第15話:不安
というわけで、ヨシカワとその部下であるシバサキから
『Ninety Eight Percent』の本拠地の場所と
構成メンバー及び救助プランについて簡単なブリーフィングを貰う。
そして、アイリの元へと急行することとなった。
本拠地は、夜の国の南側、9番街の8丁目……
そしてギルドの構成メンバーも98名。
謎の98へのこだわり様である。
さすがに98レベルのプレイヤーはいないようだが、
トップはレベル91のナイトロード『レイド』で、性別は女性のようだ。
時代遅れな考え方とはわかっちゃいるが、
女性で夜の国のトップ……勇ましいことだ。
彼女に続いて、88レベル、83レベルのプレイヤー1名ずつ。
その他は70レベル代が10名、60レベル代が20名、
その他は50レベル代以下といったところか。
中々強力な布陣だ。
特に、80レベル以上のプレイヤーがいるのはかなり珍しい。
Malice Onlineは現在、日本でのみサービスしていて、
毎日平均100万をこえるアクティブユーザーがいると
いわれているが、そのうち80レベルを超えているプレイヤーは数百名だ。
90レベルともなると、過去の自分も含め、数えられる程度しかいない。
80レベルのプレイヤーと、70レベルのプレイヤーでは、
通常全く歯が立たない。
格闘技で言えば、2階級は下になる。
80と60ともいったら大人と子供が戦うようなものだ。
この差には、50レベルに1度目の取得タイミングがあり、
その後レベル10毎に獲得できる『ユニークスキル』の存在がある。
Maliceには通常得られる共通スキルの他に、
各人特有で取得できる特殊なスキルが存在する。
50レベルに到達すると、そのプレイヤーのプレイ志向に合わせて
3つのスキルをAIが自動作成する。
その中から1つだけ好きなものを選ぶという仕組みだ。
それぞれのプレイヤーの独自性を増すことができるので、非常にウケがいい。
そして、スキルはその1つ1つが非常に強力なため、
所持しているかどうかだけで戦いにおける有利の度合いが変わってくる。
ちなみにそのスキルは、一定の条件を満たせば、
既に取得したものから伝授することも可能である。
強力なスキルを取得したものはそれを
伝授することによってゲーム内でかなりの富を得ている。
ただ、伝授すれば自分だけのユニークさはなくなってしまうので、
他者との差別化ができなくなってしまうことがデメリットだが。
ちなみに大鎌使い『ジュン』は、80レベルになった時に大鎌を数千本召喚し、
それを自在に操ることで球状に超広範囲攻撃を行う「プロムナード」を編み出した。
コロッセウムの準決勝で使用したのはこの技だ。
コロッセウム会場の全範囲をカバーできる技のため、
この攻撃を避けられるプレイヤーはいなかった。
加えて、どの鎌もクリティカルヒットを狙うため、
並みのプレイヤーでは近づくことすらできない。
ギルド戦でも、白兵戦では無双してしまうので、
常に同レベル帯のプレイヤーにマークされて白兵戦には参加できなかった。
90レベルにももう一つ技を取得していた。
対ユウジ用に秘匿にし続けてきたが、
結局披露するタミングはこなかったが……。
『プロムナード』以上に強力な技だったので、今でも非常に悔やまれる。
というわけで、こうしたユニークスキルを取得したプレイヤーは中々に厄介だ。
そうしたプレイヤーがそこそこ控えている「Ninety Eight Pecernt」は
かなり強力なギルドと言っていい。
ただ、50~60代のレベルのプレイヤーであれば今の状況でも十分戦える。
これは、この辺りで手に入るユニークスキルは、特有といっても、
自分にとってそこまで脅威になるものではないからだ。
50レベルで手に入るのは、ある能力の強化であることが多い。
沢山移動した人は、移動速度が2倍になるとか、
打撃ばかり使ってきたプレイヤーは打撃力2倍とか。
製作をしてきたプレイヤーは制作速度が2倍になるとか、そんな程度だ。
60レベルも似たようなもので、その倍率が4倍とかになるようなものだ。
まぁ、この辺りから超高速な動きで相手を翻弄したり、
回避率を極限まで高めて攻撃の動線がみえるようになるとか、
トガったプレイをできるようになるが、まだまだ甘い。
70レベル以上は、真の意味でユニークなスキルが使えるようになる。
そのうちの一つが「テレポート」や「縮地」だ。
これを取得したプレイヤーは、攻撃・防御共に
異次元の動きができるようになる。
そのほかにも、一定時間の絶対物理防御や、絶対魔法防御。
壊れスキルのオンパレードだ。
だからこそコロッセウムでは、勝ち上がるために相手プレイヤーの
研究と対策が大切になるわけで、勝者は
全プレイヤーから心の底から尊敬される。
そんな中で決勝まで勝ち上がった自分であれば、
まだまだ通常プレイヤーの範囲を出ない50~60レベルの
プレイヤーであれば、大した問題はない。
「クリティカルヒット」で一撃だろう。
だが、70~80、特に90レベルになるとどんなスキルを
使ってくるか、わかったもんじゃない。
だからこそ、そのあたりのプレイヤーとの対峙については、
自分が20レベル程度ではかなり不安感が残る。
クリティカルヒットだけでどこまで戦えるか。
この辺りの事情は、ヨシカワも理解しているはずなのだが。
自分がダメだった時のためになにかのリカバリー策を
用意しておくように今一度チャットで念を押しておこう。
「『ヨシカワさん、自分がダメだった時のリカバリー策、お願いしますよ。』っと……」
ヨシカワからすぐに『ジュンさんのプレイヤースキルを信用していますよ!』との返事がかえってくる。
……もう、知らん。
Maliceどころか、Kokoro Entertainmentの危機だぞ。
このオヤジ、何考えてんだ。




