深淵を覗く者 3
行きがけの駄賃…ではないが、俺は鬼族のとこに行って、
緊急事態だと説明して、兵隊を百人程お借りした。
熱血族長も、是非ご一緒に行かせて欲しいとか…
相変わらずな事を言ってきたが、
勿論速攻で却下した。バカかと。
――アザ雄とマッスーには、ここの守備を任す。なにより女子供を優先で護ってくれ。
「あ?アザオ??…」
あと、ちょっぴり心配なんで、ここにはミューを置いていく。
まあ…相手が竜種以下ならもうまるっとお任せで、
いっそ寝ててもいいくらいだが…油断は大敵だぞ。
くれぐれも皆を頼むぞ。
あと随時、商会から連絡が来ると思うが、
それが来なくなったなら、いよいよヤバいって考えてくれ。ここも直ちに臨戦態勢だ。
そして借りた兵隊の指揮は、グシオンに任せたい。俺達の港を守ってくれ。
じゃあサッサと餃子の皮で移動しようか。
「御意!」
そしてアマジャさんらにも声を掛けた。非常事態ですよっと。
一応、アーマの神族が相手なんで、ここには九郎を置いていく。
ヨミの命令を聞くなら良し、
まあ…聞かんだろうけどね。
九郎も初っ端から遠慮など無しで行け。
リー即だ。
ガチの、サーチアンドデストロイだぞ。デストロイ。
まあいうて、九郎だからな…竜種以下ならば…(※以下略)
そして今、俺はデリターニャの高い外壁の上に、ヤル気全開マックス状態の、
猛るジョンと一緒にいる。
そんなジョンがかわちい。
付近にはアーマの姿など見えないが…
ま、当然隠れてるよな。
九郎のサーチにヒントを得て開発した、
俺のスーパー探索テクニック?
披露するときが来たようだ。
名付けて…あ、今はいいや…特に考えてねえし。
九郎は全周囲に向けて音波を飛ばし、反射してくる音波を解析しているが、
俺は周囲数キロ程度の地面全部に、
或いはそこの木や壁や建物全ての表面に、境界線の膜を置いた?展開した。
そこに触れたものは全て、俺にはそれが何かって、感じ取れるのだ。
え?…そんなん大丈夫なのかって?
アリンコから石ころ…人間に獣人、獣や魔獣…
そこには莫大な、とんでもない規模の情報量が有るでしょう?…と。
それにはその、対処法を見つけてあった。
例えば…駅やなんかで友達と待ち合わせた時だな。
周囲を見渡して、その友達探すよね?
大勢居たって、意外と気にしないってか、友達だけにフォーカス出来るよね?
まさしく、あんな感じで俺は、脳内でアーマをイメージするんだよ。
するとどうでしょう。
たちまちアーマだけが、そのセンサーにヒットして、そこらの情報が脳内に飛び込ん来るのですよ。
まあ…それをイメージ出来なかったり、
なんなら違うアーマの可能性も有るっちゃ有るのだが、
幸い?
この付近に潜むアーマは皆、もれなく俺の敵なのだよ。もうまんたい。
大きく広げた境界線の風呂敷の上には、
かなり多いアーマを感じていた。
丁度デリターニャ山側の、
まさしく山脈に沿って、ポツンポツンと居るように感じるね。
実際に付近に飛んでアーマの様子を伺う。
ほおほお…
ここの兵には緊張感はまるで無い…つまり、すぐには動かんのか。
武装や装備はちゃんとしてるし、兵隊の雰囲気がなんとなく強そうに見えるな、と。
大体十人ずつの単位で、結構な広範囲に展開してるな。
お?ズク族も食ってた樹の実を食ってるな。
アレはなんて名前だっけ?
まあ…基本は似たようなモンって事か。
うん…見る限り、ここは一般雑魚ゾーンだな。ここにはもう、用は無さそうだ。
さてさて、それでは偉いさんを探そうかね。
頭を潰しゃ、アーマなんて烏合…だからな。
付近をゆっくりと移動しつつ、誰も観てない物資や武器、特に食糧はサッサと回収しておく。
センサーの感度を強めて、偉いさんを探って居るが、
皆おんなじで、特に司令官の様な奴や、司令所みたいなモンも、
どこにも見当たらないんだが?
おかしい…
だが…ずっと妙な気配だけは感じるな…
多分…ここに居るんだよ、偉い奴も…
これって…あのくそレホーに感じてた、あの視線みたいなんだが…
あれともちょっぴり違うんだよな…
なんか変な感じだわ。
そもそも裏側に居る俺を、じっと見てるって事は、流石に考えにくいよな。見える訳がないんだものな。
たまたま偶然か、はたまた気のせいか?
うん、もう一回、サッと回って見ようかね。
あ、ひょっとして結構離れた場所でコソコソしてるかも。
でも…そんな感じも特に、この周囲には無いんだよな?
んーー、めっちゃ不思議だわ。
だからなのか、変な違和感がずっとあるんだよな。
端から端まで、前から最後尾まで、
全て念入りに確認してはみたが、やはり指揮官って感じのヤツがどこにも見当たらない。
実は…?
全員が指揮官でした!テッテレー…的な?
…みたいなオチがあるのか?
デリターニャを囲んでは居るが、
飯食うか休憩中なんだよな、うーーーん、調子狂うぜ?
敢えてコイツらの、ケツでも蹴ってみるか?
お?
そうだな、ここは一旦、アーマのプロに聞いてみよう!
ヨミ先生のとこに飛んで様子を話し、意見を聞いた。
なぜかヨミの横顔が険しいし渋い…
「多分…そこの指揮官は結界や魔法で、違う次元にいると思うね…丁度、主の深淵の様な感じでね…」
へえ〜、じゃあそれって、どうやって炙り出せばいいんだ?
「きっと頭がキレるタイプだと思うよ、出て来ない可能性も有るね…」
へ?…そりゃなんでよ?
「君がいる事を、向こうは理解してる…そう考えれば辻褄が合うよね…」
お、おう?じゃあ、どうすりゃベストだ。
この際、部下だけでも処分しとくか?
「そうだね。それが良いかもね…慌てて出てくる可能性も有るかもしれないしね…」
まあ…遠足で飯食ってただけだったら気の毒だが…
そもそもデリターニャを囲んだ段階でアウトだ。
まあ…予定通り、アーマの皆さんにはサクッと消えていただこうか。
さっき巡った順序で、展開してる兵隊を、片っ端から丸ごと【深淵】にぶち込んでいったった。
最早遠慮など無い。迷いもない。
手当たり次第、片っ端から全部、一気に行ったった。
荷物も身体も…その日、数千ものアーマは、
なぜが僅かなの痕跡も残さず、
デリターニャの北側山中で、突如全員が失踪した。
うーーーん、
それでもまだ、
いまだに妙な違和感は消えないが、
まあ…
せいぜい一人では、そんな大した事も出来無いと思うのよ。
お仲間は謎の怪奇現象で消えちゃったしね。
こりゃ完全に謎の未解決事件だよね。
知らんけど…いや、知ってるけど。
ただ、皆さん光りの粒となって、苦しまずに昇天されました。
この度は、なんら気も付かないうちの御臨終、さぞやお気の毒でしたね。
来世こそは、もっとまともなやつになって欲しいよね。
知らんけど…




