深淵を覗く者 4
山脈に潜むアーマ軍を、
あっ…ちゅう間に、【深淵】に、残さず全てぶち込んだった。残念ですが殺処分です。
その展開していた長〜い隊列の、その中央あたりに、
眼下にデリターニャの外壁を見下ろす、ちょっと開けた、眺めのいい場所があった。
へえ〜なる程…ここからなら、俺達の動きが良く見えるな。
なんなら?
ここに来る直前に、俺がジョンと一緒に居た壁も見える。
今後、前に話してた国を広げる計画だと、
ここらも削って、開拓するんだっけな。
ある程度削って、大きなため池や、防衛用の壁や砦を…って、ヨミ先生が言ってたっけ。
そうだ、折角だし、
ついでだから、ここの現地視察でもしとこうかね。
俺とジョンは【深淵】から出て、辺りを見渡していた。
大量虐殺のあとだが、一滴の血も流れてはいない。
なので特に、俺の心に痛みも葛藤も無い。
むしろ、悪の手先から街の平和を護ったのだ…この邪悪が…?
なので?
気分転換にも、お散歩にも、いい天気だったしね。ちょっとジョンと歩こうか。
この山脈を、例えば上からケーキみたいにカットした時に、
まるでノコギリの刃みたいに、
それは前後左右?あっちもこっちも、かなりのギザギザ?ってか、
ここってなだらかな稜線みたいなモノが、一切無いよね…
山あり谷ありが、もう相当にエグいっていうか?無駄に険しいよね?
これも地竜に相談しようかな?いや、防衛には良いのか?
風も強いし、まあ確かに、こんなトコ歩くくらいなら、
そりゃ遠回りだろうが、みんな街道に行くわな…と。
ん?
どうしたジョン?
え?
そうか、お前もこの妙な違和感を、感じてる感じ?
「ギュルギュルギュルギュル…」
ほお?…ジョン君は警戒態勢だね?
俺のセンサーには全く反応は無いが…
俺だけならば、間違い無く完全に気の所為だが…
ジョンがこうも警戒態勢って事はもう、
こりゃ疑いようない…
つまり、誰ぞが潜んでるって事だ。
だが…なんだ?
全然仕掛けて来ねえな。
今ならほら…絶賛、隙だらけだぞ?
寧ろ、そっちから来てくれると、こちらは非常にありがたいんですけど…?
うん、【深淵】から出てから、あの見られてる感を、より強く感じる…
だが…どこよ?
全然判らん…
ああ、結界か?…その結界って、相当に優秀みたいだな?
試しにちょっとヤシノミ爆弾でも、
軽くここいらに降らせようか…などと考えてた時だった。
ほんの数歩動いた時に、急に俺の脚が止まった…
いや、ジョンの足元も…
これって…まるでミューのトリモチやん?
おいおい?
なんだよこれ?
ジョンもやっぱ、え?って、不思議そうな顔だな。
当然だが…ミューじゃ無い。
ミューは鬼族のトコだし、そもそも俺やジョンの足元にトリモチなんか仕掛ける理由が無い…
ただ、
正直に言うと、俺は実はすぐに抜けられるのだよ…
ジョンも合わせて、二人で、罠に掛かった振りの…
とんだおマヌケさんの小芝居を、
うわーーうわーーっヤベエーーと、続けたった。
勿論、隠れてる奴の、そのご登場を願って、ね。
だが…俺達の小芝居も虚しく?
一向に敵が出てくる気配は無い。
ん?…この演技くらいじゃ足りんのか?
まあ…言うて、俺もまだ上半身はフリーだしな…そうかなる程…
するといっそ?
テレビのイタズラ番組みたいに、
ド派手にズッコケて、大の字に地面に、
べったりとトリモチに張り付こうか…
ジョンと目を合わす。
俺とジョンは以心伝心だ、
俺が敢えて無様を晒せば、きっと乗ってくる…
ジョンは目をパチパチしてるが…大丈夫だ。俺はジョンを信じてる。
そうだジョンよ、二人で無様を晒すんだ。敢えて…な。
うわーーとれないよーーとか、こりゃあ困ったぞおお…とか、
いい加減ちょっと、飽きてきたしな。
地べたに張り付いて、ジタバタして背中まで見せりゃ、
流石に?
ヘラヘラ笑って、ノコノコ出てきそうな気がするよね?
「はーっはっは、掛かったな?」とか、言いながら? 悪党ってそうだよね?
大体、そんな感じよね?
よし、ならば仕掛けてみるか…せーのーで、
う、うわああ、しまったあああ…
顔から行ったった…
が?
ジョンはそれが予想外だったらしく、かなり慌てている…
そうか、
残念だが…
ジョンと俺は、以心伝心では無かった様だ…ちょっと切ない…
ジョンには大丈夫だと声を掛け、
辺りを注意深くサーチするが、
やはり、出て来ないな。なぜだ?
逆にビビってるのか?
こんなおマヌケに?ウソでしょ?
顔面から行って気がついたが、このトリモチ…
なんと深淵属性の様だな…こりゃ驚いた。竜種?
多分…普通のヤツが掛かったら、それこそ魔力をごっそり持っていかれるヤツだが…
まあ、当然俺には一切ダメージが無いどころか、
寧ろ、お肌にも優しい、回復薬にも等しいんですけど?
――だが…察した。
察したった。
フフフ…舐めて貰っては困るのだよ。
俺くらいの推理小説マニアに言わせりゃ、こんなモン一発である。
犯人は俺が…
獲物が弱るのを、ただじっと待ってるのだよ。
ハイハイ、知ってる、知ってますぅ。
キオスク?駅の中だよ。
流石は俺。天才かよ?
この程度の展開などお見通し…
すぐに理解出来てしてしまうのだよ。クックック…
フッ…良いだろう。
弱ってる獲物(※小芝居)をご所望とあらば、
てめえのご希望通り、そいつにノッてやるよ。
ジョン…お前も弱れ…小さな声で命令し、
うわーーうわーーからの?
ぐううう…苦しい…
も、もう…だ、ダメ…だ…ち、力が…
ううう…
ガクッ…
ピクピク…
しーーーーーん…
逝った…
我ながら?
完璧だったな。一部の隙も無い。
怖いな…この才能が…
だがどうだね、この素晴らしい演技は?
今年のアカデミー賞は俺がもう、総ナメじゃ無いのかね?
知らんけど…




