第3話 夢の保管庫を探検ですわ
夢のような時間を過ごした翌日。
魔法具について、色々聞くことが出来た。
「それでは、本日は、8代王の治世について、学んでいきましょう」
ルティの歴史の先生の、ヴァディス・ガロガン。
人の良さそうなおじいちゃんだ。
ルクレティアの記憶の中にも、怒った姿が見てとれない。
でもなんか凄みを感じる時があるのよね…
全く知らない世界の、国の歴史…あまり興味ないなあと思いながらも、ふんふんと聞いていると、耳に飛び込んできたのが。
「…また、8代目王の王妃は、魔法具の作成技術を確率したことでも有名です」
…ん?
「魔法具!?」
ガタンと、勢いよく思わず立ち上がる。
「おやおや、ルクレティア様、お行儀がよろしくないですよ」
にこにこしながら、たしなめる。
瞳の奥は、笑っていない。
椅子に座り直し。
「…申し訳ありません」
「言葉遣いのお勉強は、捗ってるようですね」
怒らないんじゃなくて、わかりづらく怒っているだけな人だった。
まだ実感がわかないが、伯爵令嬢の専属の先生が、ただの人の良いおじいちゃんのわけがなかった。
しょんぼりと項垂れていると、コホンと咳払いをするおじいちゃんーーヴァディス先生。
「ルクレティア様は、魔法具に興味があるのですな。さすが伯爵と奥様のお子ですなあ」
嬉しそうに微笑むおじいちゃん先生。
では、少し魔法具についてお話ししましょうか、との言葉。
居住まいを正して、熱心に聞き、質問をしていると、あっという間に勉強時間が過ぎてしまった。
有意義な時間はあっという間に過ぎてしまう。
どうやら聞いた話をまとめると、
・魔法具は、8代王の王妃が作り上げたもの
・魔法具は、魔法に長けたものがつくれる
・魔法具の核となる部分は宝石
・宝石が大きくなればなるほど扱いが難しくなるが、それだけ強力になる
・貴族の娘が魔法具の作成をするのは、嗜みの一つ
・小さな宝石のカケラを貴族が買い取り、魔法具にして販売するというのは大事な仕事
・魔法具作成のための場所や、保管庫が、貴族の館には備わっていることが多い
「お母様が魔法具作成に長けた方だなんて!」
アナスタシアは、その能力を活かし、伯爵夫人でありながら、度々魔法具を作成し、国に役立てているらしい。
そうなるとーー
「保管庫!保管庫があるはず!!」
全力で保管庫を見つけなければ!
ときめきが私を待っている!!
「ルクレティアお嬢様、お食事の時間でございます」
…とりあえずご飯を済ませてから。
無事、少し薄味の昼食を終えて、食後のカモミールティーを入れてくれている、ミアナに聞いてみる。
「お母様の魔法具の、作業場や保管庫って見られるかしら?」
全力の笑顔で、こくんと小首をかしげる仕草をしてみる。子どもの可愛らしさを存分に使ってみた。
「お伺いしてみますね」
ミアナはそう言って、入れてくれたカモミールティーを机に置き、部屋を出て行った。
あああ早く!早く!見たい!触りたい!かぎたーい!
程なくして、作業場と保管庫を見られることになった。胸の高鳴りが押さえきれないルティが、前世よりも短い足で道を急ぐ。
「夢かしら」
作業場には、机の上にケースに入った宝石のカケラや、作業に使う道具だろうか?
きちんと並べられて置かれていた。
作業が完了したのか、キラキラとした宝石がついた、指輪や、ネックレス、腕輪などたくさんのアクセサリーが置いてあった。
「これが魔法具?」
「はい、左様でございます」
魔法具の管理、保管を任されている使用人のヴィルが答える。
「保管庫は隣にございます。宝石以外の品は、さらにその奥です」
ーー宝石以外?
保管庫は、夢の世界でした。
棚に種類別に並べてある、数々の素材。
宝石はいうに及ばす、羽、木、石、糸、布、草、花…ありとあらゆるものがそこには並んでいた。
ふ、と目頭が熱くなり、一筋の涙が流れた。
「お嬢様!?大丈夫ですか?」
「大丈夫、ちょっとほこりが入っただけ」
慌ててそう誤魔化すが、よく見ると、宝石の棚は整理が行き届いているが、そのほかの棚は少し雑な印象を受ける。
ルティは、奥の棚の部屋にスタスタと入っていった。
これ、は。
確かに、一見整理はされている。
しかし、宝石と比べるとあまりにも、それらは煩雑すぎた。
羽は一纏めにして容器に入れられ、布はぐるぐると1つ1つ纏めてられているが、よくよく見れば、素材が違うものがまとめて束ねられているものもある。
草花は、色別で分けられているが、あきらかに違う種類のものが混ざってしまっている。
「なんって、なんってこと」
体がブルブル震えている。
「お嬢様!?本当に大丈夫ですか?!」
お部屋に戻りましょうと、ミアナが促そうとしたその時、
「整理!整理しなおします!!!」
声の限り叫んだ、ルティなのであった。




