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「ねぇ。その格好。」
隣を歩いていたセシル君が、私に声をかけてくる。
「やっぱり…変かな…?」
気恥ずかしくて、思わず苦笑いを浮かべてしまう。ああ、こんな思いするなら、メイクも何もしなければよかったかも…リタさん。折角綺麗にしてもらったのに、本当にごめんなさい!
「別に…似合ってないと言ってない…。」
落ち込む私に、セシル君がつっけんどな声で話す。
「あんたにしては、その…綺麗…なんじゃない?髪あげてるのとか…その…悪くないと思うけど…。」
あー。これ、一生懸命慰めてくれてるんだ。口では色々きつい事言うけど。セシル君ってこういう所が優しいよね。
「ありがとう。」
にこっと笑って返すと、顔を真っ赤にして
「べっ!別にあんたの事、褒めたわけじゃないから!勘違いしないでよね!」
っと怒られた。
「わかってるよ。慰めてくれてるんだよね。優しいね。セシル君は。」
「ーっな!」
「あんた、わかってない!ほんとにぜんっっぜん、わかってない!」
「え?ちゃんとわかってるよ。勘違いしないように気をつけてるし。」
うん。勘違い女は、痛々しいものね。自分より遥かに綺麗な男の子前にして、自分可愛い!とか自分綺麗!とか思える程、腐っためんたま持ってないです。
そんな私に対して、セシル君はがっくりと肩を落として呟く。
「はー。ほんと疲れる。どーすれば伝わるの…」
ぶつぶつと不満を漏らすセシル君に、なんだか申し訳なく感じてしまう。
「なんか…ごめんね。」
「謝られても…逆にムカつく。」
「だから、ごめんって。」
「大体…その格好してるのが、ヴォルフと一緒の時っていうのが、一番ムカつく。」
いや、そーいわれましても…川に落ちたから着替えるしかなかったわけで…。
「あんたなんか、村人の服でも着てればいいのに。」
「あーそうだよね。うん。動きやすい服装の方が私も楽だしなー。神子服なんてやめて、旅の間は、それにしようかな?できれば男装の方が身軽でいいんだけど。」
「…斜め上の回答が返ってくるとか…」
ぽかんとした表情でこっちを見てくる。あれ?私また変な事言った?また呆れられてる…どう返せばよかったんだろ。首をかしげる私の後方で、
「ーっぶ!!くっくっくっ!!」
後ろからついてきていたヴォルフが、堪えきれずに吹き出した。
「お嬢さんっーほんっと最高っ!ヤバいっハマるっっ」
くつくつと手を口元にあて、笑う。
何もそこまで笑わなくても。
いやー。貴方本当に性格悪いよね。ムカムカしてくるんだけど…。
「「ムカつく。」」
セシル君と声が揃った。だよね?そう思うよね?
「いや、そこ合わせなくても…。なんか嫉妬しちゃうな。」
「なら、ミコトに絡むのやめてくれる?殺したくなるから。」
「おおっ物騒だねー。セシルは…。」
「なに、その余裕ある態度。ほんとムカつく…。その無駄に手入れされた、銀色の毛皮を剥いで、剥製にでもしてあげようか?発情狼っ…。」
「…ヤれるもんなら…ヤってみろよ…陰険色白お坊ちゃん…」
ああっ…なんだかまた不穏な空気が…もういっそ受け狙いで『ワタシノタメニアラソウノハヤメテ!』っとヒロイン呪文でも唱えてみるべき!?
そもそも、なんでこの二人はいつも喧嘩に発展するのよ!?本当に頭が痛くなる。
どうしたものかと、狼狽える私を制してルドルフさんが二人の間に入った。
「神子殿を巡って、喧嘩するのはやめないか。」
低い声で、二人を諌める。その言葉に三人共、思わず固まる。
「え!?いや、私を巡ってとか…ありえないわけで…」
「はぁっ!?何処をどうみたら、そんな事になるの!?別に僕は、ミコトの事なんて…」
「うっわ…俺とした事がついムキに…」
冷や汗が出そうになる私。
顔を真っ赤にして怒るセシル君。
片手で顔を抑え、あちゃーっと肩を落とすヴォルフ。
「む。何か間違えたか?」
ールドルフさん。止めるにしても、言葉は選んで下さい。
ーというか、私も妙な呪文を唱えなくて本当に良かった…。
と、その場の微妙な空気を肌に感じながら、心の中で粒やいた。




