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VRMMO「Malice」―銀髪少女の悪意  作者: Hon_S
第三章:目覚め
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第36話:郷愁の思い

「俺の宝箱の中身も結構よかったぞ」


ギルドのメンバーに報告をする。手に入ったアイテムのうち、『サリエルの致命をもたらす半月』はこれまでの方針で行けば俺の獲得物になる。ほかのメンバーが手に入れたところで売るしかないからな。


あとは、2個目の『ドラゴン・ダークマター』と『ティアマトの鎧』か。100万ゴールドは5等分でいいだろう。


『ドラゴン・ダークマター』は、アルデバラン討伐でしか手に入らないレアアイテムだ。最上級の装備の素材にもなるし、実はイリスが作った転移スクロールの素材にもなっている。


ドジが多く目立たないが、彼女は非常に希少かつ高度なアイテムを作ることができる逸材なのだ。


『ティアマトの鎧』も神話級の防具だ。天地創造の素材となり、世界の礎となったといわれる太古の海の女神ティアマトをモデルにした装備だ。『大いなる海の加護』というスキルが付与されていて、HPの自然回復量が通常の10倍になる。


防御に優れたキャラクターが装備すれば、その辺でほっといてもモンスターの攻撃で死ぬことはなくなる。


さて、自分が手に入れた分の戦利品もあわせて全員が開けた分の宝箱の中身を集計する。かなり希少価値の高い装備もみられたが、それぞれ適性に応じて分配することができた。


『ティアマトの鎧』は前線に立つソードマスターのきる郎に。魔力を向上させる『アルデバランのイヤリング』は炎魔術師のフレイムへ。『サリエルの致命をもたらす半月』……長いので『サリエルの鎌』と途中から呼んでいたが、これは自分のものになった。


戦利品の中に神話クラスの装備はこれら3つだけだったので、神話クラス装備が分配されなかったリエとイリスには、それぞれ『ドラゴン・ダークマター』が分配された。


イリスは飛び上がって喜んでいたし、なかなかいい分配ができたと思う。昔はよくもめたもんだが、よかったよかった。


さて、分配が終わるとやはり問題となるのは……アルデバランとのあの会話だろう。

アルデバランはテンプレに沿って話すだけで、いつもはあんな意思をもったようなコミュニケーションをしたりはしない。


全員が戦利品をしまい終えて一息つくと、さっそくきる郎が俺に訪ねてくる。


「ジュン、さっきのアルデバランとの会話はなんなんだ?今まで攻略する中であんなセリフ聞いたことがなかったんだけど」


そうなるよな。


だが、正直な話、俺だってよくわからない。あんな会話をしたのは俺だって初めてだ。話の内容は、おそらく俺の中に眠るMaliceの力と、Malice達の動きについてだと推測できる。ただ、馬鹿正直にこの話をきる郎達にするわけにもいかない。


きる郎達には申し訳ないが、俺一人でダンジョンに潜ってアルデバランと会話をしてみたい。


アルデバランも何かをしっている様子だったし、何より一介のゲームコンテンツがプレイヤーと意思をもっているかのようにコミュニケーションを取るのは異常だ。Malice姉妹の長女である「アリシア」がNPCからMaliceへと昇華した時と同様のことが起きている可能性がある。


アルデバランも俺に何かを話したい様子だった。もう一度会えば、何かしらの情報が得られるかもしれない。


よし。今度は1人でダンジョン内に潜ろう。ギルドメンバーのおかげで今は74lvだ。スピードや斬撃の重さも十分だ。この『サリエルの鎌』があれば、一人でアルデバランのもとにまでたどり着くこともできるだろう。


「きる郎、皆。すまん。俺もアルデバランのあのセリフはよくわからん。だが、確認してみたいことがある。今度は俺一人でダンジョンに潜らせてくれないか」

「君はまた何かを隠しているのかい?」


きる郎の鋭い眼光と切れ味のある言葉にドキっとするが、仕方あるまい。言いたいけど、言えないんだ。お前たちを巻き込みたくない。


「すまん……。隠していないといえば嘘になる。ただ、信じてくれ。お前らを裏切るようなことだけはしない」

「まるで、情に訴える結婚詐欺師のようだね。……でも、いいよ。信じよう。君だからね」


きる郎がいつになく、厳しい。


表面には表れないが深いところで強く結ばれている『まりす主義』の連中に何かを隠して、俺が一人で何かをやっていることに疎外感や、不信感を募らせているに違いない。


何か困っているなら力になりたいと強く思ってくれている仲間に対して、何も説明せずに「信じてくれ」の一言で突き通すというのはある種、仲間への信頼の裏切りともいえるかもしれない。


だが、あとでみんなで笑いあうために、楽しくこの世界で過ごすために。今は、本当のことは言えない。


「ありがとう。きる郎。みんなもいいか?」


やれやれといった表情をするリエ。フレイムは俯いたまま、片手をあげてひらひらしている。好きにせえ、といった意味だろう。イリスはドラゴン・ダークマターを眺めるのに没頭している。もしかしたらこいつだけは仲間じゃないのかもしれない。


冗談はさておき。ギルドの連中からの承諾も得た。早速、ダンジョンに再入場するとしよう。


俺たちは、戦利品を得た部屋の隅にある、出口用の転移陣に入り込む。瞬く間のうちに、ダンジョンの入り口にまで転移した。


そして、ここまで力を取り戻させてくれたギルドメンバーに深く頭を下げ、言葉少なに早速ダンジョンに再入場する。


ダンジョンの入り口に設置された、70lv未満のキャラクターに入場制限をかけている結界を潜り抜ける。その時に改めて、レベルを取り戻したという実感を得た。


思えば、キャラクターレベルを初期化となった時にはどうしようもなく、やりきれない気持ちになったものだが、人間やればなんとかなるな。


ソロモンよ!私は帰ってきた!


そう叫びたい気分だ。




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