イッカーとタッコー 7
「にゃあー」
(くそ、あいつめ。次会ったら絶対倒してやる)
「キュー!」
(もうちょっとでしたね。まだ魔力があればいけたのに!)
「ピー!」
(私も、どうにかして倒したいわ。全然攻撃が通らなかったもの!)
「ギャウ」
(俺の攻撃も、全然効いてなかったな。くそ、硬いやつだったぜ)
「皆。またあいつらと戦うとしたら、またやる気になってくれる?」
「にゃー!」
(当たり前だ!)
「キュー!」
(皆のいるところにボクありです!)
「ピー!」
(一人だけ逃げるなんてできないわ!)
「ギャウ!」
(一体倒せたんだ。なら次も倒せるぜ!)
「皆、ありがとう」
もうモエル達はリベンジに燃えている。まあ、チチタッコーは倒したから痛み分けとも言えるんだけど、逃げ帰ったのは私達なのよね。
でも、今回はもう町に戻ることにする。目的はママイッカーだったしね。ひとまず依頼達成のために戻ろう。
「ひとまず、一度町に戻りましょう。あのモンスターとはまた戦いたいけど、それはまた今度ね」
「にゃあ!」
(わかったぜ!)
「キュー!」
(その間にしっかり魔力を回復しておきましょう!)
「ピー!」
(美味しいものも食べなきゃね!)
「ギャウ!」
(あいつらに通用しそうな物が欲しいぜ!)
うーん。
ママタッコー、チチタッコーに通用しそうなアイテムか。
それも探してみるかな。そうすればテムが強くもなるし。
「うん、皆。しっかり休もうね」
ひとまず、旅の宿に戻った。
まだ明るいうちに旅の宿に着く。川は結構近かったから、明日の朝まで結構時間があるわね。
宿の主人に顔を見せると、彼は笑顔で迎えてくれた。
「おう。どうやら生きて帰ってきたようだな」
「ええ。なんとかね。ひとまず、宿泊代を出すわ」
「いや、それはいいや。昨日飯を食わせてもらったからな。それでチャラだ」
「ありがとう」
「どうせ大した代金でもないしな。だが、せっかくだから今夜もまた作ってくれないか?」
「ええ。いいわよ。といっても、野菜はもう無いけど」
「そうか。だが、生のイッカーじゃなければなんでもいい。そうだな、イッカーのスープとか作ってくれよ。食感が違えばなんでもいいからさ」
「わかったわ。じゃあ、今夜はそれにする。作ってほしくなったら言って。しばらくは休んでるわ」
「ああ。頼むよ」
私達はしばらく旅の宿でくつろいだ。モエル達をなでてゆっくりする。
そうしてると、宿の主人がこちらに来た。
「どうせ暇なんだ。何か話でもしようぜ」
「ええ、いいわ。そういえば、チチタッコーってどれくらい価値があるの?」
「チチタッコーって、まさか会ったのか?」
「ええ。ママイッカーを倒したら、すぐに現れて。ママタッコーからは逃げ出したけど」
私がそう言うと、宿の主人はマジマジと見つめてきた。
「ママイッカーを倒した?」
「ええ」
「ほう。そりゃあ、すげえな」
宿の主人は一度うなずくと、納得した顔になった。
「そのママイッカー、仲間がいなかっただろ」
「え。あ、そういえば、チチイッカーやロイヤルイッカーも一緒に出るんだっけ」
すっかり忘れていた。
「ママイッカーとママタッコーはな、縄張り争いをするんだ。だからたまに、負けたママイッカーが仲間を失って逃げている場面に出くわすことがある」
「なるほど。ママタッコーが負けることはあるの?」
「基本無いな。ママタッコーの方が強いから。だがママイッカーは数が多くてな。それで均衡を保ってる感じかな。とにかく、負けたママイッカーを追うママタッコーがいるのは珍しくない。だから、一体だけママイッカーを見つけたら、逆にピンチだな。ママタッコーがついてきているかもしれないから、その場は退くに限る」
「なるほど。でも、私達にとってはそれは好都合だったわね」
「というと?」
「今は皆、ママタッコーのリベンジに燃えているの。チチタッコー、だと思うのは倒したけど、その時にはもう、皆の状態が悪くて、結局逃げ帰ってきたわけ。でも次は、ママタッコーも倒したいわ」
「チチタッコーを倒した?」
宿の主人が驚いた。
「それは凄いな。二リハは5ランクだったのか」
「いいえ、4ランクよ。でも、今ランクを上げてるの。旅を続けるなら、強くなった方が良いし」
「そうか」
宿の主人はまたうなずく。
「でもそうすると、ロイヤルタッコーは?」
「ええと、他にもいたタッコーは、倒したけど。あれがロイヤルタッコーだったのね」
「見分けは目の上の白い模様らしいな。眉毛みたいに見えるから、見ればすぐわかると思うが」
「ええっと、ちょっと待って。テム、今日倒したタッコーを一体出して」
「ギャウ!」
(わかったぜ!)
テムに倒したタッコーを出してもらう。するとたしかに、眉毛みたいな模様があった。
「そういえば、こいつも水魔法を使ってきたわね」
「おお、逃げた割には、素材もちゃんと持ち帰れてるじゃないか!」
「ええ。それはテムのおかげね」
テムはつづらに吸い込むだけで収納できるから、ああいう場面でもしっかり仕事をしてしまう凄い子だ。
「ということは、チチタッコーも?」
「ええ。テムが持ってるわよ」
「凄いな。いやしかし、今はロイヤルタッコーだ」
宿の主人はロイヤルタッコーを見て言った。
「二リハ、ロイヤルタッコーはタッコーよりも一段階美味いんだ。せっかくだから、刺し身で食べてみないか?」
「え?」
「ああ、もちろん売りたいならそれで構わない。もともと二リハのものだしな。だが、そういう情報を売ったということでさ、な。今晩はロイヤルタッコーを食べてもいいだろ?」
まあ、確かにそれも悪くはない。ママイッカーの討伐報酬も入る予定だし、今お金の心配はない。
それに、美味しいのだとしたら、まあ、皆にも食べさせてあげた方が良いかな?
「わかったわ。じゃあ、今晩はロイヤルタッコーを食べましょう」
「やったぜ!」
宿の主人は喜んだ。
「あ、ちなみに、ママイッカーとママタッコーは食べれないの?」
「なんでも、時間を置かないと肉が柔らかくならないらしい。どっちも数日おかないと食べれないそうだ」
「へえ」
まあ、日持ちしていいかな?
素材センターで、ちょっとママイッカーの肉とママタッコーの肉を手元に残してもらおう。
それから少し話をした後、息抜きに宿の主人と模擬試合をした。
結果は私の連勝。模擬試合をした後、宿の主人が言った。
「やっぱり強いな、チチタッコーを倒せるレベルは。ありがとう。参考になったよ」
ママイッカーを倒した冒険者達が戻ってきたところで、模擬試合を終える。
「にゃー!」
(それそれー!)
「ギャウー!」
(このおー!)
でもモエル達が私達を見て真似始めたじゃれあいがまだ続いて、私は夕ご飯を作り始めるまでそれを見守った。
モエル達はもうすっかり和やかモードだ。いや、リベンジに向けて体を動かしているのかも。
私は仲良くしているモエル達を見守ってから、ロイヤルタッコーの刺し身を作りにかかった。
ややぶつ切りのそれは、塩しかつけられなかったけど、確かに美味しかった。
今度からはちゃんとショウユーを買っておくとしよう。




