イサクの多忙な一日
困ったもんで、ありとあらゆる仕事が、ワシの下に集まってくる。
その全ての元凶は、あの大将のせいなんじゃが…
腹が立つが、もう笑っちまう。
寝てる時とメシ食ってる以外、
最近特に…ほぼなんかしらの仕事がワシの上から降ってくるのお。
ただ最近、大将が見繕ってきた大勢の若い連中が、
随分と仕事を覚えてきて、
建築も、道具や部品の製造、例のブロックの製作も、
いちいちワシが触らんでも、ようやく勝手になんとか回りだしたな。
その大将が連れてきた、大将の名付けた弟子っ子軍団(仮)に、
そこに鬼族とズク族も加わった。
とうとう総勢で、百人を超えたようじゃぞ、弟子っ子軍団…。笑っちまうよな。
そんな連中からは頭領って呼ばれ出したな。それも笑っちまう。
そしてまずは鬼族の若い奴、
ここには子供も何人かいるが、
見た目はかなりごっついが、実は以外と繊細な仕事の方も、奴らには向いていたな。意外だったな。器用なんじゃな。
仕事を覚えたいって熱意が、すげえんだよな。
そしてズク族。鬼族よりもごっつい身体をしとるな。
ヨミの旦那の悪巧みで、このズク族をメインに、なんと城をぶっ建てるって事だった。
こりゃ面白えな。
確かに、城のねえ国なんざ、有るわけねえもんな。
まあ…大将は別に要らんとか、割と本気で言うだろうな。
ありゃホント、欲がねえのか、アホなのか?
まあ…とにかく城だな。どうせならばでっけえ城でもぶっ建てたいトコだが…
ヨミの旦那もまだ大将の理解が低い。
限度があんだよ、限度が。
でっけえ城ならば流石に諦める?
違うんだよな。
あの大将の基準を…
いいトコとダメなトコの境界線を、
超えちゃダメなんだよ、うちの大将は特にな。
そのギリギリを、正確に見極めんとな。
そしてダメな方に出ちゃった場合…
ソイツは良く無い。
あの大将のこった、最悪はそれ見て卒倒して、挙句に壊しちまう恐れも充分にあるぞ?
でもホント、うちの大将は変わってるよな。
でっけえ城とか、そんなモン、喜んで貰っときゃ良いのによ。
わしゃ、元々鍛冶師だった筈だが、
何でもかんでもやってるうちに、今じゃあらゆるモンに興味が湧いちまった。
そもそもだった。
船の修理なんざ、ワシには無理だと思っておったら、
それをまさか、神獣様が治しよったし。
島の家もそうだったな。ワシは建築なんぞ専門外って言ったら、
もっと素人のはずの大将があれよあれよと作っちまった。
あの吹雪や大雪にだって、一切負けんくらいのヤツを…
あの時に思ったな。出来る出来無いなんて、所詮は本人の考え方次第だったなと。
勿論、色々と専門的な部分は違っちゃいるが、そりゃそこは当然だ。
だがその根っこの部分は、
モノを造るって事自体は、
剣も家の扉も、実は大体は、似たようなもんだったのさ。
数百年も生きてきて、そんな大事な事を…まさか素人と神獣から教えられたわけだが…
もう、笑っちまうよな。
数日前だったか?
相変わらず、うちの大将が不思議な…見たことも聞いた事も無いカタチの石の建材を、
朝から晩まで、ただひたすらに作ってた。
上に突起が有って、下に穴が空いてる。
これが合わさると、重さも有ってガッチリとハマる。しかもズレない。
驚いたよな。こんな簡単なカタチで…なんで今まで誰も考えなかったのか?
コイツがすげえんだよ。
素人同然なズクや鬼の連中でさえ、
こいつを指示どうりにただ積んでくだけなら、
そんなモン、技術もへったくれもねえもんな。
しかも、どっちの連中もデカいし、力がすげえんだよ。
足場も無しに、結構な高さまで、ポンポンと積んじまう。
おかげで普通に十日は掛かりそうな仕事が、
なんとたった二日で終わっちまった。
地竜が穴を掘ってその土との境目をブロックで仕上げた。
大将が置いていった巨大な岩盤や岩を、
若い奴らがきれいに割って…
加工して、並べて行って、
練習と実践が同時に出来ちまう。
ワシの若い頃の常識じゃ、若いヤツは道具だって簡単にゃ、触らせちゃ貰えなかったってえのにな。
だが…仕事を覚えんなら、早けりゃ早いほど良い。
若いヤツはモノの吸収も早いからな。
そんで驚くよな。
小さいとはいえ、城が数日で建っちまったわ。
流石に笑っちまうよな。
そりゃ忙しいわけだよな。
忙しいのも大概だが…
時々、ワシの部屋にゃ昆布と、大きな鍋いっぱいの、ゼンザーイが置いてあったりする。あの男…
こういう時だけって…そうも思うが、
まあ…気には掛けてくれてるって事だ。
それも案外、悪くは無い。
結局、それぞれ受け持つなんか…が、有るんだろうよ。
こういうのが、ワシの…って事だな。
それになんだって、知れば知るほどに面白えもんだしな。
さあさあ、早速昆布茶だな。
お?この昆布…結構良いヤツだぞ?
ずずずず…ふうう…
おいおい、昆布茶って、なんでこんなに美味いんだよ?
…笑っちまうだろ?




