6話 欲しいもの?自分で手に入れますわ
今日も一通りのスケジュールをこなし、メアリが入れてくれたカモミールティーを飲んだ後。
「よーし作るぞー!」
エイエイオー。のポーズをとると、ティーカップを片付けてくれているミアナが、にっこりとルティを見る。
すーっと手を下ろして、コホンと咳払いを一つ。
机の上には、庭に咲いていたカモミール、布のはぎれ、リボン、綺麗な石のカケラ、針と糸が並んでいた。
もちろん使用許可はもらってある。宝石のカケラも渡してくれたが、色がイメージと違ったので、今回は使用しない。色も合わせ大事だ。
「さー!ポプリ作りやるわよー!」
とりあえず今日は4個が目標!最低でも2個は作りたい!
ーーーちくちくちくちく。
部屋の中には、ひたすら針で布を縫う音が響いていた。
「出来た!」
そう言って、出来上がったのは小さな袋。
袋の中に、カモミールで作ったポプリをいれ、リボンを丁寧に結び、封をする。
リボンの端には、リボンと色を合わせてある綺麗な石をくくりつけてある。アクセントだ。
なかなかいいのでは?とりあえず2個出来た!
よし、まだ時間あるね。どんどん作っていくぞー!
ミアナが時々部屋を換気したり、ベットを整えたり、カモミールティーを入れてくれているのを横目でみながら、どんどん作業を進めていくルティ。
そしてかなりの時間が経過した頃ーー
「お嬢様、そろそろお夕食の時間です。…お嬢様?…ルクレティアお嬢様!」
がばっと机から顔をあげて、ミアナを見る。
ふうっとため息をつくミリア。
「お夕食のお時間です」
「え?もう?!」
窓の外を見ると、確かに空が暗くなっていた。
どれだけ集中していたのだろう。
手元には出来上がった5つのサシェ。
予定より多めに出来た!良かったー!
材料の残り分をメモし、片付けをして、サシェを用意していたカゴに入れていく。
もう少し作れそうね、明日またやろうっと。
明日の予定に胸を弾ませながら、ミアナにサシェが入ったカゴを持ってもらい、食堂へ移動するルティ。
到着するとすでに父と母が揃って座っていた。
「お待たせして申し訳ありません」
使用人が引いてくれた椅子に座る。
ルノーク・ガルディア伯爵…お父様が頷く。
「何か熱心に作っていたとか。まずは食事にしようか」
カチャカチャ。食器を動かす音と、配膳の音だけが食堂に響く。
黙って食事するんだよなぁ。美味しいんだけど、集中すると、食事の薄さがより際立っちゃうんだよなあ…。
食事が終わり、食後の飲み物をそれぞれ出された時、伯爵が、ルティに話かけてきた。
「それで、今日は何をしていたんだい?午後はずっと部屋にこもって、何かをしていたそうだが…」
「サシェを作っていたんです」
ミアナからカゴをうけとり、机の上に一つのせる。
「あら、自分で作ったのね」
「はい、少し時間がかかってしまって、夢中になってしまいました」
見せてもらいたいわと言われたので、ミアナに二人にそれぞれ一つずつ渡してもらう。
「ほのかにいい香りがするね」
「これはカモミールかしら?」
「はい、庭師のゼンに採取してもらって、加工したものです」
庭を探索した後、ゼンが約束通り花を保管庫に運んで置いてくれたんだよねー。
「この袋や、リボンについている石もあなたが?」
アナストリアは、大変興味を持ったのか、矢継ぎ早にルティに聞く。
「はい、保管庫にあるものを選んで少しいただきました。許可をいただき、ありがとうございます」
さすが伯爵家にあるもの、手触りだけでもわかる、一級品ばかりだったからね。煩雑におかれてたけどっ。
アナストリアが興味深そうにいろんな角度からサシェを眺めていく。
「この石を選んだのはなぜ?」
「アクセントに」
リボンだけでもいいだけど、なんか欲しかったのよねー。苦戦したけど。
なるほど…。そう呟いてなにやら、考え込むアナストリア。伯爵が、続けて話す。
「これは誰かにあげるのかい?」
「はい、今日は5つしか出来ていないので、まずは、お父様とお母様に一つずつ」
「あとは、ミアナに一つ」
後ろにいるミアナを見やる。
少し赤くなりながらにこりと笑ってくれる
ミアナ。
あとの二つはどうしようかな。
お兄様いるけど魔法学園にいるらしいから、まだ会ってないのよねー。
「ならば、後の二つは、アークと、婚約者のディルト様の分か」
アナストリアが、はっとして。
「そうですね、アークもそろそろ夏休み期間に入るので、少しの間こちらに帰ってくるわよ」
なんと、お兄様との初邂逅ね。
どんな人なんだろう…ん?てか婚約者?
「あの…ディルト様って…」
「ああ、フロイト伯爵の嫡子のディルト様だよ。以前にお会いしたことがあるだろう?」
覚えてないかい?とお父様が聞いてくる。
えーとルクレティアの記憶を…んーあんまり…
手紙とかもやりとりした記憶が…
「申し訳ありません…」
しょんぼりしてうなだれる。
チラッとミアナを見ると優しい目で見つめてくる。あれ?
「まあ、アークも帰ってくるし、ディルト様も遊びにきていただいて、その時にお渡しすれば良いだろう」
「少し縫い方などあらいところはあるけれど、素敵なものね。ありがとう」
「うん、そうだな、…縫い目ガタガタだが…嬉しいよ。ありがとう」
お母様が咳払いをして、お父様を睨む。
お父様聞こえてます…そうなのよね。頑張って作ったんだけど、どうやらルティ器用な方じゃないらしくて、むしろ不器用…でも心はこもってるし、丁寧に作ったから!
お父様は失言により、お母様にドナドナされて行ったのは気にしない。
今日は集中したから疲れたわ。
お風呂に入り、ベットに潜り込むとすぐに眠りについたルティであった。
その日、深夜の作業場にて声がした。
「なるほど、確かにこの組み合わせ、いいわね」
そう言って、数日間作業場に篭り切りになる伯爵夫人がいたとか、いないとか。




