鬼退治 3
一仕事を終えて、俺達は地竜夫婦の元へと戻った。
夫婦はその一仕事の、一部始終をみていたらしく…
やはり?突如音楽からのエルボー…その流れが、良く分かって居なかった様だった…
コッチの世界では、タイマンで交互に殴りあうって、
漢のロマンの王道じゃないのかな?
残念だ。非常に残念なのだよ。誰かこの感動を、熱い心の昂りを…理解できないものかね?
まあ…いずれプロレスは世界に広めて行きたい。いや、いかねばならぬのだ…
今日俺は心に強く誓った。
さて、鬼の大将だが…
まあ、ありゃしばらく起きんだろ?
ここで呑気に待つくらいならさ、一旦帰って飯でも食おうぜ?
え?もう大丈夫だよ?
さっきの場所なら、もう秒で行けるから。
うーーーん…鈴木みのるがダメだったのかな?
素人には…ちょっと渋すぎ…だったかな?
ストロングスタイルで、相当にカッチョイイんだけどな。
もうちょっと…分かりやすいのって誰だろ?
オカダ?…いや、棚橋…違うな、
やはり内藤かな?うん、スターダスト良いよなって…いや待て、
チンタラ、チンタラしてると、その間に敵に逃げられる恐れも有るな…
やはり、イービルなのか?邪悪だけに…?
え?
いや、何でもないんですよご夫婦?
スイマセン、ただの独り言ですよ。
で、
地竜夫婦を引き連れ、商会へと戻った。
丁度、晩飯の準備が始まっていた。いいタイミングだったな。腹減ったし。
アズラとフィア…同族の、地竜夫婦のお相手を頼むぞ。
え?ああ、判った、愛の助っ人ミーシャちゃんだな?了解だ。
相変わらずの大人数だったが、やはり慣れてるだけあって、
寧ろこっちの方が落ち着く、まで有るよね。
だが…おい?何故かバカ王が俺の視界に入るのだが…気のせいかな?
「何を言うのだ竜王よ?待っておったのじゃぞ?」
…いや、王じゃねえし、頼んでねえんだが?
ふーーー、
まあ…飯が不味くなってもアレだ…今は許してやるが、テメ…騒いだら即ぶっ飛ばすかんな?
それにしてもジョンよ?
いや〜お前、めちゃめちゃかっこよかったぞ?タイミングも完ぺきじゃんか?
「ギュギュウウウウ…」
おお?そうかそうか、嬉しいか?よしよし、ワシャワシャしてやろう。
そしてこの、いいとこのグチャグチャを食うがいい。美味いぞ、知らんけど。ご褒美だぞ?
あ!しまった…スイマセン、つい…
それは僕らのお仕事だよ?っと…生き物係さんに怒られた。
…
……
無茶苦茶だ…強さの底がまるで見えぬとは…
アレはやはり異常だ。
あの鬼族の長は、歴代の鬼族の中でも、恐らく史上最強だとの呼び声も高い、
まさしく最強の鬼と評判だった者だ。
この男…その最強相手に、ただ遊んでいたのだ…
力の差が…いや、差なんてモノでは到底測れない、まさしく正真正銘のバケモノだった。
あの凶暴な鬼族が、あれだけの数居ても、
あのあと全く…鬼族は誰一人として、一切動けもしなかったのだからな…
もう異常だとしか、適当な言葉がない…アジが本能で逃げたというが…
それも最もだ。あんなものに関わったら、敵対すれば最後だ…
そもそも、竜種だって鬼族だって、規格外の強さが有ったはずだ…
実際、おいそれと敗北など…長い時間生きてきたが、その記憶にも無かった事だ…
それがどうだ…強さなど、最早比べようもないし、我等程度では、話にもならんとは。
アズラエールが笑いながら、卑下する様に言っていたが…
あの男からすれば、竜種も羽虫も、さして大差が無いと…
今ならまさしくそうなのだと判る、それを今日、改めて思い知った。
【深淵の破壊神】…イクサガミ…信じたくなかったが、もう疑う事も意味がない、なんせ我等のすぐ眼の前にいるのだからな。
更に…創造神の一柱、ツク=ヨミも目の前だった。
我等竜種が、本来見張るべき相手だが…その力は途轍もなく強大だと…実際に自身の目で見て確信した。
アレもまた、我等では決して御せない相手だと…
その創造神さえもが、敵対どころか、共存を素直に受け入れているという事実…
【深淵の破壊神】…この男は一体、この世界をどうするつもりなのか…
かつてそうした様に、この世の全てを、やはり無慈悲に破壊してしまうのか?
この男なら、それが容易く出来てしまう…危険度で言えば最早、神族の比では無い。
この世の生命の頂点、創造神さえもを滅する存在…
仮に…先代のニーズヘッグが存命だったなら、どうしたであろうか?
アズラエールから聞いたが、
彼が勝てなかった、剣の神と盾の神、
それらをやはりたった一撃で、事も無く滅したという。
今、我等の前にいる破壊の権化とも言える男は、笑顔を浮かべ皆と食事を楽しんでいる。
人間、獣人、創造神、そして竜種…
こんな顔ぶれが、横に並んで一緒に食事など…
ニーズヘッグが存命だったなら、こんな世界をすんなりと受け入れたであろうか?
彼は始祖だ。竜種の中でも、飛び抜けて賢しい…争いでは、力で男に勝つなど不可能だと、彼ならすぐに見抜くであろう。
ならば?
やはり共存…
破壊をもたらす神族の暴走は、この男の存在によって封じられた…
創造神が、敵対しない選択をしたのだ。
つまりこの男こそが、この世界に安定か、破滅のどちらかを齎す、非常に不安定な存在で有ると。
ならば我等竜種は、どうにか上手く立ち回って、
この男が破滅に向かって走り出すのを、
なんとかくい止めるべく動かねばならん…ニーズヘッグならば、絶対にそうする筈だ…
今のこの男の姿…
温和で悪意の欠片も無いこの状態を、
どうにか、上手く導かねばならん。
創造神も恐らく、同じ結論でここにいるのだろう。
これより竜種は、その在り方を全て変える時が来たのだ。
この世で、この世の破滅を望む者は多い。
そういった連中に、男を決して取り込ませてはいけない…
この世の安定…安寧の為に。




