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VRMMO「Malice」―銀髪少女の悪意  作者: Hon_S
第二章:夜の国
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第16話:背後

ヨシカワは頼りにならない。アイリを助けられるのは俺だけだ。


夜の国の9丁目8番地にあるNinety Eight Percentの本拠地に向かう。

幸い、現在地である馬車乗り場から走って10分程度の近距離だ。


ようこそ世界の中心へ、と記載されたバカバカしい繁華街入り口のアーチをくぐり、

あふれるほどの人々が行きかうメインストリートを駆け抜ける。


居酒屋が立ち並ぶメインストリートでは、

ジュンの焦りとは対照的に、酒に酔ってバカ騒ぎするプレイヤー、

娼婦とみられる女性プレイヤーとイチャつくプレイヤーなど

娯楽を楽しむ人々がたむろする。


人の気持ちもしらずに遊びまわりやがって。

八つ当たりでしかないが。


Ninety Eight Percentの本拠地がある9番街8番地は、

運営が実装した巨大カジノ施設がある。


目的地はカジノ施設の真後ろにある和風の館だ。


メインストリートを抜け、9番街まで到着する。

人でごった返すカジノを左に見ながら、館を目指して走る。


きらびやかに輝くカジノを見ながら走っていたからか、

目の前から接近する人物に気づかず、派手に衝突してしまった。


「ったーい!ちょっと気を付けてよ!!」

「すみません!」


急いでいるので簡単に言葉をかけて走り去る。


「おい、こら!!今日のためにかったヒールが壊れちゃったんだけど!!お前、顔と名前、覚えたからなー!」


悪いことをしてしまった。

ただ、今はそんなことを気にしている場合ではない。

とにかく急ごう。


カジノの横を駆け抜け、Ninety Eight Percentの館の付近にまで到着した。

ジュンの動きをモニタリングしているのか、ヨシカワの部下であるシバサキから


『アイリさんは、ブリーフィング時と変わらず、地下1階のゲストルームにいるようです。手筈通り、お願いします。』


とチャット連絡がくる。

シバサキは仕事ができるな。

どこかのオヤジと違って。


Ninety Eight Percentの館は、

夜の国を仕切っているだけあってかなりの大きさである。


庭には池、その中に鯉。

松や石畳と、ザ・日本庭園なつくりになっており、

館は朱塗りに黒い瓦の3階建てでいかにも妖しい雰囲気だ。


Kokoro Entertainment調査部によると、

現在館内には、6名のギルド員がいる。


70lv が2名と、60lv 3名と50lv 3名だ。


そして、ギルド3位の83lvプレイヤーだ。


90lvのギルド長のレイド88lvのプレイヤーは不在に

していることは不幸中の幸いだ。


しかし、このギルド3位には絶対に遭遇したくない。


こいつに遭遇すれば救出できる確率はぐっと落ちる。


地下1階のゲストルームへの侵入方法は、

ブリーフィング時に共有されている。

まずは、館の東側にある小門から忍び込み、

1階の台所・食堂を抜けた先にある階段を下りる。


そして、その先に真っすぐ進んだ突き当りの

金に装飾されたドアの部屋がゲストルームだ。


館の東側に存在する小門には、50レベルの警備BOTが1体いて、

台所と食堂は誰もいない。


しかし、ゲストルームの前には、60lvのプレイヤーが1名いるようだ。


この辺は全てヨシカワの部下であるシバサキが調査してくれた。

マップ・建物の間取りやプレイヤーの位置情報などを素早く把握し、

具体的な救助プランまで考えてくれている。


有能な男だ。


また、シバサキは東の小門突破用にと、

最上位催眠アイテムの「ネムレ・トワニ」を2つほど持たせてくれている。


これは、対BOTやモンスター用で、ボス以外であれば大体が

20分くらいは睡眠状態で行動不能になる。


ちなみに、Maliceではプレイヤーを強制的に眠り状態にする方法はない。


外部から強制的に眠り状態にするのは、

いろいろと危険だということでプレイヤーを

眠り状態するスキルやアイテムは実装されていない。


そのため、ゲストルーム前にいる60lvプレイヤーは、

どうしても実力行使で倒すしかないということになるが、

まぁ、そこは問題ないだろう。


さて、行くか。

と意気込んだ瞬間、背後から大声で自分を咎める声が聞こえた。

「ねえアンタ、そんなとこでこそこそなにやってんの!」


血の気が引く思いで振り返ると、

先ほどカジノ横で衝突したプレイヤーが仁王立ちしていた。


「ちょ、ちょ、ちょ、静かにしてもらえます?」


そのプレイヤーの手を引き、物陰に隠れる。


「なによ。」

「本当にびっくりした……。あの、先ほどぶつかったことは謝ります。ですが、今ちょっと非常に忙しくて、手が離せなくて。またご連絡するので、いったん僕からの連絡を待ってくれませんか。」

「勝手な言い分ね。私だって重要な会合があって、そこに参加するためにすっごいキメてたのよ。なのにヒール折れちゃって。もう行く気なくしちゃったわよ。」

「そ、それはすみません。」

「土下座の一つでもさせないと気が収まらないと思って。しかも、20レベルそこらでカジノの裏に向かって走っていって怪しいし、とりあえずとっ捕まえてやろうと思ったのよ。」


思わぬ邪魔が入ってしまった……。

事情を説明するわけにもいかないし。


弱った……。


ええい、ままよ。


「えっと……実は友人がカジノの運営しているギルドの館に連れていかれたって聞いて、助けに来たんです!」

「はぁ?」

「だから、手が離せないんです。ほっといてください。」

「呆れた。アンタ大馬鹿ね。」


よ、よし。呆れて帰ってくれ。


「アンタだけじゃムリよ。私もつれていきなさい。面白そうだから。」


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