イッカーとタッコー 6
戦いは乱戦になる。
相手の数が私達より多いから仕方ない。けど、この数相手の戦いは初めてかもしれない。
けど、タッコー相手の戦いはもう何度か経験している。少し数が多くても、どうにかなるのではないか。
「タコー!」
そう思っていると、川にいるままのママタッコーが水魔法をたくさん飛ばしてきた。
ちょっと、これはまずいかも!
「にゃー!」
(火魔法!)
「ピー!」
(木魔法!)
「ギャウ!」
(くらえ!)
でも、皆も応戦している。回避しながらだから、勢いはあまりないけど、どうやら効いているみたいだ。
どうやら、一方的にやられる展開ではないようだ。それならやっぱり、このまま粘ってみるべき?
魔法や矢に当たったタッコーが何体か川に落ち、数が減る。そのまま、3体のタッコーと、チチタッコーと思わしき大きなタコが地上にまで来た。
ここからは、川から放たれる水魔法をしのぎながら接近戦だ。状況はまだきびしいが、なんとかしてみよう。
「皆、大きいタッコーを狙って。私が小物を叩く!」
「にゃー!」
(わかったぜー!)
「キュー!」
(二リハ、気を付けて!)
「ピー!」
(皆、やるわよ!)
「ギャウ!」
(大盤振る舞いだぜ!)
ママタッコーはママイッカーよりも攻撃力と防御力が高いらしい。チチタッコーもきっと同じようなものだろう。接近戦は最終手段だ。
皆が攻撃を開始すると、チチタッコーは予想通り私から注意をそらした。この隙に周りの小さいのを片付けよう。
「ショットスラッシュ!」
攻撃を飛ばしながら、タッコーに近づく。まだ倒しきれないが、その一体はこちらに狙いを定めた。
「タコー!」
そしてタッコーがそう叫ぶと、他の二体のタッコーも私を睨む。これは、狙いをつけられたか。望むところ。良い流れね。
タッコー達はある程度近づくと、目の前に大きな水の玉を生み出した。それを、高速で私に放つ。
咄嗟に盾で受けるも、守る範囲が狭すぎて腹や腕に水がぶつかった。
その衝撃でふっとばされる。けど、なんとかふんばる。足には衝撃が無かったけど、ああ、今足は水除けの靴を履いているものね。きっと水が勝手に避けていったんだ。流石、高かっただけはある。
盾を下げると、近づいてきていたタッコーが3体同時に襲いかかってきた。ひとまず囲まれないように動きながら、内一体を狙う。
「パワーアップ、ゲイザースラッシュ!」
八本ある足ごと、胴体を切り裂いた。これで一体倒れる。
残り二体の攻撃を受けるも、盾と鎧で凌ぐ。相手の攻撃の手数が多いけど、打撃だけならなんとか耐えられた。盾と鎧のおかげだ。
「ツヴァイブレード!」
がむしゃらに剣を振ると、うまい具合にショットスラッシュを受けていたタッコーを撃沈させた。これで残り一体だ。
「タコー!」
あと一息というところで、川からママタッコーの水魔法連発が私に襲いかかる。
更に目の前にいるタッコーからも攻撃を受け、私は防戦一方になる。
水魔法は盾と靴が無効化してくれるが、それ以外のところはどうしようもない。更にタッコーの連続攻撃も受け続けると厄介だ。
咄嗟に剣を振ることもできなかった。でも、この状況を切り抜けるにはなんとか攻撃するしかない。
「ゲイザースラッシュ!」
苦し紛れの攻撃は、あっさりとかわされた。
タッコーも私からの反撃を警戒していたらしい。あっちは2対1な分余裕があったのだ。
くそ、これじゃあ倒せない。最悪の場合、負けるかも。
そう思った時、タッコーの後ろにシャインが現れた。
「キュー!」
(くらえー!)
シャインがタッコーに飛び蹴りを当てる。
「タコ!」
するとタッコーは、反射的にシャインの方を見た。
今だ!
水魔法をしっかり防ぎつつ、踏み込む。
「パワーアップ、ツヴァイブレード!」
私の剣はしっかりタッコーを捉え、両断した。
「ありがとう、シャイン!」
「キュー!」
(二リハ、テムがまずい!)
「えっ」
急いで周りを見てみると、テムがチチタッコーに捕らえられていた。その周囲には、いろんな武器や、壺や携帯コンロ等のアイテムも転がっている。
そして目の前で、テムがチチタッコーの足にしめつけられ、握りつぶされた。
ボキバキゴキッと、音が聞こえた。
「ギャウッ」
(ぐえっ)
「にゃー!」
(やめろー!)
「サポートガード!」
気がついたら、走っていた。
まっすぐ近づいて、チチタッコーに全力の一撃を叩き込む。
「パワーアップ、ゲイザースラッシュ!」
チチタッコーの側頭部に傷がついた。けど、それだけ。
「タコー!」
チチタッコーはテムを放り上げると、今度は私を足で捕まえた。
私は逃げられない。抗おうとしたけど、予想以上の力で拘束される。
くそ。
くそ、くそ。
チチタッコーも5ランクのモンスターだ。
攻撃力と防御力が高いインファイター。加えて攻撃に使える足の数も多い。けど、それがこんなにも強いなんて。
正直、なめていたのかもしれない。自分たちならきっと大丈夫だと、根拠のない自信をもっていたせいだ。
でも。
それと、全てを諦めるのとは、別!
私はまだ、こんなところでやられたくない!
そして、何より。
「よくも、テムを!」
私の怒りは、まだ恐怖を上回っている!
その時、私はこのタイミングで、新たな力を得るのを感じた。
「シールドショック!」
私の体中の骨が折られる前に、魔法の盾から波動が放たれる。
それはチチタッコーを震わせ、拘束を一瞬だけ緩めた。
剣が動かせるなら、こっちのものだ。
もう1つの新たな力、私はこれに賭ける!
「ファングソード!」
私の剣は黄色と赤の光を放ち、チチタッコーの顔を深く切り裂いた。
直後、チチタッコーが完全に動きを止める。
やった。
やった、はず!
「タコー!」
まだ川のママタッコーが水魔法を放ってくる。く、これが5ランクモンスターの力。
私達だけじゃまだ、足りなかったか。
悔しいけど、これが今の私達の実力だ。
「キュー!」
(二リハ。ミドリとテムの回復終わりました!)
まさか、ミドリもやられていたのか。
「よし。テム、チチタッコーをしまえる?」
「ギャウ!」
(やってやるぜ!)
チチタッコーはすぐにしまわれる。後は、ママタッコーに気をつけるだけね!
「皆、まだ戦える?」
「にゃー!」
(もう魔法使えねえ!)
「ピー!」
(私じゃダメージを与えられないわ!)
「ギャウ!」
(俺のも効かなかった!)
「じゃあ、逃げるわよ!」
私も、もう体力がほとんどない。これ以上戦うのは不可能だ。
「キュー!」
(わかりました!)
「ギャウ!」
(待て。出したもの持ってく!)
「早くして!」
「ピー!」
(私が注意を引き付けてあげるわ!)
私達はなんとか、ママタッコーから逃げた。
今回の戦いは、最初から最後まで危なかった。
私達の限界はこの程度だと、思い知らされる。
けれど、同時に強く思った。
やっぱり、皆と一緒なら、やっていける。
誰かが欠けるかもしれないのは怖いけど、皆の力があれば、5ランクのモンスターとも互角近く戦える。
後は、更に強くなるのみ。
それも、ここでならママタッコーという丁度いい相手とも戦える。死ぬかもしれないのは怖いけど、その程度じゃ、旅をやめる理由にはならない。
皆がいる限り、挑戦し続けよう。
それを皆も認めてくれるなら、私の仲間は、何者よりも頼もしい。




