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VRMMO「Malice」―銀髪少女の悪意  作者: Hon_S
第三章:目覚め
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第28話:集結

白いローブを身にまとい、気だるそうに声をかけてくる彼女は、

回復職のクレリックのリエさんだ。


「ああ、見ての通りだよ」

「何が見ての通りよ。20レベの装備じゃない」


ま、当然突っ込むだろうな。


通常時なら「懐かしいわね~その装備」ぐらいな反応だろうが、

なんせ1か月近く訓練に明け暮れていたと思っている。

集中しすぎて頭がおかしくなったと疑われてすらいるかもしれない。


「ちょっと懐かしくなってさ」

「何それ意味わからん」


ぶっきらぼうな返答だが、面倒くさいことが嫌いなリエらしいやりとりだ。


「たまにやりたくなるだろ。昔の装備を付けてみるやつ」

「そうかもね」

「相変わらずそっけないな。最近はどう過ごしてた?」

「そんな変わらんよ。ジュンはコロッセウムに向けてロムってるし、ギルド戦もないし、ここ1か月はみんなのんびりしてたんじゃない?」

「そっか」

「それよりみんなジュンのこと気にしてるよ。コロッセウム決勝に向けた仕上がりはどうなのかって。この前の準決勝で勝ち上がったのが放送されて、とりあえずみんなひと安心してたけど」


そうだよな。彼らにとっても相当な関心事だ。

コロッセウムの優勝者がいるギルドともなれば、それだけ名も売れる。

分かってはいたが非常に打ち明けづらい。


「だよな。今日みんなに声をかけたのは、まさにその件について話したかったからなんだ」

「何それきになる」

「みんなが来たら話すよ」

「もったいぶるなよ~きになる~~。」


顔をしかめて唇を尖らせるリエ。

ただでさえ小柄な見た目なのにそうしているとさらに子供のようにみえる。


リエとはギルド設立時からの仲間で、腐れ縁だ。

この口をとがらせるクセもよーく知っている。


ちなみに、ギルドの名前である『まりす主義』は、リエの発案で決まった。


フレイムは、「そりゃもう『燃え盛る漢たち』やろ!もしくは『煉獄の炎 2nd』や!」とか

暑苦しく意味不明な名前を提案していたし、きる郎も好物のチョコレートから

『Choco』にしようなど、イマイチしっくりくるものがなかった。


まぁ俺も、Malice Onlineをリードするという意味を込めて、

『Shepherd(導く者)』とかどう?なんて提案したんだが、

すごく偉そうという理由で却下された。


そんな中で、「リエが『まりす主義』でよくない?」とつぶやく。

ただの思い付きだっただろうが、このメンツの緩さとMalice Onlineへの愛が

うまくかみ合った絶妙な名前だった。


満場一致でこの名前に決まったのだった。


そんな『まりす主義』は、創設時の5人のメンバーと後から入った15名の総勢20名だ。

最大50人くらいまで拡大したこともあったが、大半は定着しなかった。

創設メンバーが基本みんな自由人で、ウェットに付き合おうとしなかったからな。


その中でも、きる郎だけは世話好きだった。

20名の規模まで大きくなったのは、彼の貢献によるものだろう。

色んな奴に声をかけてスカウトしたり、初心者を一緒にダンジョンに連れて行ったりと、非常に心の暖かいやつだ。


そんな世話好きなところもあって、『まりす主義』のギルドマスターはきる郎だ。


自分が参加するわけでもないのにコロッセウムでのユウジ対策に

とことん付き合ってくれていたことからもそれが良く分かる。


そして、実戦形式で対策をしていた俺ときる郎の横で、

「だるいな~」といいながらも回復魔法をかけ続けてくれたのがリエだ。

本当に感謝している。


はやくいえよ~と口をとがらせているリエを見て昔に思いを馳せていると、

魔法使いと、剣士の格好をした男が2人やってくる。


「リエがまた口をとがらせてる」

「お~、なんや。なんかまたやったんか、ジュン」


きる郎と、フレイムだ。

これで俺も含めて4人が揃った。あと1名で全員だ。


「いやいや、なんもしてないって。ただ、話したいことがあるけど皆がそろってからにしようって伝えただけだよ」

「そんなことやろうなとは思ったわ」


豪快に笑うフレイム。魔法使いの割にはガタイが良く、

むしろ資質的には近接戦闘職だろとツッコミたくなるような見た目の男だ。


「久しぶり、ジュン」


そう声をかけてくるのは柔和な見た目をした世話好きのきる郎だ。

彼は、1か月半前に行われた第3回コロッセウムの3回戦でユウジと戦った。

これまでのコロッセウムの中でもソードマスター同士の歴史に残る名勝負であったと今でも語り継がれている。


早い段階でユウジと当たらなければ、きる郎も決勝戦まで残る力があったのだが。

組み合わせが悪かった。


「久しぶり、きる郎。フレイムと2人でどっか行ってたん?」

「そうだね。コロッセウムが終われば、ギルド戦もあるだろうから、それに向けて防具を新調しようと思ってね」

「黒龍素材か」

「そうそう。黒龍の谷に2人で行ってきたよ。2人だったから2時間はかかったけどね」

「お疲れさん」


エンドコンテンツの黒龍の谷を2人で回れるなんてこの2人ぐらいのものだろう。

通常は70レベル以上のプレイヤーが大体30人集まって2時間でクリアするものだが、

2人で2時間は通常プレイヤーからすれば化け物レベルだ。


というのも、きる郎は91レベルのソードマスターで、フレイムも90レベルのフレイムマジシャンである。

紛れもないトッププレイヤーなのだ。同じギルド員として本当に頼もしい限りだ。


そんな彼らも、リエと同じように俺の格好を訝しんだ目を向ける。


「ジュン、どうしたのその格好?」

「なんやコロッセウムの緊張で頭でもやってしもたんか」


いっつも炎のことばかり考えて脳みそが燃えカスになっているフレイムにだけは言われたくなかった。


「いやいや。たまにはこの格好もいいかなと思ってさ」

「そうなの?」


ときる郎。そんな真面目に返してくるな。


「そうなの。まぁその辺も含めて後で話すよ」

「おう。直前の仕上がりは聞きたかったんや」

「ああ、そのことも全員揃ったら話すよ。あとは、イリス待ちかな?」

「せやな」


『まりす主義』創設メンバーは5人だ。

きる郎、フレイム、リエ、俺、そして、イリスだ。


時間は少し過ぎているが、まだ来ていない。マイペースなイリスらしい。


「イリスが来るまで、もう少しまとうか」


きる郎の提案に対して、そうしよう、と返答しようとしたまさにその時、

自分の後方から、居酒屋からは聞こえるはずもない家屋を重機で取り壊したかのような轟音と、

凄まじい地響きが伝わってきたため思わず振り返った。


メインフロアにはホコリが舞い、そこで飲んでいたプレイヤーたちは

「なんだなんだ!?」、「俺の酒がー!」、「なんか落ちてきたんだが!?」など阿鼻叫喚だ。


1階のメインフロアの天井部分には穴が開いており、2階が覗けるようになっている。

状況をみるに、2階の床が抜けたのだろうか?


いや、見た目はぼろいが、ゲームの営業開始から1年しかたっていないのに、

流石にボロい作りになっているはずもない。


ホコリが分散し、影が明確になるにつれて、落下物の正体が明らかになってきた。

嫌な予感がするが、おそらく彼女だろう


「あいたたた……。ギリ間に合ったかな?」

「ううん、遅刻。あと修繕費はギルドではもたないから」

「えええ!!」


驚いたような声を出し、舞うホコリの中から姿を現したのは、いかにも研究者然とした白衣と

丸メガネには似つかない黒髪姫カットの地雷臭プンプンの女性だ。


「横暴だ!ギルドの集まりで起きた事故なんだから通勤事故だ!補償を請求する!」

「まず事故じゃないでしょ。あんたの過失による器物損壊。事故だったとしても通常の通勤方法じゃないなら補償する義理もないよ」


そう理詰めで返すのは、もったいないお化けのリエだ。

彼女はギルドの財務大臣も務めている。


「どうせ変なアイテム自作して、それで移動してきたんでしょ」

「うぅ。急がないと間に合わないと思って空間転移アイテムを作ったんだけど、慌ててY軸の指定で入力桁を間違えちゃった……」

「バカなの?」

「うう……かっこよく登場するはずだったのにぃ……」


最後のギルド創設メンバー、イリスも到着した。

見てのとおり、規格外のおっちょこちょいだ。


さて、全員が揃ったな。


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