突貫 2
港の再整備が急ピッチで進行しているその横で、
ここからガイナ村へと続く街道と、地下水路の位置や向きなど…
こんなド素人が思いつく限りの条件なんかを、
俺なりに、必死に考えていた。
そこについに?
都市計画のパイオニア、ヨミ先生がやって来た。
シャダらの希望を優先した埋め立て地はともかく、
一体全体なぜ、この大事な都市計画に、
このヨミを参加させないのか?と…
結構、強い目のクレームが入った。
そこに関してはハッキリというが、そりゃお前に遠慮したからだよ?!
だって…お前もそもそも別に、大仕事があるんだろ?
これは俺の…細やかな配慮なんだよ?
「まあ…そんな事だろうとは思ってたけどさ…」
フッ…笑止。まさに些事だと、苦笑いされたった…
そして?
え?まさかと…
俺はめちゃめちゃ驚いてしまったが、
なんとヨミは魔法?で、地竜(旦那)をここに召喚しやがった…
例え、ヨミクラスの神族が呼んだって、軽く無視されるのが普通で、
そうそう簡単に来ないのが竜種…なんだそうだが、
俺の存在を告げたら、速攻で来たと…
ヨミはまたしても、苦笑いだった。
まあ…ここで立ち話もなんだからと、商会の会議室へ移動する事にした。
すると?地竜(旦那)は、なんということでしょう?
あっという間に、人間の…ヒゲのオッサン…風に、変化しやがりました。
え?
…そんなん出来るん?
待て?
そーいや?…アズラもフィアも、見た目は人間ぽかったよな。つまりそうか、なる程ね…うん、察した。
ならば、ここは敢えて騒がず、
勿論、俺だってそんなもん、当然知ってましたけども?…を、
装ってるのが良いのだ。
それが俺の?
コイツらに対する、細やかな抵抗なのですよ…知らんけど。
実は商会内には、普段決してちびっ子が入って来ない、奥の方の部屋の中には、
規模は小さいが、俺のジオラマを置いていた。
ここでは大人達が、かなり重要なお話をする場所だと…子供達もそう認識していて、
なので、ここには近寄る事もほぼ無かったのだ。
それを逆手にとったのだよ…過去の教訓を活かしたね。
今やあやとりバトルの会場となった、俺の造ったあの、栄光の作戦本部…
そこでは俺の国の滅亡という…哀しい思い出が出来てしまったのだが…
あの場所のジオラマを見たシャダから、
商会の中にも是非と、ジオラマ設置を強く熱望されたのだった。
ここのは流石に、この港の部分がメインなのだが、
一応ガイナ村の倉庫建設をにらみ、その部分までの余白を、あらかじめ作って有った。
そう、全てはこの日のために…な。
その余白に砂や土、石を並べ、街道や道を描く。
俺の語彙力で説明は困難を極めるのだが…
まず、デリターニャとガイナ村の位置関係だが…
漢字の田…そう、田んぼの田の字を思い浮かべた時に、
そう、四つの四角くと十字の境目、
その田の字の真ん中の横棒が、街道になる。
その街道上側の、左手の四角くの真ん中辺りにガイナ村があって、
右手側の四角くは、ほぼ山脈。つまりは完全に山。
ちな?ここには俺達もお世話になった、ヨミの隠し砦がある場所だ。
下側の左手の四角くのうち、左半分くらいが山脈から伸びてる岩山で、
下側の右手の四角くに、サンデ辺りを含むデリターニャがある。
俺は漠然とだが、ガイナ村の有る、左上の四角くを俺の国とし、
街道の挟んだ斜め向かいの右手側の四角くのデリターニャと、そこに大きな道を作って…
佐渡ヶ島を裏返した?ような?歪んだ平行四辺形の、そんな連合2カ国の全体像イメージだったのだが?
図らずもヨミと地竜(旦那)の意見は同じだった。
そんなケチ臭い事を言わず、ここの田の字を全部、俺の国にするべきだと。
まさか申し合わせたように、都市計画のプロ二名の意見がこうも揃うとは…
俺は街道はそもそも?みんなのものだと思ってたのだが、
この際、街道はうちが押さえて、
そこを通る奴から通行料を巻き上げ…違う、
頂けば良いだろう…って話だった。
当然、街道の維持整備や、安全の確保を唱えば、特に問題は無いだろうって事らしい。
当然?
多少の反発は出るだろうが、そんなの極めて当然の、エジソンは偉い人…くらいの、至極当たり前なのだと…
それをぶん殴って、武で黙らせるのが国…なんだそうだ。
そうなるとつまり、国が存続する限り、通行料がずっとうちの収入源に出来ると?
なる程ね…そりゃアリだな?
高速道路と高速道路をつなぐ、有料の連絡道みたいなヤツだな。
いや…言い方は悪いが、ある意味卑怯なダニの様でもあるが…
まあ、それをいちいち気にしたら負けだと…
そして…右手の上側の四角く部分…ここもガッツリと掘り返して、うちの土地にすると?
更にその奥側には、広大な山脈が広がっており、僅かその程度を切り開いたところで…全く変化も無かろうよ…と。
そう地竜(旦那)が言ってるので、
俺が考え、遠慮した環境破壊は、実はそこまでは大げさなものでは無い、って事の様だった。
そこは地の精霊関係のトップ、そこの偉いさんがそう言うのだから、
だったらもう、信用するしか有るまい。
そうなると、全ては地竜さんの責任だよね?
そして?舟の積み荷を、安全かつ楽に運ぶためと、
なんなら人間の移動にも使いたい、そんな地下水路について、だ。
プロ二名の意見が交錯し、より綿密なカタチが話し合われている。
俺は絶賛、蚊帳の外だった…
いや寧ろ、先生同士のディスカッションの、お邪魔をしてはいけないねっと…
もう必死で気配を押し殺し、ただ判った様な素振りで、うんうんと頷きながらも、ひたすら黙っていた。こういう場合では、沈黙こそが正義なのだよ。
結論として、田の字の左半分上下をつなぐ水路と、新たに切り開く右上から右下のデリターニャまでの水路を二本設置し、
水量の多い左上の部分を起点とし、時計周りで、田の字の内側を一回転する水路を造る。
一周回ったトコで、落差を設けた滝を造り、落ちた水が海に繋がる様な形状を、プロの先生達からオススメされた。
賊が水路をさかのぼって進入しようとも、滝が邪魔をするので安心だよと…
ついでに?嫌がらせでここを下水にしようと…悪辣なヨミ先生が笑っていた。
当然だが、俺は反対など一切しない…いや…出来無いのだ。
なんせ二人のプロが、喧々諤々やって、ようやくたどり着いた、
これこそが崇高な、清く正しいお答えなのである。
きっと俺ではたどり着けない、完全なる正解なのだよ。
俺の愚鈍な考えなどとは、そもそもモノが違うのだ。原付と原潜を比べるようなもんだと思います。
難しい顔をし、腕を組み、目を閉じて聞いていた俺は、
突如、くわっと目を開き、そして言った。
「よし、それで行こう」
それがなんとか必死に絞り出した一声、
俺の答えだった。




