マーオちゃんの旅 2
さあ、いよいよ着陸するぞ、ってタイミングだった。
眼下で作業中のヨミがぶっ倒れた?!
予想外すぎてかなりビビったが、
取り敢えず俺だけ先に、ヨミのとこまで一気に飛んだ…
「やあ…主…丁度今終わった…よ…」
薄っすらと目を開け、ヨミは笑っていた。
おい、大丈夫なのか?
「う~~ん、命にどうこうは無いけど、疲れてもう、動けないよ…」
どうも、相当にお疲れなのは間違い無さそうだ…
周りの奴らも、その場にヘタリこんでんな…
さて、まあ…終わったのならば、それはそれで良いんだが、このあと、どうすんだよ?
この…ヒルメはどうするんだ?
「…ちょっぴり休憩を…」
うーん、まあ良い。
椅子とテーブルを出したった。ほら、座れ。で、この茶でも飲めや…
「ああ…ありがたいね…頂く…よ…」
すっかり抜け殻みてえになってるけどよ、
お前、相当にヘロヘロだけど、おかしいだろ?ヒルメの力を奪ったんじゃねえのかよ?
「よっこら…しょ…っと…」
ヨミは起き上がり、ひとまず椅子に座って、お茶に手を伸ばす。
丁度そこに、九郎が降りてきた。
一旦ヨミは放置して、二人のちびっ子らを、九郎の背中から降ろしに向かう。
勿論、この瞬間も、例え背中越しでも、俺は油断などしない。
ミューも出て来た。
これで最悪の場合の、臨戦態勢も完了した。
ちびっ子らの周りには既に【深淵】バリア…おっと?深淵の輪舞曲も張っている。
じゃあ、取り敢えずマーオちゃんミーシャちゃんもお椅子で待っててくれるかな?そういって、ミューを子供らと一緒に移動させる。
俺はゆっくりと振り返り、改めてヨミをみるが、
完全に、グロッキー…に見えるな。
だが、そもそもコイツって、【深淵の破壊神】パイセンの敵対側…しかもそこのナンバー2なんだよな…
挙句?トップのヒルメが今、絶賛昏睡状態で、
弟くんは【煉獄】で監禁中…
つまり事実上、今こいつがアーマ軍の…神族のトップなのだ。
立場上?
状況次第では、敵対も有り得るのではと…俺はここに降りて以降、常に身構えてはいた…が、
その心配は…要らんのかも?っと、
ちょっと思い始めている。
なにせ、そのヨミが…すっかり腑抜けているからだ。
まるでホセ・メンドーサと闘った後の、真っ白な矢吹丈じゃねえかよ?ってくらい…
「う~~んとね、以前も話したと思うけども…魔力の波長が、我とヒルメでは全然違うんだよ…だから…またこれから作業して、波長を揃えたりしなきゃならなくってさ…」
ん?そうか…確かに、そんな事を聞いていた気もするな。
では、このヒルメはどうするんだ?落ち着かんのだが?
「ああ…そうだね、動かない方…そっちの分体だけ残して、本体は【深淵】に入れて貰って…」
そうか、判った。なら落ち着かないんで早速やるけど?
「ああ…お願い…」
ヨミにも周囲にも、違和感や敵意は感じないし、
ヨミの発言にも、嘘特有のひずみや濁りも、今のところは見えない…
なら、俺の因縁の相手…一応のラスボスを、さっさと始末するだけだ。
直ぐに【深淵】のひび割れから、ヒルメの本体を回収した…
その様子をヨミもじっと見つめている…
【深淵】に入ったヒルメの身体は…
なんと暫く、なんの変化も無かった…ちょっとビビった。
え?…
こんな事は初めてだったからな…まさか…これが罠か?っと、結構狼狽えてしまったが、
そこでようやく分解が始まった…良かった…
ヒルメも他と同様に、小さな光の粒になってゆっくりと消えていく…
直ぐに消えないのは多分…そもそもめっちゃ強いからなんだろうな…
狂っていなくて、分体も分けて無かったら、そもそも、この地上で最強の存在だもんな。
まあ…これで全ての元凶の大半は消滅しましたねと。
【深淵】から出ると、ヨミが聞いてきた。
「どうだった?」っと。
多少他よりも消えにくかったが、ちゃんと消えたよ。
「そっか、やっぱり深淵の力は絶大なんだね…」ちょっと言葉を含んでる様な気もしたが、
そりゃ当然だろ。伊達や酔狂で破壊神なんて、そんな物騒な名で呼ばれていたわけでは無いんだよ、うちのパイセンはな?
そう言っておいた。
このやり取りの間、マーオちゃんとミーシャちゃんはシャダ商会の試作アイスを絶賛味見中だった。
マーオちゃんは抹茶味(仮)を、ミーシャちゃんはあずき味(仮)を気にいったそうだ。
まあ…その両方が(仮)だった。今も改良が進められているのだ。
…あくまでも抹茶風…の味…と、小豆っぽいのを砂糖で煮込んだ、あの某小豆バーをイメージした…なんちゃって小豆バー…
うちの都合だが、どちらも他より余分に原材料費が掛かるやつで…
実は商会には、余りよい情報でも無い…まあ…別にどうでも良い情報だが…
だが…製品とは別に、うちのおやつ用に、生産と確保、
たった今、ここに決定した。
で…?
俺は遂に、因縁の宿敵を倒した…
…のだが?なんだろう、そこまでの実感…は、特に無かった。
このヒルメも、やがて復活するんだし、今度は真っ当な神様として、
いい仕事してくれるかな…っとか?
そんな期待を、俺は薄っすらと頭に浮かべていた。
でもまあ…いい区切りだよな、きっと。
これで一番デカい戦争は、多分終結した。
他の有象無象…周りの動きまでは一切知らんけど…
ただ、これで俺の行動範囲?には、そこそこ平和がやって来たんじゃなかろうか?
取り敢えず、冬ももうじき終わる…
再び、旅が始まるしな。
順調と言えば順調…?
まあ…二回も死んどいて、流石に順調は無いか…無いな…
あ!…死んだ…ってキーワードで今…
また思い出したけど…
そういえば、すっかり忘れていたけど、まだ俺の手元に有ったな…これも。
売るのもアレだし…どうしようか?
キモヘビの…といい、コレといい、
【深淵】って巨大な押し入れに、何でもかんでも入れるてると、ついつい忘れてしまうよな。
そうだな…そうそう、商会連合の件もあるし…
一段落とは言えだ。
どうやら俺は、まだまだ当分忙しい様だ…




