19話 これが、素材の力ですわ!
パタパタパタと、はたきの音が響いていた。
ルティは巧みにはたきを扱い、棚という棚全てはたき終えた。
「よーし、埃はらいはこれでOK、次は水拭きね!」
ルティは、先生に頼まれた・・・もとい片付け志願した部屋を、まずは全力で掃除をしていた。
素材を1つの机に全て集め、空いた棚を、1つ1つ丁寧に拭いてゆく。
今ルティを見るものは、誰も伯爵令嬢とは思わないだろう。まるで熟練のメイドかと思わせるような俊敏な動きで、部屋を磨きあげていった。
「さて、部屋はこれでいいわね!」
さらに部屋中の乾拭きも終えたルティ。
外から入り込む光で、部屋が光り輝いているかのように見えた。
「さーて、いよいよ。素材の仕分けからしましょうか~」
るるるーと、歌い出しながら、机の上に集めた素材を手に取り、確認を始める。
「よし、まずはこれからね!んー、色変わってしまってるじゃない!全くもう!」
素材をこんな風に扱うなんて!全く、もしどこかであったら、正しい扱い方を叩きこんであげるわ・・・!
怒りが湧き上がりながらも、1つ1つ丁寧に確認して行くルティ。
「んー、やっぱり保管方法が悪くて・・・ほとんど使える状態ではなくなってる・・・。お前たちごめんなさいね」
萎れてしまった花、乾燥しすぎてしまった実など、使えるものと使えないものの選別を続けていくルティ。
時間を戻せる魔法とか、萎れた花を復活出来る魔法とか、あればいいのだけどね。
そんなことを考えるルティ。
「まあ、あっても私には使えないだろうけど。魔力、全然増えてないしなあ」
以前測定した時のことが蘇る。
「次、ルクレティア・ガルディア、こちらへ」
「はい」
やり方は、昔やったのと同じだろうと、目の前の水晶玉に手をかかげ、魔力を流し込むルティ。
「はい、魔力レベルは・・・4、いや5・・・んー5よりの4かな」
「4ですか・・・」
「もう少しで5だからね、まだ1年生でしょう?これから伸びる子もいるからね」
諦めないでと、慰められ、魔力測定を終えたのであった。
「お兄様は、あんなに魔力に溢れてるのになあ」
目の前の素材をじっと見る。
「まあ、魔力そこそこでも、出来ることがたくさんあるからね」
そう1人つぶやいて、にこにこ笑顔で素材の仕分けを続けるルティであった。
「いや、そんなに一度には・・・」
「素材にも限りがありますし・・・」
「えー!なんでよー!」
「細工師の申し子なんでしょー?」
そうよそうよ。周りの学生も囃し立てる。
ソフィアとミトは、廊下で1学年上とみられる学生数人に取り囲まれていた。
「素材は、ルティが昔から自分で集めたのを、提供してくれたのが大半なんです」
「そうです。ソフィアだって、やることがたくさんあるんです」
噂を聞いた生徒が、ソフィア達に自分達にも作れと言ってきたのである。
「何よ!サルントールさんには3つも作ったって聞いたわよ!」
「なら、私たちにも1つずつ作るなんてわけないじゃない」
ねーと、生徒達が意地の悪い笑みを浮かべながらこちらを見る。
ミトとソフィアはお互い目配せをし、どうやって切り抜けようか考える。
そこにーーー
「ソフィア、ミト。なにをなさっていらっしゃるの?」
「「マリアンヌ様・・・」」
長い巻き毛をたなびかせながら、マリアンヌが現れた。
マリアンヌは、取り囲んでいた上級生達に挨拶をし、ソフィアとミトの前にやってきた。
「このような廊下で何をなさっているの?ああ、上級生の皆様に、ご挨拶なさっていたのね?みなさんのお邪魔になるから、そろそろまいりましょう」
それでは皆様、ご機嫌よう。
完璧な礼を周りの上級生に披露し、有無をいわさずソフィアとミトを、その場から連れ出したのだった。
「マリアンヌ様、あの」
「ありがとうございました」
「いえ、困ったことがあったらいつでも声をかけて?」
それだけ言い残し、颯爽と去っていくマリアンヌ。
ソフィアとミトは、慌てて礼をして見送るのであった。
か、かっこいい~!!
ソフィアとミトを取り囲んでいた学生達は、3人を見送った後も、廊下に佇んでいた。
「何よあれ」
「公爵令嬢を味方につけるなんて!」
「ま、まあこれに懲りてしばらく大人しくするんじゃない?」
商人とたかが男爵令嬢なのに生意気なのよ。
ほんと、ほんと。
口々に聞いた人が眉を顰めることを、廊下で話し続けていた。
「ねえ、待って、何・・・あれ・・・」
日が落ちかけ、辺りが薄暗くなりかけた時、
廊下の奥に、角を生やした羽を持つ、何かが現れた。
「「「「「い、いやああああ」」」」
学生達は叫び出し、その場から逃げ出した。
「え?な、なに?」
直後、暗かった廊下に、灯りがついた。
そこには、大量の素材を抱えたルティが立っていた。
手には黒い羽や、牙。
抱えきれなかったのか、背中には、角のようなもの、少し長い棒状の木を背負っていた。
「どうしたんだろう・・・」
こうして無事、夜になると、構内を歩き回る魔物の噂が増えたのであった。




