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VRMMO「Malice」―銀髪少女の悪意  作者: Hon_S
第二章:夜の国
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第20話:乱入

「…くっ。」


幻影を斬らされたことに唇を噛むジュン。


自分の分身を最大3体まで作り出す、

ローグマスターのお家芸「シャドウ・クローン」だ。


ローグマスターが60lvに習得する。

60lv時には最大2体まで分身を作り出し、70lvには最大3体まで分身の数を増加できる。


しかし、周囲に本体や分身がいたような形跡はなかった。


「シャドウ・クローン」はどちらかというと戦闘用で、

本体から10m以上遠くに動くことはできない。


「ずっと分身で僕に接していたんですか?」

「ビンゴ。」


微かな笑みを浮かべながらジュンを見つめるレイ。


「あなた、怪しすぎたのよね。低レベル装備とはいえ、見知らぬプレイヤーが急いでギルド本拠地に向かうなんてね。」


衝突したところから、レイの策にはまっていたということか。


アイリを助けることばかりに囚われていたこともあったが、

ヒールのかかとを折られたことで大騒ぎしていた女性が

まさか闇ギルドの一員だとは思うまい。


さて、残念なことに無傷なレイだが、分身を本格的に使われてしまえば、

正直20lvが80lv以上に勝つのは不可能だ。


広範囲攻撃を習得していないジュンには、3体で同時に攻撃に対処する術はない。


だからこそ、レイが本気を出す前に片づけてしまいたかった。

先ほどのダークスラッシュの連発からのクリティカルヒット狙いは、

完全に不意を突いた攻撃だ。


もう2度とは通用しないだろう。


しかし、接していたのがシャドウ・クローンだったと

気が付かなかったなんて、相当焦っていたか。

侵入時に周囲はかなり警戒していた。


少なくとも周囲20m近くに本体らしき

怪しい影はないと思っていたが、迂闊だった。


もう……かなり勝ち筋は薄い。

どうせ勝てないなら、少し探りを入れてみるか。


「なぜアイリさんをさらったんです?」

「あなたには関係ないわ。」

「関係なくないですよ。友人ですから。」

「熱いわね。」


ジュンの言葉を馬鹿にしたような声色であざ笑うようレイ。

ジュンは、お返しに少し挑発するようにレイを煽る。


「しかし、人をさらって人身売買でもしようっていうんですか?もしくは見世物?やっぱり闇ギルドに正義はないんですね?」

「そんな薄っぺらい正義なんてとうの昔に捨ててるわよ。」

「運営に通報してもいいんですよ。」

「どうぞ、してごらんなさい。」


レイは余裕の表情だ。通常の通報だと思っているのだろう。

自分たちが守られると高をくくっている。


何が理由か知らないが、ずっと傍観を決めているヨシカワ達にも関与してもらうこととしよう。


「いいんですね?僕が言っているのは迷惑行為一般を通報する、『通常の通報』ではないですよ。」

「……。」

「アイリさんその人を攫うことについて、大丈夫なのか、と聞いているんです。」


運営がアイリに目をかけていることを少しにおわせる。

何かアイリを攫うことに特別な目的、まさかとは思うがMaliceが絡んでいるとすれば、

この言葉に反応せざるを得ないだろう。


「何を言っているの?この子が特別きれいなカラダをしているから、少し活用してあげようっていう話よ。」

「やはり闇ギルド、下衆の集まりですね。」

「なんとでも言いなさい。」


Malice関連という線はないか。さすがに運営以外にこの問題が漏れていれば大問題だ。


「しかも、アイリさんの眠り状態は、仕様外の状態です。違法な改造を行っていると運営に報告しておきます。」

「通報だの報告だの、うざったいわね。そろそろおしゃべりも終わりにしましょう?」


レイは、うんざりしたように言葉を放ち、Sランク装備『紫電』を抜く。

そして分身を”9体”に増加させた。


「9体!?」


レイの周囲を囲む3体がさらに分身を行い、

レイの瞬く間にその場は華やかも恐ろしいゲストルームと化す。


「シャドウ・クローン」の最大分身数は3体だ。

レイのユニークスキルか。


「あなた、面白いしよく頑張ったから手厚く葬ってあげるわ。」


そう言い放つと、レイの分身はジュンの周りを取り囲むように瞬時に移動する。


そして、ジュンの真後ろから分身の1体が放った紫電が

ジュンの脳天めがけて飛来、ジュンはそれを間一髪でよける。


よけたジュンを見て嬉しそうにレイが口を開く。


「やるじゃない。少し楽しめそうね。」


レイがスキル名を呟く。


「秘術 紫旋嵐<シセンラン>」


ジュンを交点として十字にクロスするように紫電が飛来する。

避けた先にいる別の分身が、紫電をジュンめがけて再投擲する。

飛来する本数とそのペースは、ジュンをいたぶるように徐々に勢いを増していく。


紫電の紫色の刀身が高速で往来するその光景は、

さながら紫色の激しい嵐のようだ。


Lv91の時の自分であれば、範囲攻撃で短刀を弾くこともできただろうが、

現在の自分で使えるスキルは「2連裂き」と「ダークスラッシュ」のみ。


ほぼ己の動きを頼りに紫電を避け、弾くしかない。


2連裂きで目の前に飛来する紫電を1本・2本と弾きながら、

背後を狙う分身にはダークスラッシュを飛ばして、投擲の動きを止める。


しかし、なんとか攻撃を食らわないようにするので精一杯で、防戦一方だ。


健闘していたが、9体のうち6体が短刀の投擲しあう段階になって

対応にも限界がやってきた。


とうとう、一本の短刀が左腕をかする。


「うっ……。」


かすっただけだが、lv20の自分は腕が吹き飛び、身動きが取れなくなる。


Maliceは、変なところでよくできたゲームで、

HPゲージの残りと連動して動きが鈍くなる。


現実世界で満身創痍の時に素早く動けないのと同じだ。


レイの攻撃を受け、HPゲージは死亡寸前のところまで減少していた。

極限状態だが、Lv80以上の攻撃をうけて

lv20が生存しているのはほぼ奇跡だ。


奇跡が起こったことに感謝しつつも

小さな子供に小石を投げつけられただけで

死亡するであろう危険な状況に追い詰められている自分を呪う。


「ま、ここまでね。」


分身か本体かわからないが、

左腕がなくなり倒れ伏す自分に、レイがゆっくりと近づいてくる。


本来であればもっとやれたのに、

という強い闘志が込めてレイをにらみつける。


「ふふ。いい目ね。……アンタ、やっぱり面白い。うちのギルドに入りなさい。」

「……え?」

「Lv20でここまでやったことを褒めてやってんのよ。闇ギルドが嫌じゃなければ、来なさいよ。」


想定外の申し出に驚きを隠せず、一瞬固まってしまった。


しかし、闇ギルドになど入るつもりはない。


ましてやアイリを拐かすようなギルドに小指ですら突っ込んでやるものか。


「それは、固くお断りします。」

「残念ね。じゃ、ここまでお疲れ様でした。言っておくけど、もう二度とここには入れないわよ。」


レイはそう言い放ち、紫電を投擲しようと右腕を左半身にひき、構えた。

まさに紫電が放たれるその瞬間、ゲストルームに1名転移してくる。


「お二方、お邪魔してすみませんな。」


この聞き覚えのある口調と声は…。


「……ヨシカワ。何しに来たのよ。」


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