イッカーとタッコー 5
朝、目が覚めた。
「皆、おはよう」
「にゃあ」
(むにゃむにゃ)
「キュー」
(おはようございます、二リハ)
「ピー」
(すやすや)
「ギャウ」
(暇だな)
「うん。ちょっと待っててね。まずは朝ご飯作る」
モエルとミドリはまだ寝てるか。まあまだ出発ではないし、できるだけ寝かせてあげよう。
昨日の内に買い置きの野菜は使い切った。なので今は、昨日手に入れたイッカーの肉を焼くだけだ。
それでも塩をさっとかけるだけで美味しいので、干し肉よりは良い。やっぱり食材の鮮度って大事ね。
「にゃあ!」
(飯の匂いがする!)
「ピー!」
(ごはんね!)
食いしん坊達も起きたみたいだ。それじゃあ熱い内に食べてしまおう。
「二リハ、俺達はもう行くから」
「町に戻ったら今度もまたお話しましょう」
「ああ、ええ、行ってらっしゃい」
ママイッカー狩りの冒険者達はイッカーを生のまま食べて素早く出発した。
ここではイッカーという食材があるから、保存食を食べるという習慣が無いらしい。しかも、イッカーも生で食べれるとか。
そういえば、刺し身も食べたものね。私も次は生で食べてみましょう。
少し剣の素振りをしてから、私達も出発する。
けれど道なりに進まずに、草原の中を歩く。先に行った冒険者達と会わないようにする工夫だ。
少し気を使いすぎかもしれないけど、また見つかっただけでいらぬ勘違いをさせるかもしれないしね。ここでは私が新参者だし、注意しよう。
イッカーと、それからタッコーもたまに倒しつつ、草原を歩く。すると、やがて目の前に大きな川が現れた。
「大きい。ここにママイッカーがいるのね」
そして、今のところまだママイッカーの姿は見えない。少し探さないと駄目か。
「ミドリは川の上を見て回って」
「ピー!」
(わかったわ!)
一応外れた道から更に遠ざかるように歩く。こっちは上流ね。きっと、私達も一体くらいママイッカーと出会えても不思議じゃないはず。
というか、ママイッカーって結構いるのよね?
いてくれたら良いなー。と思いながら歩いていると、川から上空にいるミドリめがけて水の玉が発射された。
「ピー!」
(敵よ!)
どうやらそのようだ。
「ミドリ、こっちに誘導して!」
「ピー!」
(わかったわ!)
ミドリがこちらへ戻って来ると、その間にも川から水が発射され続け、やがて上半分だけこちらを狙う者の姿が出てきた。
白い体に、顔が少しだけ紫色だ。何より、イッカーと同じ見た目。
少し遠めだけど、かなり大きい。たぶんあれがママイッカーだ。
ママイッカーが私達にも気づき、こちらにも水の玉を発射してくる。
「にゃあ!」
(やったな!)
モエルは余裕で回避。それどころか火魔法で反撃する。
私は魔法の盾で防御。その衝撃は無いも同然で、盾にぶつかった水はあっけなく消滅する。やはり魔法だったか。
「キュー!」
(このくらいならへっちゃらです!)
「ギャウ、ギャウ!」
(おっと、おおっと!)
シャインも難なく回避。ただテムだけ動きが危ない。
テムは回避は苦手か。ひとまず、こちらも反撃だ。
「ショットスラッシュ!」
飛ぶ斬撃を相手に当てる。するとママイッカーから青い液体が噴き出した。
私の攻撃も通じるし、当たる。これなら、苦戦は無さそうね。
テムに攻撃があまりいかないようにもするため、そのままショットスラッシュを続けて放った。
すると、ママイッカーは水の中へ消えた。
「えっ」
川の中に逃げられたら、追えないじゃない!
「ピー!」
(木魔法!)
そんな時、ミドリが枝の針を水面に打ち込んだ。
その枝には、魔法で出来たツルがついていた。それがどんどん伸びていき、そのツルを出しているミドリが私達の元まで戻ってくる。
「ピー!」
(獲物はこれにつながってるわ、引っ張って!)
「流石ミドリ、ナイス!」
凄いぞミドリ。これなら逃さない。
「にゃー!」
(うおー!)
「キュー!」
(それー!)
「ふうーん!」
モエルとシャインと私はミドリのツルを引っ張る。ふたりは口にくわえてだ。
でもすぐに体は引っ張られ、どんどん川にひきずりこまれそうになる。
凄い力、なんとかして!
「テム、ミドリ、なんとかー!」
思わず手を放そうか悩んでいると、テムのつづらが開いて、その中にツルが途中から引っ張られていった。
「ギャウ!」
(吸い込むなら任せろ!)
そう言うテムのつづらの中に、ツルがどんどん入っていく。
「流石テム、でかした!」
「にゃあ!」
(よくやった新入り!)
「キュー!」
(でかしたです!)
「ギャウ!」
(へへへ。だが俺は今吸い込んでるから、つづらから出す攻撃はできねえ。後は任せたぞ、お前ら!)
「わかったわ。ママイッカーが川から出てきたら、とどめを刺す」
その時は、すぐに来た。
「イカー!」
ここまで引っ張られて怒りまくっているママイッカーに、私は全力の一撃を与える。
「パワーアップ、ゲイザースラッシュ!」
「イーカー!」
これで、ママイッカーは倒れた。
「にゃー!」
(やったぜ!)
「キュー!」
(大物だー!)
「ピー!」
(きっと美味しいわ!)
「ギャウ!」
(よし、早速つづらにいれるぜ!)
「皆、ありがとう。モエル、最後のとどめを譲ってくれてありがとうね」
イッカーは刺し身として食べれたし売れたのだから、ママイッカーも当然そうであるはずだ。
ここは焼かずに、生で新鮮な内に持って帰ろう。
「よし。それじゃあ今日はもう」
帰ろうとしたところで、川から新たなモンスターが現れた。
「タッコー!」
「タコー!」
「タコー!」
赤いタッコーがこちらを見ると、その周辺から次々とタッコーが現れ、襲いかかってきた。
「タッコー!」
しかも、やけにでかいのも2体いる!
ええっと、どうする、私!
「皆、ここは」
「にゃー!」
(あいつらも倒すぜー!)
「キュー!」
(わかりましたー!)
「ピー!」
(まだまた取るわ!)
「ギャウ!」
(もっと収納してやるぜ!)
そうね。今は余力もある。皆の戦意も高い。ならここは、戦ってみるべきか。
それに、相手がママタッコーであるなら、5ランクの相手。こちらとしても願ったりかなったりだ。
「皆、もう少し引いて!」
私は戦場を地上にするべく後ずさりながら、剣と盾を油断なく構えた。




