国の名は 1
俺の城の完成を機に、そのすぐ横をちょっと掘り返して平らにしてから、
神様島の家をついに移動させた。
これにより、俺の家族全員、ガイナ村へと引っ越す事と相成った。
そして、デリターニャにあった孤児院と、
俺達が占拠していた建物なんかも一緒に、まとめてここに並べたった。
孤児院の子らが主に働き手だった菓子とパンの工場は、今後シャダ商会の従業員が引き継ぐ。
元々、子供らの職業訓練の一環として運営していた菓子工場だが…
クッキーやクラッカーの様なモノの需要は実は相当に大きかったそうで、
今後結構デカい売上を見込めると判り、
より本格的に規模も大きくしたのちに、事業を再開する。
それで子供達だが…
菓子とパンの工場だったとこから、パンの工場を分け、
その運営の一部を任せる運びとなった。
当面はガイナ村周辺の分を製造、販売して行く。そこには鬼族の、主に女性や子供もここに合流し、
孤児院の子供の力の足りない部分を、鬼族に任せると。
日本のパン屋が、俺の最終目標なのだが…
今のところは、それは相当に遠い目標だな。
なんせまだ、始まったばかりだからな。
ちょっと前にトニーさん経由で、
酵母の存在を知っていて、それを使ってパンを焼いていたと云う少数民族を発見し、
俺はそこへ飛び込んで交渉し、
当然、速攻で囲い込み、
その技術の指導を強く強くお願いしたった。
金も仕事も、その上家まで貰えると聞き、
そこの少数民族のうちから四家族が、まずはデリターニャへ。
そこで酵母からの各種パンの製造の、まずはテストを行ってきた。
ただ、あくまでもガイナ村のパンの製造拠点が出来るまでの繋ぎであり、テストが主な目的だった。
うちの子供達との顔合わせや、生活環境の大幅な変化も考慮し、
あと、遊牧民だった彼らが、少しでも早く街になじめるようにと云う意味も含めていた。
デリターニャなら、取り敢えずすぐに何でもあるしな。
そして間もなくここガイナ村へと遠路はるばる、移住してきてくれる。
その四家族はカシャーリア族と云うそうで、特徴は小柄な人間…だな。
俺の知識に近い存在だと…モンゴルの放牧民?の様な、
常に移動しながら生活するような部族で、
近年はその移動先が大体焼かれていたり、荒らされてたりと、
やはりアーマのせいで結果、その生活はかなり困窮していたそうだ。
マジ卍どころか、マジアーマ…
ガイナ村に来なかった連中は皆、高齢で、
最後は生まれた場所で死にたいと、そう願った連中だそうだ。
その気持ちは…判るな。
そして、その四家族全員が親戚なんだと。
そしてその彼らの主食のパンだが…
小麦粉とは違う、コッチの食材である珍しい麦がベースで、
雑味が…たっぷりです。ハッキリと言えば口に合わない、酸っぱ苦くてかなり不味かった。
ただ、このパンにはとんでもない特徴があって、
余裕で二十日…冬場なら一カ月くらい余裕で日持ちしてしまう。
そう、保存食だったのだ。
このエグミのきつい酸味こそがその秘密で、木の実をすりつぶしたモノを混ぜてるそうだ。
カビや雑菌でさえ、これには勝てないらしく、最悪カビが生えたとて、そこを千切って捨てれば問題無いそうです…。
商品ラインナップが増えるかと、実は結構期待してたんだが、これは無いな、と。
まあ…まだコッチのパン工場はまだ建設中だからな。まだ慌てる段階では無い。
あと数週間はその準備期間だ。
まずはこの一族が持つお宝、酵母の増産から始めていく予定。
工場の完成と同時に量産体制が出来てるのが理想だな。
この工場の建設にはアザオとマッスーを責任者にしといた。暇そうだったしね。
流石に施工の監督はイサクだが…
現場責任者って仕事と肩書を、ヤツらには与えておいた。特にアザオには頑張って欲しいね…
マッスーはまあ、適当に…
そうそう、その鬼族だが。
元々傭兵稼業を生業としてるだけあって、戦闘に関しては全く文句の付けようがなく、
力仕事と護衛の兼業?で、デリターニャの港湾部で作業を行いつつ、
今後働いていて頂く海の上での戦闘も、
ちょっとづつ経験して貰うって事で、早速数人づつが、護衛船の任務に同行している。
普通、こういうメンツが増えるのを他の傭兵らは良しとしないもんらしいが、
鬼族の強いって噂は、業界内では結構有名だったらしく?
雑魚なら不満だが、強者ならば歓迎だと…
特に船の本数が増加傾向だった事も有り、実は傭兵らも結構多忙だったのだ。
かと言って、どこの馬の骨とも判らんヤツには自分の背中を預けたくは無いと…
なるべく余所者や同業他社の参入は許したくない。なんせ、こんな美味い仕事である。
ソイツをおいそれと、他人に渡してたまるもんかと…
そういった背景から、無理に無理を重ねた、相当に無茶苦茶なローテーションを組んでいたそうだ。
幸い?
近頃は大きな戦闘が無かった事でなんとかかんとか、
ギリギリ回っていたようだが…
流石にそんな無理は、今後止めて欲しいよな。
まあ…鬼族だが、そんな傭兵界隈では増える事は渡りに船の、まさしく好タイミングだった様だ。
そしてズク族だが…
先行して到着した三百人と、
遅れてやってくる本体を迎え入れる準備が急ピッチで行われている。
簡単に言えば長屋の様な共同住宅を、異様な超ハイペースで建設しまくっている。
ここにも俺の、例のブロック工法が大活躍だったが…
大将、ブロックが全然足りんぞいと、
強めのクレームがイサクから入り、
再び、魂のブロック職人が急遽、復活させられたのだった。
イサクから笑顔で…
せめて最低で三万個程は欲しいのお…っと。
バカな?三万…だと…?
一万でアレだったというのにか?…
アイツ俺を、殺す気だよね…?
コツを掴んだんで、量産のペースはかなり向上したんだが、
やはりツライ…単純作業ってツラ過ぎる。
だが、ズク族到着までの猶予は殆ど無い まさしく突貫作業が必要なのだ。
そりゃあ必死のパッチで…結構死ぬ気で頑張った。
ブロックは、俺が造ったそばから、次から次へと持っていかれる。
そしてポンポンと積み上がっていき、やがて長屋へと、その姿を変えていく。
それが速いのだ…
むしろ、そんなんで大丈夫かよって速さで、
一気に完成して行く。
みるみる増えていくその住宅の姿…
その目に見える成果が…
それだけが、俺の心をギリギリで支えてくれた。
ちな?
この長屋の建造はズク族に加え、鬼族らも参加していて、
コイツらも城の建造で、ブロック建造のコツを掴んだらしく?
骨組みの木枠を組むのも、ブロックを並べるのも無茶苦茶に速かった。
しかも、あっちは大勢だが、俺はボッチである。これは酷いだろ?
イサクよ、流石にこれって卑怯だとは思わんかね?
「は?…なら五万に増やすか?」
そう言って即、強く恫喝された。
酷い…
一体人をなんだと思っていやがるのか?
マジで酷い…
酷い話も有ったもんだぜ…
これじゃあまるでイサクじゃねえかよ?
………あ!?
とにかく、とにかく俺は頑張った。
そうだ、全ては俺の国のためだからな。
ブロック職人の名に賭けて…
そんな俺の国の名前だが、
…まだ無い。
超高速ブロック職人をしながら、それを考えるなんて無理ですって。
もう少々…お待ち下さって…結構です。
あと…もう一万くらいだと…
だがもう…脳も心も、限界です…
ろれつも怪しいです…
もうしばやく、お待ちくだだだい…
グッ…
舌噛んだ…




