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初めての毒

「嬢ちゃん、大丈夫か!」

 意識が朦朧とする。今の声は、ええと、シャスデリ?

「シャス、デリ」

「息も絶え絶えじゃないか。それに、こっちの猫とたぬきも」

 ひとまず剣をしまおうとするも、上手く力が入らず落としてしまった。

 拾おうとして、そのまま地面に手をつく。

「これは、くっ」

「おいおい、ひょっとしてこれは、毒か?」

「毒?」

「さっきあいつからやばそうなものを食らっていただろう。おい、しっかりしろ!」

「キュー!」

(回復魔法!)

 あ、少し体が軽くなった。

 でも、まだ、全然、気分が悪い。

「あり、がとう。シャイン」

「キュー!」

(駄目です。やっぱりボクの力じゃ、回復しきれない!)

 これは、まずい。

 敵は倒せたけど、今のままじゃまともに戦えないわ。

「二リハ、解毒薬とかは持ってないか?」

「解毒。持ってない」

 こんな時に、自分の不用心さが身にしみる。

 毒を使うモンスターもいるって、わかっていたはずなのに。

「くそ、このままじゃまずいぞ。おい、ウサギ。どうにかして毒を消せないか?」

「キュ?」

(消すって、どうやってやるんですか?)

「お前は病気も治せただろう。なんとかできないか?」

「キュー、キュー」

(でも、ボクの力じゃ何も、うっ)

「お、おい、ウサギ!」

 見ると、シャインも倒れた。

 そんな、シャインも毒にやられていたの?

「そうか。こいつも猫を背負った拍子に、毒が感染って、まずいな」

「ピー!」

(皆、しっかりして!)

「シャス、デリ」

「ああ、なんだ、二リハ」

「もし、このまま私達が立てなかったら、一人で、ううん、ミドリと逃げて」

「うっ」

「ミドリも、お願いね。シャスデリを、せめて、次の村まで送り届けてあげて」

「ピー!」

(嫌よ、二リハ達も行くの!)

「そうだ。村だ。おい、鳥。村まで飛んで、助けを呼んできてくれ。きっと解毒薬があるはずだ!」

「ピー?」

(助けって、そんなのいるの?)

「今手紙を書く。足にくくりつけるからな。短い文だが、伝わるはずだ」

「あり、がとう。シャスデリ」

「ああ、俺はここに残る。どうせ一人で進んでもモンスターには勝てないからな。ここにいても変わらないかもしれないが、お前たちにできることはする。なんでもいい、何か言ってくれ。水くらいなら飲ませられるぞ」

 み、水。

「じゃ、じゃあ、まずは、テントを。テムが、持ってる」

「わかった」

 私達が動けないでいる間、シャスデリはいろいろしてくれた。

 テムに出してもらったテントを張って、モエル達をタオルでくるんでテントに入れて、私もタオルで全体を拭かれてからテントに運ばれた。毒まみれの盾は、流石にその場に置いたけど。

 テントの中は、風が無くて少し温かかった。外で倒れているよりは、いくらかマシだ。夜になったら、更に寒くなるだろうし。

 でも、体調はだんだん悪くなっている。熱いのと寒いのがさらに酷くなってきた。

 このまま、私、終わっちゃうのかな。

 嫌なことを想像した。でも、悔しくなれないくらい、気分が悪い。

 毒が、体の動きと思考を奪っていく。

 私は、ちょっと思った。

 もし、ポリシャに耐毒のネックレスを渡していなければ、少なくとも私は大丈夫だったかなって。

 そんなこと、今更だ。


「にゃー」

(く、動けねえ)

「キュー」

(苦しいですう)

「ギャウ」

(立てねえ)

 皆、苦しんでいる。

 まさか、こんな旅になるなんて。

 今まで順調だったから、油断した。

 しかも、皆を巻き込んで。

 これじゃあ私、皆の仲間失格だ。

「ごめ、んね。私の、せいで」

「にゃああーっ」

(うおお、俺のせいで二リハがっ)

「キューっ」

(ボクが不甲斐ないせいで、皆がっ)

「ギャウ」

(くうう、情けねえっ)

 苦しい、辛い。動けない。

 でもそれ以上に、皆が私と同じくらい、弱っている。

 それが、とんでもなく、悲しい。

「キューっ」

(これを、治すんですっ)

「にゃあああっ」

(そうだ。シャイン。なんとかしろっ)

「ギャウっ」

(できんのかっ)

「にゃああーっ」

(俺らを治せるとしたら、お前しかいねえ!)

「キュー!」

(傷でも、病気でもない、これを。ボクが、治すんです!)

「シャイン。頑張って。あなたの力は、きっと。皆を元気にする、最高の力だから」

 正直、そんなことは半分も思っていなかったと思う。

 どんな力にも、限界はある。私達の力なんて、特にそうだ。

 そしてシャインには、今のわたしたちを元気にする力はない。

 そう思っていても、でも、自然と私はそう言っていた。

 一瞬だけでも、励ましたかった。

 生きることを諦めるなんて、したくなかった。

 最後まで、皆を信じていたかった。

 だから、そう言っただけ。

「キュー!」

(はああああ!)

 なのに。

「キュー!」

(解毒魔法!)

 シャインはここで、立った。

 立ち上がった。

「キュー!」

(元気、復活、さあ、皆!)

「しゃ、いん?」

(これで元気になれです、解毒魔法ー!)

 そのたった一言と、奇跡みたいな魔法で、私達はたちまち元気になった。

 あれだけ私達を苦しめていた毒が、もうきれいさっぱり消えている。

「治った」

「にゃー!」

(よし、立てるぜー!)

「ギャウ!」

(おっしゃあ、治ったー!)

「キュー!」

(良かったです、皆ー!)

「シャイン、ありがとう!」

 私はすぐに起きて、皆を抱きしめる。

「すぐに、ここを発ちましょう!」

 やっぱり、私の仲間は凄い。

 私達はすぐにテントを出た。


 どうやら、いつの間にか大分時間が経っていたらしい。

 テントの外には、倒れているワンドッグ三体と、傷だらけになっているシャスデリの姿があった。

「シャスデリ!」

「よお、起きたか。剣、借りたぞ」

「シャイン、すぐ回復してあげて!」

「キュー!」

(了解、回復魔法!)

「おお、痛みが消えていく。凄いもんだな。やっぱり、お前たちは」

「ありがとう。シャスデリ。私達のために」

「いや、いいんだ。俺は十分、お前たちに守ってもらったからな。これはほんの少しの、恩返しだ」

「助かったわ。あなたがいてくれなかったら、私達はもう死んでた」

「よし。それじゃあ生きて、動けるなら、行こう。日は暮れ始めたが、宿屋には着きたいだろう」

「そうね。テントは毒を受けた私達が寝ていたから、もう使いたくないし、それに心もとないし」

「ああ、だが、飯は今食っておくか。実は、旅を始めた時から携帯コンロを持っていたんだ。今まで使う機会が無かったが、ちょうどいい。使える時に使っておこう」

「ええ。ありがとう。シャスデリ」

「はは。まあ、今はしっかり食え。今日は多めに作ってやる。ああそれとも、逆に少なめがいいか?」

「ええと、そうね。じゃあ、いつもと同じくらいで」

「ああ、わかった」

「ピー!」

(皆ー、手紙渡してきたわー!)

「お、薪も来たぜ。それじゃあ早速取り掛かるか」

 私達はこうして、少し早めの夕ご飯を食べて、そして旅の宿に着くまで歩き通した。

 今日を無事に過ごせたのは、シャインのおかげだ。シャイン、本当にありがとう。


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