エスパー(12月16日 木田 保美) ⑥
ずん、と音がした。
まただ。
しばらくして、低い悲鳴が。
そっと、窓の外に目をやる。それよりも早く、何人もの女子が窓のところに群がっている。
きゃあっと、叫び声。真っ黄色の、からまった風のように浮ついた。
しばらくして、蓮が入って来る。
いつもの、くらい顔のまま。いや、若干、目線が高いような気がする。
「栗山くん、大丈夫だった!?」
だれかがそう叫んで、駆け寄っていく。女子の人だかりができる。
男子たちは、びくりと怯えた顔をして、顔をそむけたり、うつむいている。
保美は、席についたまま、はあっとため息。
いったい、なんだというのか。
こつん、こつんと足音が、こちらに寄ってきて、目をあげると、
すぐそばに、蓮が立っていた。
「なんで、」
「え?」
しずかな、少しふるえた声で。
「……なんで、おまえには効かないんだ?」
「なにが?」
ぎょっとして、保美はくるりと教室を見回した。
みんながこちらを見ている。
一瞬、かあっと熱くなって、それから寒気が。鳥肌が全身にたつのがわかる。アキレス腱が緊張して、喉が痛くなる。吐きそうだ。
それから、気がつく。
目線だ。
蓮を中心にからみあっていた目線が、いつのまにか保美に集中している。
まん丸く見開いて、……ピントのあわない目で、こちらに、顔を。
「効かない、って……なにが、」
蓮は、ちょっと目を伏せぎみに、ねめつけるようにこちらをみて。
かすかに震えながら。
「おれの、……能力が、……」
「えぇ?」
かたん。
かたん。
かたかたん。
なにかが、ゆれる音がした。




