進捗 1
全ては、俺が考えるよりもずっと簡単で、一旦動き出せば勢いってやつが生まれ、
俺がビビるくらいの勢いで、全てがどんどんと進んでいた。
まずはデリターニャ港湾部。
元々のその港の狭さゆえ、入港には制限があった。
一日最大で六隻程度、しかも朝から夜中までフル稼働で。
まずは埋めてはないけど、実質埋め立てた?新エリア。
新たに船がつけれる切り欠きを設け…
まあ、俺がサクッと削っただけなんだが、
いかにも港っていう、突堤が横に四本並んだ形状にしたった。
本来は船のどちらか片側を横付けし、積み下ろしを行っていたが、
これを左舷、右舷の両方で同時に行える様にしたら、
なんと作業効率が三倍になったらしい。
入港制限も撤廃された事も合わせ、
更に連合の荷物の流通が大幅に良くなった事で、
連合の加盟商社、商会はそれぞれ、
大幅に利益を上げていた。
当のシャダ商会も、大幅な売上増に加え、その人員も大幅に増加した。
広く募集などはしていないにも関わらず、
どこかも知らぬところから、次々に就職希望者がデリターニャに流れて来ていた。
勿論、誰かれ構わず雇うほど、シャダ商会はマヌケではではない。
だってうちは、一流企業だからな。(※自称)
面接は当然だが、更に厳しいテストをクリアし、
更に更に、テスト期間を無事クリアしなければ、
その先は無かった。
幸い、今後一部の鬼族と、ズク族からも人員の補充がされる事になっている。人員の補充も順調に進んでいた。
次にデリターニャ市街区。
この乱雑な町並みも一旦全て取り壊し、再開発を行なっていった。
港湾部からの道をよりスマートに流れる様に、積み荷の運搬に最適化させ、
水路と同時に、陸路でも運搬を行うためだ。
貴重な物、高額な物は主に水路で、
最悪、盗賊なんかに奪われたとしても…ってものが、対盗賊用デコイの代わりで、敢えて陸路での輸送となる。
俺が編み出したブロック工法が、実はかなりの高効率化をしているらしく、
住居の建設が一気に行われていた。
何より、基礎となる石(岩)も、木も、金属材料も俺の手元には大量にあった。
それが湯水のごとく…使い放題。
超巨大な岩山がまるまる【深淵】に収納してあるからね。
ちなみに、金属材料の大半は、
別に頼んでもないのに、アーマ軍が俺にぶん投げて…提供してくれた武器だな。
やはり鉄製武器が多く、イサクがそれを溶かして、ここで再利用している。
釘や金具、鉄骨や芯材、必要なものは特に困って無い。
なんせ、数万規模の武器や鎧があるからな。
港湾部も住居区、そしてガイナ村、相当な量を使用してるが、全く減ってない。
他にもヒヒイロカネやミスリル、アダマンタイトなど、一部の高級素材は販売も行ったが、それでもまだまだ腐るほど有る。
そもそも高過ぎるので,そうポンポンと売れはしないのだった。
まあ…永久に腐らんから別に良いけどね…
いやいや、【深淵】様さま、持ってて良かった四次元ポケット…ね。
そうそう、連合の傭兵に支給される武器は、こういった高級素材を惜しみなく使っているので、
言ってみれば、憧れの超一流ブランド品の数々なのである。
それを惜しみなく貸与されるのだよ。
まあ…あくまでも貸与なんだが。
一旦、良い武器の高性能に馴染んでしまうと、もはや普通の武器など、とても使えた物ではない…
ましてや防具…桁が全く違いますからねと…
ウォシュレットに慣れてからの和式トイレ…そこにはそのくらいの?
もはや耐え難い、圧倒的なもどかしさ…が、有るのだよ。知らんけど…
なので傭兵らは、うちの仕事を完全な本業にしていて、
一般の仕事は殆ど受けていない。
命を賭けてまで、斬れない鉄製の剣で闘う意味が、
簡単に斬られてしまうちゃっちい鎧や盾の意味が…
もう完全に理解出来無いのだそうだ。
頼んだわけでもないし、そんな契約もしてないそうだが、
今のところうちの護衛船団や輸送戦団は、稼ぎも良い憧れの大人気家業、
そこを辞める理由など、ステイタスも含め、彼らには全く無いのだった。
更にまもなく、ここには鬼族の戦士も派遣する予定だ。
そしてガイナ村。
ここが一番、短期間で劇的に変った場所だった。
そして…驚愕のサプライズまで、実はここには用意されていた。
ヨミの主導で極秘に建造されていたのが、なんと、俺のための城だった。
小さいながら、俺の為の城…なんだそうだ。
ちょっと震えた。
サプライズが、俺の心に深く突き刺さったよね。
実は…泣きそうだったが、耐えた。
必死で耐えたった…
こんなモン、サプライズにも程があるわ!!
お誕生日プレゼントがお城って?
一体どこのセレブですか?
いや、お誕生日ちゃうけど…
鬼族らの住居などほっぽらかしで、
まずは城の建造を、わざわざ率先して行ったそうだ。
もう鬼族らの寝床は有るからと…
ガイナ村に到着したズク族も、疲れて居るにも関わらず、
あの地獄のような終わらずの戦争の…
その戦争を終結させた英雄の為の城、
ズク族を救った守護神様の為だと…
その偉業を称えし城の建造を、なにより喜んで手伝ってくれたらしい。
そこも例の、ブロック工法が功を奏したそうだな。
俺の悪夢の代償、あのブロックが…まさか俺の城に…
実に感慨深い…
こんな邪悪な雑魚の為に…
まさに感無量…だった。
あの時の、ヨミらのヒソヒソ話が、実はコレだったわけだ、と。
そもそもそれは、鬼族の三人、アザオとマッスー、そしてグシオンの、
その疑問が発端だったそうだ。
国を造り、そこに鬼族の住居を造るのは理解したが…
とてもありがたい話だが、幾ら何でも、流石に順番がおかしいだろと?
全ての国はまず、城を拠点とし、発展するものだろ?と。
なのにあの方のお考えに一切、城の話が出ないのはなぜだ?
まさか…まさかとは思うが、
やはり、我々一族を信用されて居ないのでは無いのか?
…とにかく、全て規格外過ぎて、すぐに捨てられるのでは無いかと、不安で仕方ない、と。
それがまずイサクに、そしてイサクからヨミへと相談され、
気付けば地竜をも巻き込み、城建造の極秘プロジェクトが発動してたらしい。
…俺には内緒で。
当然、そんなモン要らんと、俺なら必ず言うだろうと、
ヨミもイサクもグシオンも…
一切言葉を交わすこと無くとも、
皆、その同じ結論に一瞬でたどり着いたらしい。
「城?あの大将…そんなモン無駄だとか普通に思っとるぞ?」
「ああ…絶対に一切、興味ないよね…主は」
「しかし、王たる王に城が無いなど…」
「「だよな〜…そういうトコ変わってんだよなあ…」」…きれいに意見が揃ったらしい。
世間に対して、独立をアピールするにも、そのアイコンとなる城の存在は必然、
城の無い王国など前代未聞。そんなもんが国か?と、
幾ら規格外であろうが、流石にそれはどうなんだ?…っと。
だったら造ろう、主に勝手に。
造る前だと絶対に反対するだろうが、既成事実だと。
出来てしまえば諦めるだろうと。俺ってそういうタイプだと…
まんまと、その目論見通り?
…こんな俺でも、
流石に出来てる城を壊せとは、言えなかった。
一応、かなり控えめに、小ぶりには造ってある。
最悪?デカいだなんだと難癖をつけ、俺が壊す可能性も、考慮したのだそうで、
その限界ギリギリの大きさを巡って、
ヨミとイサクがかなり揉めたらしい。俺をよくご存じで…
ヨミはもっと大きくしようとしたそうだが、イサクが猛反対した。
危険だと…
なので、後々拡張できる構造にしておき、
安牌で一旦、この大きさで妥協するって事で落ち着いたそうだ。
…ソウデスカ…
俺って…一体どんなイメージなのか?
…暴君なのでしょうか?
ちょっと…心配になったよ?
だが、この日俺は正真正銘の、
一国一城の主と、なったらしい。いや、なった。
全く俺の計画の、その端っこにも無かった城の建造が、
僅か数日で出来上がっていたのだ。
予想外の、最高のサプライズだった。
めちゃくちゃ感慨深い。
だが…やはり嬉しくもあった。
国が出来ていってるって、より強く実感したからな。
恥ずかしいからさ…
多分、声には出せんが、心から感謝するよ、みんな。
マジでありがとう。




