミコト。』
ー紅い瞳を揺らしながら。セシル君が私に告げた真剣な想い。
ーはぁ。
「ーどうしたら…いいんだろう。」
朝食を終え、部屋に戻ったものの…私はベッドに転がり頭を抱えている。
「好きだなんて…どうして?……嫌ってたんじゃなかったの?……そんな…わけがわからないよ。」
さっきまで、ヴォルフの事でいっぱいだった頭の中。
セシル君の告白で、更に混迷をきたしてしまっている。
パニックだよ。
キャパオーバー。
処理不能。
元々良くない頭なのに…考えがうまくまとまらないよ。
『返事は…今は要らないから。…ていうか、まだ聞きたくない。』
私の唇を指で抑え…セシル君が言った。
『意識させたかっただけだから。…ヴォルフの事だけじゃなく。ちゃんと、僕の事も見て。』
真剣な目で。声で。
女の子みたいだな。弟ができたみたい。
そんな風に思っていた事を…セシル君は気付いていたんだ。
歳下だからって…こども扱いしてた…。
「男…の子…なんだよね。」
女の子みたいで、すごく綺麗な顔をしていても…男の子なんだ…。
「どんな顔をして会えばいいの?顔…合わせにくい…。」
ベッドに転がり天井を仰ぐ。異世界に呼び出され、神子と呼ばれ、魔王城へ旅をしている。
男性と接する事も、ヴォルフやセシル君のお陰で平気になってきた…そう思う。
そういえば…キスもしちゃってるんだ。
セシル君とも…ヴォルフとも…。
一人は、私を好きだと言ってくれた人…
一人は、私が気になっている……私の……好きな人…。
『なぁ。お嬢さん。もしかしてあんた。俺の事好きになってんの?』
あの時、返せなかった言葉。セシル君の告白を受けて…頭に過ぎったのは、ヴォルフの辛そうな顔。
惹かれてしまってるんだ。私…危険な狼に。
だから、尚更、セシル君の顔を見る事が…出来そうにない。
「返事をすべきだよね。でも、まだ返事は欲しくないって……本当に、どうしたらいいのか訳がわからない!」
フツフツと顔から湯気がでる。まるでヤカンだ。瞬間湯沸かし器だ。こんな状態じゃ、出掛けられそうにない。
本当は、服を買いに行く予定だったのだけれど。こんな調子じゃ無理だなー。ボフンと枕に顔を埋め呻くしかなかった。




