深淵を覗く者 5
敵の動きが無い。
動きが無い。
全く無い。
全く、なんにも無い。
なんすかこりゃ?
ねえこの、俺がよ?
わざわざここまで身体を張って、一生懸命頑張っていると言うのに、
一体どこで、何をしているのだね、ここの賊は?
なってないよ。
ダメだよね?職務怠慢だと思わない?
見て、今だぞ?
千載一遇の、スーパービッグチャンス、
年に一度の、スーパーお買い得チャンスが、
今まさに、到来しまくっているんですけど、なう?
ここで来ないでどうすんのよ?
いつ来る気よ?今でしょ?
…
しーーーーーん。
ほお…?
ほおほお…
ああ、それでも尚、無視ですか?
ガン無視なんすか?
おいおい、ちょっと待てよ?…本気?
カッチーン…
チッ…ムカつくな…?って、あれ?
…っは!?
いや待て…こ、これが罠か?
はっはーーン?!
閃いたね。
なる程ね。敢えて?
なる程ね…俺を焦らして?怒らせて?
ほおほお…こりゃ危ないトコだったね。作戦ですか…なる程、なる程。
こりゃいけませんね。つい、カッとなってしまうトコでしたよね。
ついまんまと、向こうの思うツボに、てめえからハマりに行くとこだったわけだ。いやいや、そりゃいかんね。
うーーーん、こりゃ参ったな…短気はそん気…だね。
ただまあ…賊も今回は相手が悪かったよね。
なんせ相手は俺ですからね?
え、…キレてるかって?
――キレて無いですよ?全然キレて無い…
むしろ、
俺、キレさせたら、そいつ大したもんだよ…
誰にも悟られぬ様、
ひっそりと長州のモノマネをしてみたが…
やはり俺の心は晴れない。いや、むしろ辛かった…
上からは決して見えない口元だけを【深淵】にツッコミ、密かにヨミに相談したった。
カクカクシカジカ…あーたら、こーたら、
で、トリモチダイブ、か〜ら〜の?
今、フルのガン無視…ですわ?
――で、このあとどうしよ?
「うん、見てるね。確実に…」
お?おお…
「我ならば…それで主の能力を探っているよね…」
――?
「何か、主のするとこを、力をみたいんだよ…」
おお、やはり?グッと耐えてが正解だったか?
流石は俺やな!ナイス判断。
…で?
「え?」
――だからおい、俺はそこを聞いてんだよ?
どーすんだよこの後?
「ああ、そうだね、そりゃ失礼。でも難しいね、深淵属性って事は…神族じゃ無いって事だし、それがなんでアーマ軍を率いていたのか?
てっきり神族だと思っていたけどね…うーーーん、これは難問だね…
ただ…」
ただ?
「深淵属性って事は、主の眷属か竜種、それらの類似の、それ以下…って事だよね?
つまり、主は正面から行っても、
深淵の本家本元の主が、その深淵に力負けするとは、流石に思えないけどね?」
ほお?…なる程。
つまり、やっておしまい、…って、事でOK?
そうですか。
――了解だ、司令官。
残念だったな。
くだらない小芝居の時間はここで終わりだ。
フーー、いや、そもそも俺は、勢いでバーーンって感じの、
コッチ側の住人だからな。ズバリこっちが得意分野なのだよ。
そう、たった今からは、哀れな貴様の蹂躙タイムだ。
震えて待ってろ。
俺はサッサと立ち上がる。ついでにジョンの糸も回収し、フリーにしといた。
まずはご挨拶。
【深淵】のヒビ割れを超高速回転させて、周囲の木々を一気に薙ぎ倒す。
その時…何かが動いた…気配がした?
逃げた?いや?…躱したな。
ジョンもそっちに反応した。うん、そっちに居るな…
すぐ様、周囲の広範囲に境界線の膜で囲った。
この範囲内なら、脱出不可能。だんだん狭めて、
今からはチマチマと、【深淵】のヒビ割れで削ってやる。
悪い子にはお仕置きだ。せいぜい思い知るがいい…
ん?…なんで?
糸だ!?
そんな俺の身体には、なんと糸が絡みついていた。
ミューじゃ無いが…敵はクモなのか?
なる程…俺の接地センサーを避けて、どっかにぶら下がってた、って事か?
そして、どんどんと、俺の身体には糸が絡みついてくるが、問題無い。
そもそも敢えて受けてるだけで、
こんなモン、いつでもスルー出来るんだよ?
とんでくる方向を探っているのだよ。
俺も勿論ミューも、見た目はぐるぐる巻きになってはいるが、な。
もう一度言うが、こりゃ敢えてだ。
油断させてやろうっていう、ある意味俺の優しさだぞ?知らんけど。
見ろ?こっちはもう、ミシュランガイドの雪だるまみてえな、
モッコモコやぞ?モッコモコやぞ。
もう充分だろが?
さあ、そろそろ出てこい!
待つ。
じっと待つ。
動かずに、な。
俺にはお前の手など、まるっとお見通しだ。
ヒビ割れ以外、もうなにも見せてやらん。
ん?…
完全にぐるぐる巻きで、俺にはなにも見えて無いって思ってるだろうが、残念…
実は、丸見えなんですわ。
いたね。
見ーーつっけたっ!
林の奥…あの曲がった木のトコ…
なる程…そんな感じ?
じゃあ、ご挨拶だ、
俺は一気に糸のぐるぐる巻きを抜け、
一気に距離を詰めてそこまで飛び…
どうも初めましてっと、
金属バットをフルスイングしたった…が、
バッチュン…
ギリ、芯は逸らされた?
だが掠ったぞ…まあまあの手応えがあった。
手応えがあるなら…
血が出るなら殺せる…って、シュワちゃんが言ってた。
まあ…バットに血はついてないが…
確かに手応えは有った。
次はてめえのどたま、きっちりとかち割ったる!
サーチのやり方を、地面に加え、空中にも広げたった。
フッ…この俺から逃げられると思うなよ?
進化した俺のレーダーは最早、
最新鋭のイージス艦のレーダーにも決して負けはせんっ!(※個人の感想です)
さーって…どこだ?
おやおや?かくれんぼのつもりかい?無駄、無駄、無駄、無駄、無駄…?!
ほらいた!
馬鹿めっ…もう逃がすかよ!
ん?…
お?また消えた…な。
これはダミー?
だが無駄です。
すぐに見つける。いた!
フッ…もう逃がさんわ!食らえっ!
一気に飛び込んで、
ブンッ、とフルスイング…
ん?
なんだよこれ?
フルスイングしたバットがとらえたのは、魔石で…
ガチん…
チュドーーーーーンッと、
フルスイングの直後、
なんとそれは大爆発した。
結構な爆弾でしたか。テヘ…やっちゃった。
なんということでしょう!
ついに捉えたと…そう思ったのは…
…ただの罠でした…ってか?
おい?あぶねーだろが?こんなモン、普通死ぬぞ?
死んだらどうしてくれんだよ?
もう激おこぞ?
プンスカぷんだよ?
だがまあ…残念だったな。
こんなモン、俺には一切効かんのだよ。
それよりだ。
もう逃がさんぞ。境界線の膜は随分と狭めたからな?
まあ、普通アレで勝ったっと思ったろう…。
アレは実際に中々良かったよな。
うん、まーまーだった。普通のヤツなら、てめえの勝ちだった…
おめでとう。
良くもこの俺をここまでコケにしてくれた。そこだけは褒めてやる。
だが…詰んでんのはもう、てめえの方なんだが?
もう終わりだ。
さあ、いい加減出てこいや。
今なら初回特典ボーナスで、
命乞いくらいは聞いてやるから。
いいか、今日だけ特別だぞ?




