5ランクモンスター
道の途中で、数人の男達と出会った。
「お前たち、ここを通っている時に毒に苦しんでいる冒険者を見なかったか?」
先頭の男にそう言われる。
「あ、それ私達です。大丈夫、もう治りました」
「何?」
「ミドリの手紙を見てくれたんですね。ありがとうございます」
そう言うと、男たちは私達を見つめた。
「にゃあ」
(なんだこいつら)
「お前たち、本当に毒にやられていたのか?」
「本当ですよ。でもこっちのシャインが解毒魔法を覚えて、治してくれたんです」
「キュー!」
(そう、ボクのおかげですよ!)
「俺も保証する。というか、手紙を書いたのは俺なんだ」
「証拠はあるのか?」
「あ、えーっと。倒したモンスターは運んでます。村に着けば、ギルドで有毒モンスターだってわかると思います」
「どうやって運んでるんだ」
「このテムが、収納魔法を使えるんです。テム、つづらから、あの毒のモンスターを出して」
「ギャウ!」
(わかったぜ!)
テムはつづらから倒したモンスターを出した。
「おお」
「本当にモンスターが出てきた」
男達は皆驚いている。けど先頭の男だけは、驚きつつもモンスターを見て訝しむ。
「知らないモンスターだ。お前たちは知っているか?」
「いえ。私も知りません。けど、戦った強さから察するに、4ランクか、もしかしたら5ランクのモンスターです」
「5、5ランク!」
「って、強いのか?」
「当たり前だろう、俺のランクは3だ!」
先頭の男がそう言うと、男たちはうろたえる。
「ビャ、ビャッケより強いんじゃ、村はどうなる!」
「もしかしたら、危ないんじゃないか?」
「ですがモンスターは見ての通り、倒しました。ひとまずは、安心では?」
私がそう言うと、男たちは静まった。
「ああ、確かに。モンスターは、もう倒されたんだな」
「じゃあ、大丈夫だろう、きっと」
「お前、名前とランク、あとパーティ名は?」
「二リハです。ランクは4。パーティ名はありません」
「ん、じゃあ、護衛か。俺はビャッケ。この先の村、ロントの冒険者だ。よろしく」
「よろしく」
「ひとまず、救助が要らなくなったのはわかった。俺達も引き上げる」
「あ、はい」
「こっちのやつらは戦えないやつらでな。毒でやられたやつを担架で運ぶ係だったんだ。どうせもう急ぎの用は無いんだし、一緒に村へ行こう」
「はい。よろしくお願いします」
こうして私達は、ビャッケ達と一緒に村へ向かった。
歩きだすと、男の一人が言った。
「それじゃあ、救助者はもういないんだから、救助の褒美も無しか?」
「え、えっとお」
ああ、この人たちは、褒美目当てに駆けつけてくれたのか。ありがたいけど、困ったなあ。
「一応、モンスターに襲われる危険も考慮して来てくれたんだ。できれば救助の報酬は出してくれると助かる」
ビャッケにもそう言われたら、うなずくしかない。
「わかったわ。でも、こういう報酬ってどれくらい渡せばいいの?」
「村の住人を探す依頼ってのもたまにあってな。そういうのは大体、100シクルだ。高くても払えない場合があるからな。まあ、大抵村の近くでやられてるから、その分難しくもないんだが」
「なるほど」
「だが今回助けようとしたのは冒険者、しかも4ランクだ。財産がそれなりにあるんなら、それ相応の報酬を望むのは当然ってもんだろ」
「た、たしかに」
「ま、けど、今回は結局救助はいらなかったんだ。良くて相場の半額、または本当に全員百シクルくらいでもいいかもな。それで俺達も納得するさ」
「わかったわ」
私はうなずく。すると、男たちは嬉しそうなかおをした。
「けど、救助はギルドを通したんだ。報酬もギルドに渡してから、それを後で俺達がもらうっていう手続きがいいだろうな」
「たしかに、そうね。わかったわ。それじゃあ、あなた達が来てくれたことに感謝を込めて、ここにいる皆に500シクルずつ渡すわ」
「そ、そんなに!」
「あ、ありがとう!」
私がそう言うと、男たちは大声を上げた。
そ、そんなに言う程のことかな?
「ずいぶん太っ腹だな、二リハ」
シャスデリにもそう言われて、ふと思う。
そういえば、私がレストランで働いてた時も、それくらいが給料だったっけ。
でも冒険者をやってたら1ランクでも報酬はそれくらいもらえた気もするし、冒険者って結構高給取りだったのね。
まあ、その分出費も凄いけど。
「そのかわり、もし次も誰かの救助依頼があれば、お願いします。助けが来るって、凄くありがたいことですから」
「ああ、わかった。まあ、言われるまでもないがな」
ビャッケがそう言って笑った。
そして、たまに現れるモンスターを倒しつつ、日暮れまでに次の村、ロントに着くことができた。
ひとまずシャスデリと別れ、私は真っ先にギルドに救助の報酬を渡しに行く。そしてついでに、素材センターで倒したモンスターの情報ももらいにいったのだった。
「毒モンスターの解体だが、その前にモンスターの情報を集めたい。だから、解体は後、そうだな。明日の朝からでいいか?」
素材センターでそう言われた。
「はい。それでもいいです。そのかわり、私にもそのモンスターの情報を教えてもらってもいいですか?」
「ああ、いいぞ。あと、2つ。毒モンスターはここには出すな。毒が広がったらまずいからな。ギルドの訓練場の方で出してくれ。それと、解体する間、解毒魔法を準備して一緒にいてくれ。それで、こっちも心置きなく仕事ができる」
「はい。わかりました」
「じゃあ、早速訓練場に出してくれ。一緒に行こう」
私はテムに毒モンスターを出してもらい、一度そこで用が無くなったので宿へ向かった。
そして生還祝いにご飯をできるだけ豪華にしてもらい、宿のベッドでぐっすり眠った。
朝、ギルドへ行くと、既に毒モンスターの正体は調べ上げられていた。
スカルポイズンモンキー。5ランク。
弱体化に特化した毒を使い、口から吐くだけでなく、牙、爪にも毒がある。力は弱い方だが、素早く回復力も高い。
もうこの時点で、ポリシャにあげた耐毒のネックレスは効果が無かった。相手は5ランクだしね。だから、むしろネックレスを過信せずに良かったのだろう。そして5ランクの毒も消せるシャイン、凄い。ランクとしては1ランクのモンスターなのに。やっぱり旅をしてるから強くなったのだろうか。
まあ、シャインや他の皆の凄さは今はいいとしよう。
スカルポイズンモンキーの素材基本価格、7千シクル。
スカルポイズンモンキーは安い方のモンスターらしい。けれど毒が危険すぎるので、討伐報酬は高め。なにより、こいつがまだ出没地帯周辺にいるかどうかが重要とのこと。
ギルドの人から、調査依頼を受けないかと言われたけど、私は断った。もしスカルポイズンモンキーが他にもいるなら、間違いなく危険だし、シャスデリの護衛もある。今回は運良く助かっただけなので、綱渡りな依頼も回り道も避けたい。
ただ、今回の件で、あの道は交通制限がかかるらしい。5ランクモンスターが見つかったということで、通行条件は5ランク以上。私は4ランクだけど、今回倒したことで特例として許されている。まあ、行かないけどね。
そんな、いろいろと村を騒がせるスカルポイズンモンキーの解体が、目の前で始まった。
職員の解体さばきは見事で、どんどん死体が素材に分けられていく。そしてたまにぶっ倒れて、その度にシャインが解毒魔法で治して、お礼を言われつつ解体を続行する。凄い。これがプロ根性か。
こうして、解体を終えたスカルポイズンモンキーは、肉や眼球等は売って、毛皮や骨等はもらった。
「お前さんは収納魔法が使えるから持てるところは持っていけ。それ以外の部分も、悪いがこの村じゃこんな大金は出せねえよ。腐りやすい部分は買い取るが、その金額分小切手を渡すから、それを町のギルドで換金してくれ」
「わかりました」
どうやら村にはあまりお金が無いらしい。けど、考えてみればそうよね。私の村も、お金なんて無かったし。
とにかく、これで今回の件はほぼ終わった。後は町で換金するのみ。
シャスデリもこの村はすぐ出ていいと言っていたし、早く先に進もう。




