鬼退治 4
楽しいお食事をしつつも、
俺は時々、鬼族の様子をチラ見していた。
ここまでは予定通りだった…
だったのですけどね?
ぶっちゃけ、この先は全くのノープランだった。
実際、鬼さん達がどう転ぶか、全く予想出来なかったからね…
…と、言う言い訳は、一応準備しているが。
ホントのところは、未来の選択肢が多すぎてさ、
途中からもう面倒になっちゃってさ…寝ちゃった。
それが紛れ無き、真実なのであった。
えーーっと?
要は?そもそもは、レリーフが無事なら良いわけだよね。
食い物に困って、レリーフを売り飛ばすとか…暴れて破壊するとか?
それを防げれば、大量虐殺も、退去命令も、別に要らんよね、って事だよね?
あくまでも感ですが…
見たところ、俺の小学校と中学校の、全校生徒を足した数よりも、鬼さん達の方が多そうなんだよな。
つまり、多分千人前後くらいは居るだろうと…
その食い物…そこが問題なんだよな。
その仕入れは可能では有る。
商会連合の力ならば、全くの余裕である。
だが?俺がソイツを奉仕する理由は、一切無い。働かざる者、食うべからず…それは俺の信念だからな。
困ってるからってさ、それは調子に乗って無計画に狩りを行なった代償であって…
困ってるってトコが、そもそもは自業自得なんだよね。
強制退去させたとて、いずれどこかで、同じ結果に陥るのは明白だ。
そのうち行き詰まって…かーらーのー?
気がつけば僕たち、盗賊まがいでした…って?
もうお約束の?
鉄板ルートだよな。殺処分一直線じゃんかね。
さてさて…一体どうしたもんか。
そのヨミは、鬼族らはアーマの劣等神族と、
同じ流れで生まれた種族だ…とか、そう言ってたが…
実のところ?あんま興味なかったらしく…特に気にして無かったらしい…
テメエ神のクセに、そりゃ怠慢じゃろがいっ!?…っと、一応つっこんだが、
「そうやってね、なんでもかんでも神にどーのこーの…以下略」
…みたいに?急にオコ気味に言い出したんで、
口にイカを突っ込んで…一旦放置して逃げた…
まあ…神のクセに…とは言え?
興味なかったのなら、そりゃ仕方が無いのかもね…だって、悲しいけど興味無いんだものね…
俺に…誰ぞの分厚い哲学書を読めって…そんな感じなんだろうね?うん無理。…知らんけど。
ん?
おお!もう起きたか?
鬼さんの隊長、気が付いたみたいだ。
すげえな…竜種並みに、驚きの回復力じゃんか。
じゃあ、一旦コソッと、様子を覗き見させて貰いましょうかね。
…
……!?うう…
…な、なにがどうなった?お、俺は…?
「ようやくお目覚か、アザゼル…」
そ、そうだ、あの男は?!
「アンタをブチのめしたあと、また来ると言って消えたよ。どこかに帰っていったんだと思うが…」
ま、また来るならば話しが早い…今度はわざわざ余興に付き合う必要など無い。
会うなり全員で囲んでしまえば良いのだ…
「アザゼルよ…アンタはのびてて見ちゃいねえがな、
あの男…まさかグリフォンと八咫烏を連れてたんだよ、あの…御伽噺の中の、神獣をな…」
は?…待て?なんだよそりゃ?
「ああ…そりゃ俺だって信じたくはねえが、この目で見たんだよ、
まさしくこの目の前でな…
勿論、幻影なんかじゃ無いぞ…殺気の余りの凄まじさで…一切生きた心地がしなかった。
…屈辱的だったが、このオレでさえ、全く…ビビって動けなかったのだからな…」
ならば、な、なぜ俺達は死んでねえんだよ?なんでこうして生きてるんだよっ?!
「服従か死だと…俺達に選べと言ってる…
言っとくがな、アレに勝てる見込みなんざ、全く無いぞ。ありゃ、俺達程度じゃ絶対に無理だ。
つまりだ、潔く死ぬか、命乞いをするか…悔しいが、俺達に出来る事は無い…本当にどちらか選ぶしか無いのだよ…」
マステマよ…お前程の戦士が…まさか、闘う前に諦めるのか?本気なのか?
「ああ…言っとくがあの男…ありゃホンモノの、桁違いなバケモノだ。
お前相手でさえ、ヘラヘラ笑って…ただの、お遊びだったんだぞ?
男が言ってた通りだ…いつでも…なんなら最初っから、俺達全員を殺せたんだろうさ…
ありゃ間違い無い…多分…いや…」
多分?…多分何だよ?
「男が…お前を殴る時にな…
腕に黒い炎をまとったんだよ…いや、目の前でお前も見ただろ?」
あ、ああ…見たな…
「ありゃ…絶対にヤベエやつだ…
あの炎、あれは危険だ…なんせ、あそこから死の匂いが立ち込めていたからな…
そうだ大昔…里の爺様連中が言ってたのを、あの時に思い出したんだよ…」
おい?待て待て…急に何を言い出すんだ?
「多分…いや、絶対に間違い無くだ…ありゃ、絶対に…軍神だぞ…」
はあ?…お前気でも触れたのか?
そんなもん、ただの御伽噺じゃねえかよっ!?
おい…よせよお前、な、何を急におかしな事を…
「漆黒の炎を纏いし破壊の権化…神獣を引き連れ、この世界に完全なる終焉を運びし、終末の荒神なり…何度も繰り返し聞いたんだ…何度も、何度も…」
だ、だからって、お前一体なにを…?
「今の今まで、戦で…喧嘩で負けるなんて、一度も俺の頭を掠めた事など無いんだよ、俺には無いんだ…
だがありゃな、アレは無理だ…俺達の理の外だよ…
そもそもだぞ?
あの男以前の問題なんだよ、
良いか?例えあのグリフォン一匹でさえ、間違い無く俺達にゃ荷が重いんだぞ?…」
…
……
おお?
ここのナンバーツーさんかな?イイね。
親分に、諦める説得をしてくれてるね。いい仕事しやがるね。一杯おごりたい気分ですよ?
うん、相当にありがたい、俺も楽で良いよ。
説得とかさ、あんま得意じゃ無いんだよね。もう、ぶん殴った方が早いもんね?
…ハッ?待て、
これって…ひょっとして、邪悪な発想なのか?
いや…だがしかし?
なんか、俺がどうこうするよりも、寧ろ良い方に向きそうだよね?
…そこはちょっと不満だが、
現実なんて、俺なんて所詮、そんなもんだよな…
うん、ここは任せよう。有能なナンバーツーさんに。
なので?
このままもうちょっと裏側で見とこうかな。
…
……
鬼族らの話し合いは、延々と、夜が明けるまで続いた。
当然、意見は真っ二つだった。
どのみち、食料を入手できねば死を待つのみ…
闘って生き残れれば、どこかで街でも襲って延命するか…果たしてそれだけの戦力が残るのか?
戦士らが死ねば、残った女子供では…
最早、小さい戦闘でさえも、ままならんであろう…
死にたいかと問われれば、死にたくは無いと、そう答えるが…
服従…一体どんな目に遭わされるのか…
我等はそもそも、恩よりも恨みの方が多そうだしな…
滅ぼす神の…その審判を仰げと?
ずっと闘って闘って闘って…そうやって生きてきた。
ここで全員、最後まで闘い、一族全員潔く散るのか?
軍神の軍門に下り…一族の未来を繋ぐのか?
この一族全員の未来、命運は、
長であるこの俺…アザゼルに託されたのだ。




