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シャダの多忙な一日

 私の名はシャダ。このシャダ商会の代表であり、

 うちの大悪魔かいちょうを信じて疑わない、敬虔な大悪意教の信者だ。


 まあ…唯一ヨミさんは、うちの会長が認めた神だからな。ならば神だ。

 そこは別として、そもそも生まれてこの方、神なんざ全く信じちゃいねえが。

 

 ただ信じるモノが、たまたま大悪魔だっただけだ。

 

 勿論、だからって人前で、大きな声で大悪魔なんて絶対に呼んだりはしない。


 無駄に痛い目をみるからな。


 そしてその会長様だが、

 たった一日で、目の前の海を一気に埋めちまった…


 相変わらず、やることが無茶苦茶だと思う。


 しかも、ただ上から土を落とした訳じゃない。


 元々有った大量の昆布を護るために、

 わざわざ地面の下には空洞まで作ってた。

 ご丁寧に、そこにちゃんと日も当たるようにって、上の水抜きを兼ねた穴まで空いてるって…


 やってる事は大抵無茶苦茶でデタラメのクセに、そういうトコが妙に芸が細かい…


 大悪魔のクセにな…


 そしてそういうトコは必ず、有って当然か、

 無いと困るものだったりするのも、後でハッキリと判るのだ。

 そして毎度毎度、そこに恐れ入るのだった。



 そして今日、朝から延長した土地を突堤のカタチにわざわざ整形してくれた。

 それもやはり、僅かほんの数分だったな。


 もう見慣れたとはいえ…相変わらず無茶苦茶だとは思う。

 これを普通の奴らは奇跡とか言ってるようだが、全く違う。


 会長にとっては、あんなもの奇跡どころか、ただの児戯だ。


 住居の建物も、建物ごと動かしちまうし、

 道や水路なんて、まさに一瞬で掘っちまうしな。 


 おかげでこっちはもう、とにかく忙しいのだ。

 もっと移設だの施工だのに日にちが掛かりゃ、

 もうちょっと楽に出来るんだがな…


 それが何でもかんでも、あっという間だからな。


 なんとか作業が進んでいるのも、

 イサクの指示で、ある程度の計画が事前に有った上に、

 マイダス親子らの協力も大きい。港湾部が順調に改装しているのも、あの親子有ってこそだった。


 あの親子は一切、会長のやることには金銭を要求しない。

 幾らこっちが払おうとしたって、きっちりと返される。


 会長の仕事は全て、新たなる勉強だとか言って…それを本心で言ってるのが、本当にありがたい話だ。

 

 あの親子、私以外の熱烈な…大悪魔の信奉者だからな。


 

 その突堤に付随する建物や設備の打ち合わせをしながら、昼前までは港湾部を指揮したり手伝ったりして、


 昼飯に屋台組のなにかをつまみながら、居住区の整備を見に行く。


 既に会長によって、あらかた大きな邪魔者は全て移動しているので、

 あとは商会の建築部門と打ち合わせをしながら、進捗状況を確認しながら、資材の量の調整や補充、発注をする。


 岩や木材は買うことさえ無い。ここも会長の仕業で、言えばなんだって、どれだけだって出てくる。一体どうなってんだって…

 皆、それを見て笑うよな…


 勿論、私も。


 ここまで無茶苦茶が過ぎると、誰だってもう、笑うしか無いのだ。


 昼がある程度過ぎた頃には、孤児院の横の、

 焼き菓子とパンの工場へと向かう。


 ここに最近、会長のご家族が大勢で手伝ってくれている。

 この子供達…元は海賊らに奴隷にされていた子供だったそうだ。


 この子供らもまた、俺達同様に、会長の手によって救われたのだと。


 大悪魔のクセに…人助けばっかしてやがるのだ…


 絶望の中に居て、その暗闇から救い出された。

 そう思うと、とても他人には思えないのが不思議だ。

 とにかく、地獄の底にいた俺達と…

 ある意味同じ境遇の、


 まだ子供だが、なぜだか仲間って気さえしてくるな。


 しかも皆、優秀で理解も早く、そう言った面も含め、

 そこは恐らく、あの会長の影響が大きいのだと思う。

 特に頭の回転の速さや切り替え、そもそもの考え方なんか、今じゃそっくりだよな。


 いづれはうちの戦力となってくれたら、どれだけありたいことか、とはいつも思うが…

 先ずはあの方の意向があるからな。

 そこをあまりがっつくのも、流石に怖いしな…



 パンや焼き菓子は幾つかの店で販売していて、

 幾つかの船におやつやツマミ、なんなら夜食として重宝されている。


 護衛船の傭兵らも、割と頻繁に買いに来るな。


 手軽に軽くつまめて、割と腹持ちもいいし、

 なにより美味いからな。

 軽く持ち運び出来て、日持ちもする。まさしくうってつけってやつだな。


 注文の在庫の確認と検品、明日以降の発注を済ませ、ここもあとに。



 次は屋台組の事務所だな。

 順調なら良し、

 ダメなら売上の状況を確認し、場所や売るものを変える相談を行なう。


 そろそろイカ焼きの、新味の開発が急がれるって事だったな。

 これは早急に会長に相談しよう。

 こういった場合は、特にスピードが大事だと、散々会長から指導されたしな。

 屋台組のメンツも、古い馴染みばかりで、気心も知れた連中だった。

 コッチの意図もすぐに理解して、変更の手配をしてくれる。

 コッチも新味を急がねばな。


 屋台組の確認を済ませば、今度は不動産部門だな。


 特に住居の移動をして、家をガイナ村に移す奴らの相談を受ける。


 実際に住む人間には、地下水路の事は話してある。

 多少移動に時間が掛かるとはいえ、そこまで大した問題でも無い。

 歩く事さえないしな。


 だが不確定要素の高い奴にはおいそれと秘密は明かせない。

 無料の馬車や牛車を出すって事で仮の話をしていく。

 

 最近は流れ者が随分と多くなった。

 古くて半壊してるような建物は当然家賃もタダ同然で安かったが、

 新たに建てる建物はそうは行かない。

 金のない流れ者にゃ、廃墟の方がありがたいんだろうが…


 そこで多くの揉め事が起きている。ある意味当然だが。


 なので、拗れに拗れた場合…そこに私かベッツ、或いは両方が共に呼ばれる。

 

 私とベッツがいれば、大抵そこまで揉めることが無かったからだ。


 そんな今日も今日とて、揉め事を収めに行くわけだ。


 別にこんな事くらいは慣れっこだったが、やはり疲れる。


 なんせ、ぶん殴って良いなら簡単なんだが、今じゃそういうわけにゃ行かないからな。


 歩く道すがら、

 ベッツと共に、再び屋台組のトコで食うものを物色し、

 すっかり暗くなった街を歩く。


 アチコチから、夕食の匂いと声が聞こえる通りを、

 明日の予定を確認しながら歩く。


 商会に戻ると、番頭や屋台組の頭、各関係者が今日の報告を上げて行く。

 それを聞きながら、屋台の焼き物や揚げ物をつまんでいく。

 味の確認も兼ねているので、これに文句をいうやつも居ない。

 いつもの流れ、いつもの光景だ。


 

 身体には良くないとは思うが…


 報告が終わると、明日の用意を始める。

 明日は連合の会合だったかな。


 とにかくまあ、今日も無事に終える事が出来た。

 報告をする者たちが笑顔だと、やはり満足感や充実感が有るな。


 さあ、業務は終わった。うちへ帰る。


 再びゆっくりと街を歩く。

 港湾部の根本辺りに、私の家がある。会長がくれた大きな家だ。

 お前は代表なんだから、皆に夢をを見せる意味でも、そりゃデケえ家だよな?っと…


 当時、大きな商家だったトコを、わざわざ私にあてがってくれた。

 

 昔を思えば寧ろ、こんなありがたい話なんて無いってのに、

 時々、あの頃に住んでた廃墟を思い出したりする。

 いや、流石に今更、アレに住みたいとは思わないが。



 そしてようやく家に帰ると、時々、


 居間にデッカイ鍋が置いてある。

 

 門番までいるのに、


 そうは簡単に侵入なんざ出来無い屋敷なんだがな…


 フッ…


 まあ…そこも例外なんだな…

 嘘みたいだが、世にも珍しい、全く悪意のない不法侵入だ。


 


 たまにはまともな食事を食えと…そんな感じなんだろうな。



 大悪魔のクセにな…


 

 ありがたく頂いて、サッサと寝るとしよう。




 明日も早いからな。


 

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