8話 緊急事態を華麗に解決ですわ!
「ただいま戻りました」
「戻りましたー」
「あら、早かったのねえ」
アナストリアが広間でくつろいでいる。
伯爵の姿は見当たらず、アークは母に問いかける。
「急ぎ父上にお伝えしたいことがあります。どちらにいらっしゃいますか?」
「お客様の対応中よ」
お客様…誰だろう?
「そうですか…困ったな」
「何かあったの?」
「実は…」
アナストリアの問いに答えるアーク。
うんうんと、うなづきながらアークの話に耳を傾けるアナストリア。
「行きましょう」
「え!?しかし、お客様様がいらしてるのでは?」
「大丈夫よ。おそらく解決するから」
そう言って、足早にしかし優雅に客室に足を進めるアナストリア。
アーク達も急ぎ追いかける。
なにがあるのかしら…。
そんな考えが浮かびながら、客室前についたアナストリア達。
入り口の父の護衛に会釈をし、アナストリアが護衛になにやら告げる。
護衛は、少しお待ちくださいと告げ、部屋の中へと入っていった。
程なくして、扉が開く。
どうぞお進みくださいと、護衛にうながされ、部屋に入っていく。
「二人ともおかえり。アーク、急ぎ知らせたい事があるって?」
「はい、えっとお話して大丈夫ですか。お客様がいらしてると聞いたのですが…」
緑の帽子と制服だろうか?服装に身を包んだ大人しそうな男性がぺこりとお辞儀をする。
「お、お客様なんてとんでもない。ご迷惑をおかけしてしまいまして…」
みるからに落ち込んで恐縮しきりの男性。
「申し遅れました。私中央にて錬金術師をしております。アリアードと申します」
…錬金術師きたーー!
思わず反応してしまうが、ぐっと堪える。がんばれ私!
「実は薬を急ぎ作らなくてはならないんですが、移動の際に落としてしまいまして…伯爵様の領地内の商店を巡って買い占めをしてしまいまして…」
本当にご迷惑をおかけしまして…。
そう言って再び項垂れるアリアード。
「そういう理由だったそうだよ」
伯爵が話始める。
どうやら買い占めをしていたのを、不審に思った商人が、伯爵邸に伝えにきてくれたらしい。
…大丈夫そうでよかった。ほっと一息。
よし、これなら…
「それで、アリアードさま、必要なものは揃ったのですか?」
ルティが無邪気な感じで問いかける。
少し驚いた顔をするアリアード。
「ああ、ええ、はい、いえ…」
「ルクレティア」
あ、これはいけないやつか…
「申し訳ございません、アリアード様好奇心に負けました」
そう言って、深くお辞儀をするルティ。
アリアードは慌てて制止をする。
「大丈夫ですよ。ルクレティア様は錬金術にご興味がおありなのですか?」
「はい!!」
…錬金術だけじゃなくて素材全般だけど!
キラキラした目でアリアードを見つめるルティ。
くすりと笑い、少し肩の力が抜けたように見える。
「まだ不足している品があるんですよ」
全部の材料をお伝えすることは出来ないんですが…と申し訳なさそうにするアリアード。
「カモミールの茎を乾燥させたものが、大量に必要なんです」
「カモミールなら、庭にあるが…」
伯爵が提案をする。
首を振るアリアード。
「生ではいけないのです」
「では魔法で乾燥させては?」
アークが問いかける。
困った顔をするアリアード。
「あまり詳しくは言えないのですが…自然乾燥の品が必要なのです」
え、カモミールの茎?自然乾燥必須?
「ありますわよ?」
「え?」
「カモミールの茎の自然乾燥なら、保管庫にございますわよ」
「ええええ」
慌て出すアリアード。
アナトリアが落ち着くようにお茶を進める。
伯爵がルティに聞く。
「本当にあるのかい?」
「はい、先日ポプリ用にゼンさんにカモミールを持ってきてもらった時に、選り分けて乾燥をしました」
保管庫の在庫表にも書いてもらってますわと、告げると、伯爵は使用人を呼び、急ぎ確認して持ってきてくれと伝える。
「そんなことまでしていたのね」
ふふっとルティに笑いかけるアナトリア。
「はい」
素材は無駄に出来ないからね!
にこにこ笑顔で返事をするルティ。
そうして話していると、使用人が束になったカモミールの茎を持ってきた。
伯爵に書類と共に渡す。
「なるほど、確かに書いてあるな。アリアード殿こちらは使えるかい?」
「拝見します」
先ほどとは違う鋭い雰囲気を纏い、カモミールを検分してゆくアリアード。
これは…と思わず呟いているのが聞こえる。
「はい、こちらは十分使えます。十分どころか、最高の品物です」
おーよかったあー
ルティは思わず笑顔になった。
アリアードはルティを見据え、深くお辞儀をする。
「ルクレティア様ありがとうございます」
「いえ、お役に立ててなによりですわ」
素材は集めるだけではなく、使われてこそだからねー!よかったよかった。
うんうんと1人うなづくルティ。
伯爵がアリアードに提案する。
「急ぎ作らなければいけないんだね?よろしければ、うちの懇意にしてる錬金術師の工房を使わせてもらえないか頼んでみよう」
「それは大変助かります!ぜひお願いします!」
バタバタと挨拶を交わし、謎の買い占め犯は伯爵と連れ立って錬金術師の工房へ向かったのだった。
「良かったな」
「そうだねー」
「ふふ、ルティ。お手柄ね」
残った3人は仲良くお茶を楽しんだのであった。
「しかし…」
「はい?なんですかお兄様?」
「…いや、いい、なんでもないよ」
ふんわり優しい笑みをルティに向けるアークであった。
…い、イケメーーンン。
そうしてアークとの初めてのお出かけは、幕を閉じたのであった。




