12話 お友達が困っていてよ
午前の授業を終え、食堂のお昼ご飯に舌鼓を打っていた時のこと。
「見つかったの?」
「いいえ。本当に・・・どうしよう」
そんな声が聞こえてきたルティ。
何かあったのかしら・・・
「お嬢様、次の授業のお支度を」
「あ、そうね。準備しなきゃ」
次の授業は、調薬基礎なので、器具を事前に用意しておく必要がある。
自分でするのか?と思うだろう。
『調薬は、準備するところから始まる』
担当のスタフ先生の譲れない部分らしい
ちなみに片付けも自分達で行う。
貴族の子達はなれいことに悪戦苦闘している。
平民や商人の子達が手伝って協力している。
「それで仲良くなっている子達もいるのよね~」
話すクラスメイトは何人かいるが、お昼を一緒にしたり、放課後を過ごす友達はまだこれからなルティであった。
「さて、ちゃちゃっと終わらせますか!」
授業も無事に終わり、片付けを始めたルティ。
今日は使った器具が多かったので、流しが混み合っている。
「変わりになりそうなもの、見つかった?」
「ううん。もう時間が・・・」
同じように並んでいるクラスメイトから深刻そうな声が聞こえてきた。
先ほど食堂で聞こえてきたのと同じ声だった。
「あ、開いたみたい。とりあえず片付けて、誰か持ってないか聞いてみましょうよ」
「ありがとう。そうね。お祖母様のためだもの頑張るわ」
ルティも二人の横の流しが空いたので、隣に並んで器具を洗っていく。
ごしごし、ざー、キュッキュッ
無言で器具を洗う音が響いていた。
終わったわー。今日は沢山あったわねえ。
ちらりと隣を見ると、まだまだたくさんの器材が残っている二人。
「手伝いますね」
そう言って洗い始めたルティ。
「ありがとう」
「助かるわー。そうだ、ねえ、ガルディアさんにも聞いてみれば?」
「何か探しているの?」
「そうなのよー!この子のお祖母様のお誕生日が、そろそろなんだけどね」
「あ、あの、お祖母様への贈り物で膝掛けを作っているの。1つ材料が見つからなくて・・・」
「手作りなんてとっても素敵ね!探しているのはどんなものなの?」
「それが・・・お祖母様の誕生花なんだけど・・・」
「誕生花・・・花屋さんでは手に入らなかった品なの?かなり珍しいの?」
「そうなの。花ではあるんだけど、"宝石花"といわれている、珍しい種類らしくて・・・」
「え?"宝石花"!?」
思わず大声を出してしまうルティ。
「ありがとう!本当にありがとう!」
素材採集の授業で手に入れた"宝石花"を、クラスメイトーーソフィア・ダルガック男爵令嬢に渡したルティ。
ソフィアは、ルティの両手を掴み、泣きながらお礼を言う。
ルティは少し恥ずかしそうに顔を赤めた。
「いいえ。足りなかったら言って?採集してくるから」
「ガルディアさんて、ちょっと変わってるけど、本当にいい人ねー!」
そう言って溌剌と笑う、もう一人のクラスメイトーー商人の娘のミト・クラウニー。
「え、あ、ありがとう?」
「ふふふ。ミト、変わってるなんて酷いわ。とても魅力的な子よ」
「そうね。クラスメイトの為に、貴重な素材を提供してくれるなんて」
「誰かが使ってこその素材だもの。ダルガックさんが今必要としているのなら渡すのは当然よ?それにまた採集に行けばいいし」
そう二人に告げたルティ。
ソフィアはまた声をあげて泣き、ミトは笑いを大きくしたのであった。
ソフィアが針と糸を動かすたびに、膝掛けは輝きを増していくようであった。
ひとしきり泣き笑いが終わり、ソフィアはルティに貰った宝石花を使用して、お祖母様への膝掛けを仕上げようとしていた。
「素晴らしいわ・・・」
「ありがとう、でもそんなことないわ普通よ」
「ほらほら、やっぱ貴方の腕はすごいのよ?そろそろ認めなさいな」
楽しくおしゃべりをしながら、絶えずソフィアの手は動いていた。
その動きは、流れるようなものだった。一つ一つ丁寧に、宝石花がつけられてゆく。
「出来たわ・・・!」
「良かったわね!ソフィア」
役に立って良かった。
それにしてもすごいなあ。
・・・ちょっとうらやましい。
後日、ソフィアは無事祖母へ贈り物を届けられたと昼食の席で話始めた。
「とても喜んでくださったわ」
「良かったわね」
「ソフィアの想いが沢山詰まっていたものね」
あれからルティは、ソフィアとミトと授業で一緒になれば同じ班などになったり、昼食を共にしたり、放課後一緒に過ごすことがなんとなく増えていた。
「ルティにも、お祖母様からお手紙を預かっているの」
そう言って昼食後に差し出された封筒。
「この便箋素敵・・・。おしゃれな方なのね」
その夜ルティは、寮部屋で一人手紙を読もうとしていた。
自分の素材が役に立ち、友人も出来、丁寧なお礼の手紙まで頂き、すこし舞い上がっているルティであった。




