マーオちゃんの旅 1
さてさて、いよいよマーオちゃんの声を取り戻す旅が始まったな。
思えば…初めて会ったのは、あの洞窟の隠れ家だったっけな…
懐かしささえ有るな。あれからもう、随分と長く時間が経ったよな…
あの頃からずっと…いや、本人はそのずっとずっと前から、どれだけこの日を待ち焦がれていた事だろうか。
なんだか俺のほうが、相当緊張している気がするな…
で、現在。
絶賛飛行中ですね、お空の旅です。
絶対にビビると、そう思っていたのだが…
きっと怖いだろうと、ちびっ子らの前に【深淵】のひび割れをだして、そこから顔を出した。
安心させようと気遣ったつもりだったのだが、
ミーシャちゃんにハッキリと言われた。
お兄ちゃん、景色が見えないよ…邪魔だよ?と…ガーン…
流石に軽く凹んだ…
ただ、良かれと思っていただけだったのだが…そうですか、お邪魔でしたか…
なんでも最近聞かされたのだが…俺が【深淵】スノーパークに造った、通称、神様島ラージヒル…
ミーシャちゃんったら?いや、実はマーオちゃんまでもが?
もう何度も、あそこで飛んでるらしい…
そんなのもう、常識よねって…幼いギャル達に、急にそう言われたブルーなオッサン気分だった…
しかも、敢えて俺の留守中に…だと?!
いやまあ、確かにね、滑ろうとすれば、俺なら確実にとめるだろうとは思うが…
思うけども?
なので?
俺の不在時を狙って、小さい組さんらはこぞって飛ぶのだそうだ…
ひょっとして俺は、過保護過ぎたのだろうか?
幼児教育って一体なんだ?どおすりゃ良かったのだ?
何が正解なんだ?
…世間一般の親御さんらも、こんな瞬間にブチ当たってるのだろうか?
聞けば皆結構、当然小さい組さんも含め、
あのジャンプ台を普通に、当たり前に、何度も何度も飛んでるようだった…
勿論、取り巻く環境も有るだろうが、子どもの成長は速い…のかもな…
俺のガキの頃なら、ラージヒルどころか?もっとヤバい場所で…
そう、橋の欄干から遥か眼下、十メートル弱の河に向かって、何度もダイブしたり…いや、止めておこう…比較など虚しいだけだ。
だが?…そう考えれば、まあ、あの程度ならば別に?と、考えられなくも無いな…
しかしだ、割と無茶苦茶だった、ワイルドな幼少期の俺を基準にするってのもなあ…
うーん、だがもうこれは、ちびっ子らの認識を改めねばな…
流石にこの若さで、ちびっ子らから、老害などと…そう思われたくは無い…
そうなったらもう、俺は生きていけない気がする…
更にショックだったのが、実は九郎は勿論、ミューもジョンも知ってたらしいって事だった…何故内緒だったか?
きっと…いや絶対に俺が大騒ぎするだろうからだって。
…悔しいです、ちょっとショックです…だが、
俺に心配掛けたくないという、子供達の気持ちなのだと…
九郎からはそう慰められたが…うーん、ツラたんである…
まあ、そのおかげか?マーオちゃんもミーシャちゃんも、こんなに高所でも全然笑顔だった。
さっきから「すごいねえ~、たかいねえ〜、楽しいねええ…」を連発してる。キャッキャウフフ…である。
まあ…なんにせよこれで良かったのだと、そう思う事にしておく…
心に痛恨の一撃を受け、結構瀕死だった俺…
そこで?見かねたマーオちゃんが俺に気を使い…なんと頭をナデナデしてくれた…
まさか…こんな幼児に慰められようとは…
本気で泣きそうだったが、なんとか必死で耐えた。
そして、本日初の休憩にすべく、理想的な着陸ポイントを上空から探す。
飛行しながら、九郎がサーチをしてくれて、人気…いや獣っけの無さげな開けた場所に着陸した。
まずはトイレの設置だ。
【深淵】に、イサクの造った組み立て式のトイレを持参している。これが男の心意気ってもんだ。
そして、軽く水分補給や、おやつの提供をしておく。勿論、テーブルと椅子もセット済みである。
老害ではなく、出来る男だと…そう思って頂けたら、幸いです…
当然、周囲の警戒や索敵も抜かりは無い。
周囲…半径五十メートル以内には、たとえアリ一匹だって通しはしないぜ?
そこはもう、ミューの絶対攻撃範囲だしな…
この辺りはかなり温かい、多分、うちの島より大分、南方なのかな?
故にミューも久し振りに、外でウロウロしてる。
さあ、充分に休憩もしたんで、そろそろ出発。
いそいそとお片付け。っと言っても、【深淵】に入れるだけなんですけどね。
ドントンと、かつて通った場所も、見覚えのある場所も見えてきた。
なんなら、あのキモヘビ島も見えてるよな。
ん?…キモヘビ…そういやあ確か…まあ、それはまたで、今は良いな。余計な事は後回し、後回し。
アレも、ほんのちょっと前の事なんだが、もう随分と前に思えるよな、
その横には、あのアーリエーズのお宝島も見える。
で…シャダ商会の港も見えてきてる…俺達のこの船旅の、そもそも出発点でも有るし、イサクと会った場所でも有るな。
うーん、見てしまったらもう、シャダ商会が気になってきて…
急遽二回目の休憩を、シャダ商会でとることにした。
うーーん、他のことは気にしないつもりだったが、
まあ…休憩だから許して欲しい…こういうトコなんだろうな、俺…
そ、そうだ、ここで食い物も補充しよう。ヨミ用と、島のちびっ子用に。
アイスの試作も食えるだろうし、そう考えると(※無理矢理)、
これはこれで?良い寄り道な気がするよね?…ね?
で、シャダ商会到着。
急に広場に巨大な九郎が降りたせいで、周囲は結構な騒ぎだったが、
全員が全員?
何故か俺の姿を見た途端に?急に騒ぎが収まった。
「ああー…」
ああ、なんだ会長かよ?なら仕方無いよな…的な?
謎な空気で納得された…何故だ?全く解せんな…
今日は客が居るんだ、そう言うと、社内が一斉に接待モードと化した…
なんか、妙に手慣れてやがる…これも密かに練習したのか?
ミーシャちゃんは、海賊とうちの島以外の経験がほぼ無いらしく…まあそりゃそうだろうな。
商会の中とか、かなり興味津々の様だったので、
急遽、社内ツアーを敢行した。案内はシャダが自ら…忙しいのにスマン…
エーリアーズなんかの獣人も、随分見慣れているせいか、
強面のシャダらを見ても、怖がる素振りも一切無い…
顔面凶器と俺が呼んでる、あの番頭の顔さえ、特に問題無いとは…
寧ろ番頭…お前…なんか、良かったな。頑張って笑顔の練習したもんな…なんか、おめでとう…知らんけど…
ついでに孤児院にも顔をだして、ココのちびっ子らと一緒に、仲良くおやつも食べたりした。
良い思い出になったようで、何よりだったな…
ついでに?
シャダからそっと耳打ちされた。
「全てが順調です…そして例の石、ありゃ、どうやらとんでもない価値があるようですぜ…」っと。
ほお?そりゃ僥倖だな。
頑張って集めた甲斐が有ったってもんだよな。
じゃあ、残りの石も預けとくわ。よろしく頼むな。
「お任せを…」
そこから、シャダ商会の…まさか全従業員一同ら一斉の、盛大なお見送りを受け…
これ一体何事だよ?って感じの大きな騒ぎだが…
正直ちょっぴり恥ずかしいですが…
まあ、良い思い出だよな…知らんけど…
さあもうすぐだぞ、
いよいよヨミの居る砦まであと少し…ぶっちゃけ緊張してきた。
とにかく、こっからは一切油断大敵だ、
無いとは思うが…いや思いたいが…
最悪、ヨミの裏切りさえも警戒しつつ、
当然、ミューと九郎には、マーオちゃんミーシャちゃんの命が最優先だと、強く命じた。
そして俺達は、目指す砦の見える位置までやって来たのだった。




