再始動 1
当面の危機は去った…気がしている。
いや、完全に去ったなどと、簡単に言う気は勿論、全く無いが。
差し当たっての脅威が一旦、引っ込んだって感じだとは思うが…
それでも、いつまでも俺達は、立ち止まっているわけには行かないのだ。
連合に流していた、第一級警報は一旦解除し、
注意報へと格下げした。
だが、注意報は当分のあいだ解除は出来無い。
俺よりも、俺の関係者の方が、ヤツに狙われるリスクは高いからな。
例のクモ男の情報を共通すべく、連合加盟の各商会や水軍、傭兵、から、情報提供を募り、受けた。
そして、
鬼族の一部から、そのクモ男であろう容疑者、恐らくニニーギの情報であろう情報を、
なんと速攻で得ることが出来た。
灯台、下暗しだったね…そういや、鬼族って傭兵稼業が主でしたね。
欲しかった情報って意外と、そこからでしたか…
そのニニーギの率いる部隊が、
あのアーマ軍の中では、群を抜いてかなり強いらしい…
いや…強かった、が正解か。
ええ、残念ですが、今じゃもう過去形です。
その部隊、まるっとまとめて御臨終して頂きましたので。
ええ、だから過去形です。
その指揮官が、例のオニギリ君?だそうで、
そのオニギリ君自体も、やはりかなり強いそうで、
なぜならあの?剣の神の弟子なんだってさ、と。
現場でそう、アーマ兵らから聞いたらしい。
剣の神?…正直、顔もあんま覚えていませんが、
確か俺が…ぶっ飛ばしたったていう…おぼろげな記憶だけは有りますな。
正直、誰だっけ…って感じですけど。
そして、
これがそのアーマ達が噂してたらしいんだが、
そのニニーギってやつは、魔蟲の猛毒を受けたせいで数万回…
それこそ、死んでは復活、死んでは復活…を、ただひたすら数千年繰り返しながら、
ついには毒と、死を克服したって、アーマ中で噂になってたらしい…
幾ら死なんからってさあ、
わざわざ致死の猛毒を、なん回もなん回もって?
ガチの、本物のアタオカですやん?
完全な、サイコパス野郎の様ですやん…ヤバない?
もう今日から、キモニギリ君って呼ぼう…知らんけど…
そして、各商会には、ヨミ先生とミューの合作、
特製の緊急連絡魔石が配布された。
急ぎなので俺が各所に直接配ってきた。
この魔石の前で、特定のワードを言う、この魔石を叩く、
台の上からこの魔石を落とす…
口や動きを封じられても、なんとか出来うる行動で、
それはすぐ様作動するように、特殊な魔法が込められた魔石で、
ソイツが反応した場所に、俺とミューが即、急行する仕組みだ。
とにかく?怪しいやつで、クモっぽい何かが有ったら即、連絡だと。
ちな、それに使用回数制限など無い。
どんな些細な情報でも、何回でも、当面俺は、何かしら手応えが有るまでは、
何度でも飛んでいく所存です。
あれを野放しにするのは危険だからね。
俺に正面から来ないなら、きっと俺から離れた場所から弄りに来るだろうってトコで、それを用意したのだった。
一応?カーナンにもとんで、
キモニギリ君が帰還して無いかは、結構長時間をかけて確認したが、
どうやらどこにも、帰還した様子は無かった。
そうそう、ニニーギ見に行ったついでに?
すっかり忘れてた、マーヤル師匠の、一軍のお宝も回収してきた。
別にいつでも行けるからと、ずっと放置して、完全に忘れてた。
こーいうトコだぞ、俺。
例の黒い石が幾つかは有ったが、マーヤル師匠の一軍は、基本書物や文献で、
明らかに、俺のパワーアップに繋がるものが殆ど無かったのには、逆に驚いた。
このなかには以前、俺が【煉獄】で見たらしき謎の女性の、あのお話も含まれているそうだ。
お爺やんは改めて、俺の為に、アホみたいに大量の文献を、隅から隅まで全て読み直すそうだ。
うん、頑張れ…
ヨミ曰く、ニニーギってやつはどこかで結界を張って、ひっそりと隠れてると思う、っとそう言われた。
俺の、フェイズドアレイレーダー(※ただ言いたかっただけ)で、
カーナン周囲を探索したが、発見は出来なかった。
同じく、九郎のサーチアンドデストロイでも、やはり無理だった。
ヨミの話じゃ元々、時空や空間を捻じ曲げるのもかなり得意なヤツだったらしい。
まあ…だが確実に、しばらくは動けん筈だ。
折角まだ繋がってる、そのうっすい首の皮…せいぜい大事にして欲しいもんだが。
…で、
本題に戻るが、そもそもズクとアーマーの混成を再整備して、
ヨミは新生神族を立ち上げるつもりだった。
だが…やはりアーマとズクの抗争はあまりにも長過ぎた。
もう、生まれたときから、アーマはズクを、
ズクはアーマを、それぞれ、見かけたらすぐに殺せと、そう言われて生きてきたのだ。
そりゃ、簡単に消えない軋轢はあるよね?
そこをヨミは自身の能力で無理矢理押さえつけているのだが…
やはり簡単では無い…
そう考えてた矢先に、俺からズク(戦力)をデリターニャにくれと…そう言われて、
自身の計画を大きく見直した。
当初の予定通りに、とある島の地下にある秘密の砦には、アーマの残党だけで赴き、
ズクはデリターニャに残す。そう結論づけた。
深淵の主の言う通り、食糧の確保も含め、それは決して悪い手では無い…いや、むしろ願ったり叶ったりであった。
実際に、今行軍しているアーマらの全ての食糧も、実はデリターニャで仕入れたものや、連合で入手したものだった。
それを高値で売りつけたのも主だが…
まあ…そこは良い。彼の言う通り、それが迷惑料だと割り切れるから。
だが、連合の助け無しで、実際にこの規模の食糧を賄うのはそう簡単では無い。
ヒルメの能力の一部を取り込み、多少の創造が行える様になったヨミであったが、
果たして、本当にアーマとズクの混成を、全て不自由無く賄う事が出来るかどうかは、
未来視を持つ当のヨミでさえ、正直まだ未知数だった。
そう、なので連合を、ヨミ自身も、最初からかなりアテにはしていたのだった。
…
……
そして、深淵の主だが…
デリターニャの北、山脈を、相当広範囲に大きく削ってしまうつもりらしい。
そこはあれからも、地竜ともかなり相談したようだが、
本来、大地や文明の創造など、それこそ我らの本分だった。
主は…それを壊す為の…
破壊の神の筈だったのに、
すっかり立場が入れ替わってしまっている。
いや、それに文句など無い…
むしろ、この創造三神でさえ、この破壊神には感謝さえしている。
また随分とおかしな時代になったものだと…
ツク=ヨミは、思わず笑わずにはおれなかった。
やはり、この大きく歪んでしまった世界の破壊を、
彼は…破壊神は行っているのだろう。
かつての破壊神が選ぶことの無かった、
全く別の選択で。
全く、別の方法で…




