進捗 2
さてさて、その…
まあ、ある意味手前みそといいましょうか?
かなり照れくさいんですが、
早速、俺の城ってヤツを…
誠に、恐縮では御座いすが?
一度、ご見学させていただこうかなと。
ええ、恐縮です…
設計したヨミが、自ら案内してくれるそうだ。
当然だが中はまだがらんどうの、ただのハコですが。
城は地上三階、地下二階建の構造で、
地下はまだ工事中だと。
一階部分が、小ぶりな前後二つのエントランスホールと、その奥に大広間。
そこは謁見の間にもなるそうだ。
なんせ最奥には、カッコいい玉座が有る。
あ、アレに座らされるのか…俺が?
ちょっと恥ずいです…
その横に、ミューら従魔の控えるスペースが有る。
向かって左が九郎、右がミュー。
ジョンは俺の足元で寝そべる感じだそうだ。
見た目で?…そう決めたらしい…
その玉座の壁の背後のスペースには、かなり巨大な厨房がメインとなる大部屋が有る。
俺の城ならば、巨大厨房こそ?
むしろ当然だろうと…
お、おう…
なる程ね…厨房ですか?そう来ますか。
うん、確かに悪くはない。いいとこ突いてるよ。
デカい厨房って、やはり大事だと思いますからね。知らんけど…
他にも食糧の貯蔵庫や武器庫、多くの控室や客間、会談の為の部屋…
更に?入口は別だが、ここにも子供達の部屋も有るそうだ。
子供達と云う俺の弱点が、俺の近くに居た方が、
人質とかに狙われるリスクがほぼ無いだろうと。
勿論、城の地下では水路も接続されている。
しかも?デリターニャ直行便。
勿論、帰る方も直行便。
これが城の地下に接続されている。
ここも地竜夫婦が、大分頑張ってくれた様だな。
あとの仕上げだけは俺の仕事だと。
了解です。
この城、見た目よりも奥行きがエグい…縦長?で、外の見た目よりも結構デカいよな…
そして二階。
まずは大きめのバルコニーが目を引く。
ここから民衆に向けて演説とか、するんでしょうね…普通の王様だと。
俺?…さーてね?
その奥には、様々な用途に使う広間が四つと、
城のスタッフの部屋などが用意されていますと。
えーーっと?
スタッフとか?…要るの?
「当然でしょ?誰がお茶の用意を?まさか王様が?」
え?…ダメなの?あ、やっぱそういう感じ?
あ、うん、判った…我慢します…
え?…そうじゃない?
そもそも違うって?お、おう…
そして三階。
全部が俺の部屋だと…?
え?余裕で三十畳くらいの広さが有るんですけど?
いやいや、こんな広く無くて全然良いんですけど?
俺の部屋なんてそんなモン、
せいぜい六畳もあればそれで充分、あの角の物置くらい…いや、むしろアレで良いんですけどと…
で…?
え?
それでは世間に示しが付かない?
え?世間?…
あ、そういう感じ?なる程…オッケー了解、じゃあそこも我慢します…
「我慢?」
あ、いえ…なんでもないんです。こういうヤツにあんま慣れて無いんで、つい…
「………」
ちな?
ここは村長屋敷のちょっと後方の小高い丘を、
中身をまるっとくり抜いて造った城だそうで、
規模こそ違うが、あのタカマ=ガハラと、ほぼ同様の建築方法なのだと。
そこを俺の特製ブロックで外側を仕上げたと。
俺無しだと、かなり大層な穴掘りだったみたいですが、
そこは地竜旦那、地竜嫁が、かなりの尽力をしてくれたそうです…
あれだけやせ細っていてたあの旦那?
…大丈夫なのかな?今頃死んで無いか?
やはりあとで、美味い肉でも、大量に差し入れさせていただこう…
ヨミが言うには、
俺の配下にはあらゆる種族が集まってるので、
そんな世にも珍しいそこを、
上手く良いイメージを、強く世間にアピールする意味でも、
うちには種族間にも、全くイザコザなど、
些細な事でさえ一切有りませんよ?
…的なメッセージを世間に発信する為にも、
全ての種族から代表を出させて、ここで働かせるのだと…
なんか、働かせるっていう言い方は、なんか気に入らんが…って、
そう言うなり、ヨミから注意を受けた。
それでも王様ってヤツを演じる為には、そういったものも必要なのだぞと。
王の為に働ける事は、国民にとって、非常に名誉な事なんだよっと。
…それをコンコンと、
ヨミ先生からキツめのご指導、御鞭撻を受けたった。
例え俺が、ここの王で、ゆる~い感じ?
それを望んだとしても、
それはあくまでも、内々だけのお話だと。
俺が望む、望まぬに限らず、
一般的な王様は、そう有るべきって姿がちゃんとあって、
そう…俺の場合はその王様って仕事を演じる為に?
決してどこからも、うちの国を舐められない様に、
そう言ったモノは必要不可欠なのだと。
やはりヨミも皆も、
俺が偉そうにふんぞり返って、ただ黙って玉座に座ってるなんて事は、
天地がひっくり返ろうが…まあ絶対に無いだろうなって、
そこだけは重々は理解していたのだった。
その上で、それでも王様ってヤツが居る以上は、
決して舐められない、そんな世間体ってモンが、どうしても必要なのだと…
こんな俺ですが、
俺の関係者全て、その皆の安全だとか、生活を護るって、そこの覚悟は有ったのだよ。
だが…王様になるって覚悟なんて、そもそも一ミリも無かったのだった。
俺のなかでは、その二つは全くベクトルの違う話だと、そう認識していたからね…
その覚悟の位置?
置所が、やはりおかしかった様だ。
草民を護るモノこそが王だと。
つまり?
俺って事らしい…
だが…言われてみれば確かに、な。
言われてみれば…だ。
野球部にだって、キャプテンって存在が絶対に要るのだった。
そこは身を持って知ってる。
練習だろうが試合だろうが、なんなら揉め事だろうが、
うちの野球部のキャプテンは、かなり有能だったものな。確かに要るよね、キャプテンは。
だが…俺ってヤツは、
この試合を壊さぬように、ただ誰かの脚を引っ張らないように、
なんならちょっといいとこで一本、大きいの打てればそれでいいや、って…
まさにその程度の、
ただの一選手の様な、
そんなぬるい感覚だったみたいです…
王ともあろうものが…っと?
はい、皆さんの仰っる通りで御座います…
そうか…一国一城の主って、
監督だしキャプテンだし…って、そ~いう事だったのね。
確かに、見た目やなんかで、相手に舐められたって、良いことなんか何一つ無いよな。
むしろ、妙な不安を醸し出す様な?
謎の空気感を出してる監督とかキャプテンの方が、絶対に絶対に嫌だよな、
試合前から、既に絶対にヤベエって気が、
相手にはするよな?って事だったのね…
相手が勝手に萎縮する…的な?
なる程ね。そ~いう事か。
つまり?
国には、或いは王様には、
強烈なハッタリが必要で、その喧嘩上等的なハッタリこそが、
まさに城だと。王様だと。
ある意味?
幽霊船の幽霊とおんなじって…
そーいう事だったのか。なる程ね。
そう言ってヨミを見たら、
ちょっと引きつった、苦い笑顔だった…
全ての作業の進捗状況は皆、大変素晴らしいものだったが、
唯一、俺だけが、
大きく、ポツンと遅れていた様だ。
俺は随分とアマちゃんだった様だな。
そう、覚悟だ。
覚悟のその、置所だったわけだな。理解した。
なる程…時に建国には、強烈なハッタリも必要なのだな。
必要な時に、えげつないハッタリを、平然とブチかませる、
そんな王様の、そんな強い覚悟が必要だったのだな?
そうか、俺にはそれが無かったな。そこは反省してます…
…え?
何ヨミ?どーしたの?
「………」
PS この城には防衛機構が一切有りません。
なんなら最初から、それらは一切考慮さえされていません。
なぜって?
ミューに九郎にジョンまで居て…
なにより俺が居りゃ、
防衛用の深い堀や高い壁?
高い見張り台?
そんなもん、要る?
要らんでしょ?…だってさ。
世間体とか言って…
意外とそーいうとこは…
ガッツリ手抜きなんだね?




