鬼退治 6
グシオンって爺さんは、昔は相当に強かったんであろうなと…
その佇まいでもう、すぐに判るね…判ってしまう。ホンモノって空気が出てるのよ。
なんかな?
誰かに…似てるなあとか…思っていたらば、
そう、なんとうちのじいちゃんだった…
見た目は勿論、全然違うんだけどさ、
じいちゃんに角は無かったし、
いや、グシオンさんよりもっと細いし。
だが…ちょっと、なんとなく親近感が湧いてしまうよね…
そういや、うちのじいちゃんって、元気だろうか…
おっと、今は黄昏てる場合じゃねえな…
俺の名はシヴァだ。
以降はそう、呼んでくれて構わない。
そしてこの…遠慮の良く効いた、中途半端で微妙な距離感が?
なんとももどかしい…
こんな時の…相手との距離が近づく魔法を…
実は俺は知っているのだ。過去の経験でそれを学んだのだよ。
思えばもう何度も…その魔法で、ゴチャゴチャな空気が、ぼんやりと?フワッと曖昧になる…そんな奇跡の魔法…
そいつは飯だ。おまんまなのだよ!
みんなで一緒に食えばね、なんとなくだが…
すべてなんとなく…気付けばなんか、うやむやになるのだよ。
しかも?コイツらは腹ペコなのだ。まさしくビッグチャンス!
そして丁度?
地竜夫婦から、実は眷属でしたと、そう聞かされて…
以降、どうにも気まずくて、
すっかり食いそびれている、そんな大きなヘビが数匹居ると…
そう、ここがソイツらの使いどころであろうよ…と、
それこそ?ヘビさんの供養になるんだと、そう思わずには居られない…
え?
まずは鬼族に声を掛け、料理が出来るやつを呼び、
【深淵】から巨大なヘビを取り出して、これを調理してくれよっと…
グシオンさんから下っ端の連中に命じて貰った。
「これは一体、何故で御座いましょうか?」
当然、不思議に思ったグシオンさんは俺に聞くよね?
まさか、急に敵の俺から差し入れですからね?
勿論、毒なんか入ってないよ。採れたてピチピチのヘビさんだし…って、
まあ…オトナの事情で首は落として有るけどね。
流石に千人だしね、もう一匹出しとこうかな。
眷属よ…成仏してね…
じゃあ待ってる間にグシオンさん、話を始めよう。
俺がここに来たのはさ…ある存在に頼まれたからなんだよ…
ここはその人らにとって、かなり重要なんですよ。
故に、アンタらが勝手に住み着いた事に迷惑してるんだとさ。
そして、アンタらを皆殺しにするか、或いは立ち退いて貰うか…俺に投げて来たんだよね。
もう一回言っとくが、殺す気なら、そんなの最初から黙ってやってるからね?余裕で。
俺がアンタの言う軍神様かどうかは知らんが…
俺は【深淵の破壊神】…かつてそう呼ばれた神の…
成り行きだが、その二代目って事になった…ようなのが、まあ俺だな。
別に、立候補したわけでも無いんだけどさ。なんとなく、ね。
とにかく?ここの土地の所有権は、地竜夫婦…おっと、口が滑った…
まあ、もう良いか?どうせいつかはバレるしな。
「な、なんと竜種ですか…ここの泉に竜が居たと?」
ああ、番の地竜ね。この泉が、地竜夫婦の大事な場所なのよ。
まあ、話せば長いんだけど…成り行きで、竜種を数匹…ちょっとシバいてもうてね…
そしたら、なんか無理矢理にね、
ヤツらの代表みたいにされちゃったんだよ…ヒドない?
で、ここに来たんだよね。
俺の目で、アンタらを見極めにね。
聞けば、アンタらって、あのアーマと似たような血筋だと聞いたんでね。
アーマはほら、アイツら、ほんまもんのクズだったでしょ?
「…」
もしもアンタらが、俺の目で見て、あのアーマと同じに見えたなら、
もう既に、サッサと処理してたんだがね…
で?聞けばアンタら…食糧危機だって言ってるじゃんよ?
獲物を狩り尽くしたって話だが…
この人数じゃあさあ、どこへ行こうが、いずれ結果は一緒だろ…?
たまたま上手く、運良く、食い繋げただけでさ?
その辺、アンタらは自覚有るの?
「…はい…」
えーっとさあ?
それって、そもそもあの大将の方針なんだろうけどさ、
もうアーマはほぼ滅んだんからな?…いくら戦闘民族だからって、
もう戦いに明け暮れる日々は終わったんだぜ?
「アーマは…滅んだと?」
ん?ああ、少なくともヒルメと、あとタカマ=ガハラに居た五万くらいは、
俺がこの手で滅ぼしたよ…
「あ、アレは貴方様の…」
え?なに?…見てたのか?ヤダ、恥ずかしい…
まあ、隠してもしゃーないから、アンタには正直に言うけどさ、
残った残党のうち、血の濃いアーマの神族と、ズク族が今、合併の真っ最中なんだ。
それで大きなイザコザはもう、ほぼ消えるだろうな。
勿論、小さいイザコザは増えるかも…だけど、
まあ、所詮は盗賊に毛の生えた連中の、最後の悪あがきだよ…いずれは消える小さなボヤだな。
アンタらには見えてないのか?
もうこの世界はさ、新時代に入ってるんだぜ?
アンタら…そこに乗り遅れりゃ、いずれ結果は見えてるぜ。
良くて、せいぜい盗賊堕ち程度、悪けりゃ全滅…だろうな。
良い方の盗賊なんざにも、そもそも未来なんか無いぞ?
まあ、当の親分がのびてるのに、
こんな大事な話をするのもどうかとは思うが…
前に俺が言った、服従ってやつだけどさ、
別にアンタらを虐げようとか、無理矢理どうこうって話じゃ無いんよ。
もしもアンタらが、今までの生き方を変えてくれるんならば、
新時代における役目を担う仕事をしてくれるんならば…?
俺がアンタらに、居場所と仕事…食い扶持を与えてやる。
簡単に言えば、一緒に生きようぜって、そんな話しだ。
この【深淵の破壊神】いや軍神の、その名に掛けて、な…?
まあ今日は色々有ったけども、
取り敢えず腹一杯食って…一旦落ち着いて、な。
そう、だからアンタらに、俺から言いたいことが三つ有る…
一つ、返事は数日待つ。だからゆっくりと考えてくれ。服従か立ち退きだな。出来りゃ俺はアンタらを皆殺しになんかしたくないなんだよ。
二つ、この泉を絶対に破壊するな。破壊の兆候が見えた時は、悪いがその場で全員殺処分だ。そこは譲れない決定事項だ。
三つめ…
えーっと、特に有りません…
ま、まあ、また来るから。とにかくゆっくりと考えといてくれ。
じゃあグシオン…またな。




