G7会議 1
時は来た…知らんけど。
実は会議に先立ち、作戦本部は大幅に模様替え、リフォームを行った。
勿論、そこはイサクさん(※だけ)が、頑張ってくれた訳だが…
まずは建物入り口の高さを高くして、鬼族でも余裕ってサイズにした。
元々、ここは倉庫を兼ねた造りなのか?
或いは倉庫を改装したのかってくらい、
元々の天井が高いので、室内高は特に弄って無い。
室内で弄ったのは、この大部屋のすぐ横に有ったジオラマ部屋の壁を取っ払った事か。
現在、ジオラマ部屋は大部屋の一部になっている。
話しながら見れたほうが絶対に良いからね。
そして中央に置いていた間に合わせのテーブルはいっそこの際だと、
トニーさんにお願いして探した、大きめの立派な円卓を奮発して置いたった。
かなりデカいし、重厚感も有って、俺もかなり気に入っている。
当然だが、円卓はビビるくらいに…相当に良い値段だった。
そもそも、どこかの城に置くようなものらしいし、そこは見た目通りの納得のお値段だった。
普段、馬鹿げた投資の様な?無茶苦茶な散財は散々と行なっているが、
意外にこんな買い物とは珍しいですねっと?
そのトニーさんに言われるくらい…
確かに、俺が何か個人的に、贅沢品を買ったって記憶は無い…
いや、無欲なのでは有りません。俺が欲しいモノって、そもそもコッチの世界には無かったからね。
車もバイクも、キャンプ用品も、おしゃれなジャケットも、かっこいいスニーカーも…
無いのよ…俺が欲しいものって。
敢えて言うなら香辛料くらいかな?
アレだって…結局のところ、今じゃ商会の仕事の一部だしな。
逆に?誰かに高いモノを売りつけるのは問題なく、多少強引にでもイケてるのだが?
或いは?土地や建物なら、一切迷いもなくイケイケで買い漁ってるが?
それが、自分のモノを…ただ高いテーブルを買うってなると、
なぜか急にビビってしまうという…
俺だって、今じゃまあまあ儲けてるはずなんだがね…
だが、これは清水の舞台から、思い切ってダイブして大正解だった。
だが、やはりすげえ買い物だった。
どうやら俺って、正真正銘本物の小市民だと…こんなカタチで再認識させられたよ。
勿論、テーブルは自分で運びましたよ。
船便だと、この大きさでは余裕で、数週間は掛かリますよ?
…って事だったしね。
俺なら設置も含め、ほんの数分の事だしね。
良いテーブルを買ったなら、当然椅子にも拘ったね。
このテーブルに似合うヤツの方が、そりゃ絶対に良いからね。
それに、鬼族サイズでも、余裕で座れ無いとね…
結果?鬼族様は大きめの座面のモノで、
肘置きは折り畳める様にイサクに改造して貰った。
更に?掘りごたつをイメージして、鬼族が座る際には、床の一部を一段下げられる様に、
床も一部を弄った。鬼族トップの椅子三脚分ね。
会議中ずっと見上げるのも、前かがみなのも、お互い大変だしね。
具体的な話…特に?
シャダんトコと連合の、割と日持ちする様な食糧関係、
小麦の様な穀物や酒類、まあ…他にも色々と有るんだけど、
盗賊や魔獣、獣の類から護るべき、優先順位の高いものの量や規模、
それを見据えた量の倉庫の数と、そこまでの水路からの運搬に必要な距離や時間、
商人サイドと都市設計の専門家、そこに従事するであろう鬼族の、
それぞれの意見を出し合い、重ねて行き、
まとめたり、足したり引いたりしながら、会議は進んで行く。
実際にシャダ商会の倉庫を建てる際も、マイダスさんに意見を求めたのだが、
現状、パツパツのいっぱいいっぱいでも、
ギリで商会の仕事が破綻していないのは、
ひとえにマイダスさんの意見を、まるっと全面的に採用していたからで有り、
俺は今回も、そこに多いに期待しているのだった。
もしも俺が口を出していたのならば…恐ろしい…サブイボ案件ですわ…
今頃、ここまでの規模に膨れ上がった膨大な仕事を、
決してまともに捌けはしなかった筈である。
やはり先人の知恵って、ひたすらに最高なんですよ。出しゃばらんで、ホントに良かった…
そしてやはりオーソリティの、ヨミ先生である。
そもそもこういうのが得意で、大好きなんですよね、彼は。
今もそうだが、何か大逆転の一手を思いついた時の…将棋してる時にちょくちょく見せる、あの顔だよね?
しかも…みんなそれに気づいてるけど、敢えて言わないやつ…
そしてトニーさんだが…マイダスのオッサンも大概に頼もしいのだが、
更に規模の大きな倉庫や、その荷物の搬入、搬出に関してのノウハウが、やはり半端ない。
流石は大店の責任者なだけのことは有るのだった。
ベッツもやはり、それなりに業務をこなしているだけあって、
今のデリターニャの問題点なんかが、それこそポンポンと出てくる。
それをヨミが上手に纏めて行くのだが…
いやあ、流石は先生ですね、その手腕が実にお見事ですわ…勉強になります。
ただ息を殺し、それを黙って聞いとくだけで、どんどんとお話が纏まって行くのが、マジで素晴らしいです。このスムーズな進行。
そこに俺が入れる隙間など、一切有りません。
そこに、地下水路から、倉庫までの積み荷の運搬について、
あ、あのイサクまでもが意見を出してくれている。
うーーーん素晴らしい、
俺以外、みんな頑張ってくれているよ。
なのでちょっぴり胸が痛い…
だが、何か聞かれない限り、俺はただ岩か、置物になっている。
動かず、語らず…決して皆様の、そのお邪魔をせぬように…と。
それが最近、俺が編み出した秘技、
必殺、河原の石ころ作戦…である。知らんけど。
そうだ!取り敢えず、お茶の用意でもしよう。
こんな雑魚な俺には寧ろ、そういった雑用がお似合いだ。
そしてそのお茶だが?
ここ最近、開発段階を経てついに販売を開始した、
今、商会イチオシの、話題の商品、昆布茶である。
元々?ただ昆布の端っこや余りを、なんとか有効活用したかっただけで、
うちのまかない用ってか、
そもそもこれを売ろうなんて、実はこれっぽっちも思っていなかったのだが、
試飲したシャダやマイダスさん、更には偶然近くにいたイサクまでもが、その昆布茶を大絶賛だった。
そしてこの昆布茶には実は、更なる秘密が有るのだった。
ただお茶って用途にだけでは留まらない。
コイツはお茶でお茶を濁す?感じだけでは無いのだよ…
知らんけどね…
実は料理の隠し味にだって組み合わせ可能なんですよ。
これはかなり優秀な、お茶と味付けを熟す、無敵の便利商品なのだった。
オタクの(イマイチな)料理に混ぜれば、あら不思議?
あっという間に一流のお味に…的な?
なんせ、昆布なんて旨味成分そのものだしね…出汁だけに?
初見のトニーさんとグシオンさんにも昆布茶は好評の様だ。
そしてトニーさんの目がヤバい…キラーンって…
どうやらすぐに、この昆布茶の隠されたポテンシャルに気がついたようだ。
流石は超一流の商売人である。
最近、トニーさんの地元でもようやく、少量だが昆布やワカメの採取が始まってる、
まさにそのタイミングだったからかな?
俺を見て、うんうんと頷きながらニヤついてるのが、もうかなりヤバい…いや、なんならちょと怖いのだが?
まあ…飯は別に用意していたが、昆布茶に合うだろうって事で、
ゼンザーイも一緒に出したった。
これこそ、甘いとしょっぱいの、夢の…奇跡の鉄板コラボなのである。
この組み合わせは、大体どんな客層でも、評価が高くなりますよね。
当然だが、皆様大絶賛だった。
鬼族の口にも合ったようで安心したし、良かったです。
特にイサク…あの試飲以来、どうやら昆布茶を溺愛してるらしく、
シャダんトコから大量に買い占めてるそうなので、このオヤツでかなり上機嫌だった。
いや?ドワーフのクセに、そこは酒とちゃうんかいっ?
あ、まあ、寧ろ健康的でええけどね?
だが、またしても勝ったな、これはまさしく圧勝の手応えだが…
だが、会議では負けた、完全敗北だった…ただの石ころだものね…
だが、これで一勝一敗でトントンである。知らんけど。
そして?
えらく静かだなとか思ってた、ヨミとイサクだったが…
誰よりも早く完食し、すぐ様おかわりを要求しやがった…
チッ…おい、てめえら?こういうヤツは…普通?
こういうのって、まずはお客人が優先でしょうがよっ?…っと、
お前ら身内は、ちょっとは遠慮しとけよ?っと…
軽くムカついたのだが…
…
だがしかし、
この御二方達の…この度の多大な貢献を、
俺は決して無視できないのだった…
グヌヌ…仕方が無い…
今回は…今回だけは多めに見よう…
渋々だったが、ヨミとイサクの器に、並々とおかわりを注いだった。
ただ結局?俺だけがこんなに気をもんだ割に?
俺以外のみんなが、ゼンザーイのおかわりをしたのだった。
え、俺?
俺は商会で、これを作りながら散々味見をしてたんでね。そもそも腹一杯なのよ。
でもさ、あんま腹一杯食っててさあ、
それって会議には良くない気もするんですが?
頭脳を使うと糖分が必要になるのだと考えれば、
これは脳みそに対し、良い補給になったと、そう信じたいね。
さて、後半も張り切って頑張ろう…河原の石ころか、道端の地蔵となって…ね。
ただ…あまり黙っているのは危険だな。
油断して、いつしか眠ってしまわないだろうか?とっても心配だよね…
この状況で、ただそれだけが心配な…雑魚な俺ですけど、何か?




